介護に限界を感じる前に…要介護3未満の介護保険施設選び6つの知識

介護に限界を感じる前に…要介護3未満の介護保険施設選び6つの知識

自宅で頑張って介護をしてきても、「これ以上は限界」になることがあります。昔のように、お嫁さんが介護のために人生をかける時代ではありません。介護生活を社会全体で支えるために、2000年4月に介護保険が施行されたのです。

そのようなご家族の多くは「施設にお任せしたいが、できるだけ費用を安くしたい」とお考えではないでしょうか。

実は、介護保険の公的施設である特別養護老人ホーム(特養)は、介護度が3未満では申し込みさえできません。介護老人保健施設(老健)には入ることができますが3か月が限度と言われます。

では、「そろそろ施設にお願いしたい」と考える介護度2以下の方を抱えるご家族はどうすればいいのでしょうか。民間の介護施設を利用することになりますが、種類がありすぎてその差が分かりにくいのではないでしょうか。

それ以上にすぐ入所できる施設となると、内容を吟味することさえできません。その結果、費用負担が結構かかってしまうことも多いです。

今回の記事では、このような方を持つご家族が施設を選ぶときに知っておきたい知識を、ケアマネ資格をもつ認知症専門医の長谷川嘉哉がご紹介します。施設が多くて分かりづらいとお困りの方はぜひ参考になさってください。

目次

1.介護度3未満の方が入所する前に確認すべき3つのポイント

在宅での介護に限界を感じたときには、入所申し込みをする前にぜひ確認してほしいことがあります。

1-1.年金・貯金額

親の年金額を知らない方は結構いらっしゃいます。もちろん貯金額まで知っている方は稀です。しかし、介護の9割はお金で解決できます。そのためにも、通帳に振り込まれている年金額を確認しましょう。年金は2か月に1回の振り込みですから、振込額の半分が1か月あたりの年金額です。

貯金も確認しましょう。確認すると、思った以上に貯金が少ない方もいらっしゃいます。貯めていたはずが、子供や孫にあげてしまったケースもあります。できれば、入所を機に主たる介護者が財産管理を行うべきです。

1-2.介護度3未満では、特養には申し込むことすらできない

2015年の介護保険改正では、特養の入所条件がこれまでの「要介護1以上」から「要介護3以上」に限定されました。重度でありながら自宅待機を余儀なくされている人への利用機会を増やすためです。これにより、特別養護老人ホームは「より重度の人のために施設」になりました。

したがって、介護度3未満では入所どころか申込さえ受け付けてもらえなくなったのです。

1-3.ほとんどの人が特養に申し込みたい理由

施設に入所するとなると、通常月額10万円以上は必要です。しかし、これだけの費用を毎月支払えない方もいらっしゃいます。何しろ、国民年金は満額で月額65,008円(平成28年)です。国民年金であれば貯金を取り崩しかありません。

しかし、そんなときに公的な介護保険施設である、特養・老健・療養型病床群では、特定入所者介護サービス費制度を使うことで、自己負担を軽減することができます。

民間施設ではこの制度が利用できません。

*特定入所者介護サービス費:介護施設利用の際の「食費」と「居住費」の負担については全額利用者の負担となります。そのため、所得の少ない人の介護施設利用が困難とならないように、所得に応じた負担限度額を設けることにより、サービス利用者の「負担の軽減」を図ります。

Portrait of worried senior couple checking bills in living room
若いうちから将来の心配をなくしておきたいものです

2.介護度3未満の人が入所できる3つの民間施設

実際に介護度3未満の方が入居できる施設は、以下の3施設です。先ほどご紹介した「特定入所者介護サービス費」はここで紹介する3つの施設いずれでも適応にはなりません。

2-1.グループホーム

グループホームとは、地域密着型サービスの一つで、認知症高齢者を対象に少人数で共同生活をする施設です。格好良く言えば、高齢者のシェアハウスと言えます。

1990年代後半に国のモデル事業として始まり、2000年の介護保険制度開始を機に年々増え、2015年の時点では、全国の事業所数は12,983か所あります(厚生労働省平成27年介護サービス施設・事業所調査)。

グループホームに入居するには、65歳以上かつ、要支援2または要介護1以上の認知症患者である必要があります。また、地域密着型サービスであることから、施設と同一地域内の住居と住民票があることが求められます。

2-2.有料老人ホーム

厚生労働省管轄のサービスです。大きく分けて以下の二つがあります。

  • 介護付き有料老人ホーム介護を必要とした方に特化した施設と言えます。そのため、介護付き有料老人ホームは一日のスケジュールが比較的決まっています。契約は、「終身利用権方式」が一般的です。施設が提供する食事や介護のサービスも同時に契約するという条件で、居室・共用部分・設備などを利用する権利を購入します。従って、住居もサービスも一緒に契約することになります。
  • 住宅型有料老人ホーム主に介護を必要とする高齢者が、介護や生活支援を受けて居住する施設です。介護サービスは、施設のスタッフが提供する介護付き有料老人ホームと異なり、外部の介護サービスを入居者が個別に契約して受けるようになっています。入居対象者および外部の介護サービスを使う点では、次でご紹介するサービス付き高齢者住宅に似ています。

2-3.サービス付き高齢者住宅

国土交通省管轄のサービスです。主に介護を必要としない自立した高齢者が様々な生活支援サービスを受けて居住する施設です。自由な暮らしを送るために適した施設と言えます。居住されている方が自由に暮らすことができ、定期的に安否確認などのサービスを受けるようになっています。

契約方式は「建物賃貸借契約」になっているため、有料老人ホーム一般にかかるような入居一時金は、「敷金」という形で支払うことになります。また、契約には家を借りるところまでしか含められていないため、「食事の提供」、「訪問介護」、「訪問看護」、「デイサービス」などは別に契約する必要があります。

これらの施設では地域によって差はありますが、グループホームは月額15万円程度、有料老人ホームやサービス付き高齢者住宅は月額20万円ほどが必要です。もちろん、都会になればなるほど費用が高くなります。


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グループホーム費用の差については以下の記事を参考になさってください。

3.認知症があれば絶対グループホームがお勧めな理由

前章では、3つの介護施設をご紹介しました。イメージとしては、生活が自立しているうちは、住宅型有料老人ホームもしくはサービス付き高齢者住宅。認知症はないが身体介護が必要になれば介護付き有料老人ホーム。認知症介護が必要になればグループホームになります。

3-1.実は入居者の実態は3施設とも同じ

しかし、現実にはこれほど明確には分けられません。仮に、介護は必要でない状態でサービス付き高齢者住宅に入所しても、入所後身体介護や認知症介護が進行することは必然です。当院では、現在グループホーム7件、有料老人ホーム6件、サービス付き高齢者住宅2件の訪問診療に入っていますが、患者さんの実態はいずれの施設も同じです。高齢ですから大半の方は認知症をもっており、身体介護も必要です。正直、自立しているような人は殆どいません。

3-2.事業者にとって自立している人の入居は儲からない

本来、自立している人を対象とする住宅型有料やサービス付き高齢者住宅に要介護者が多いのはなぜなのでしょうか。実はこれらの事業は、介護を提供することで利益を得ます。介護を使ってもらえなければ、単なる不動産賃貸業になってしまうのです。その結果、本来自立している人を対象にしているはずの施設なのに、入居者は殆ど要介護者になるのです。

3-3.最も費用が安く、最も介護も手厚いグループホーム

これら3施設の中で最も安くて、介護が手厚いのは間違いなくグループホームです。費用負担が安いことには、理由があります。グループホームは入居者に認知症があるという理由で月額の介護給付金が、介護付き有料に比べ高く設定されています。事業者にすれば介護を提供するための人件費等はほぼ同じにも関わらず、公的な給付金が得られるので安く運営できるのです。

反対に、事業者にとってこの給付金が得られない介護付き有料はおおよそ5万円ほど利用者さんの負担が高くなってしまうのです。(実際、ほとんどの介護付き有料の入居者は認知症があるのですが・・)

介護体制についてもグループホームの夜間帯は利用者9人に対し1人の夜勤者が定められています。しかし、住宅型有料やサービス付き高齢者住宅は、あくまで介護は外部サービスのため夜勤者の規定がありません。私が、訪問診療しているサービス付き高齢者住宅では、一か所は入居者42人に対して夜間帯勤務が1人、もう一箇所は入居者70人に対して1人です。介護の手厚さは比較になりません。

費用、介護力のどちらの点でも、少しでも認知症があればグループホームがお勧めです。

Hospice Doctor Measuring Blood Pressure To Senior Woman
グループホームは他の施設に比べて手厚い介護が受けられることが大きなメリットです

4.年金の少ない人が、在宅サービスでできるだけ対応するための知恵

ご紹介した3施設はいずれも月額15万円は必要です。そもそも年金が少なく、貯金もないケースでは入所は不可能です。この場合は、在宅サービスを組み合わせます。

まずは、月に半分はショートステイを利用しましょう。多くの市町村はショートステイは介護認定期間の半分までとされていますが、中にはそれ以上を認めてくれることもあります。また、ショートステイは「特定入所者介護サービス費」が使えますので、食費や部屋代が安くなります。

ショートステイをできるだけ使ったうえで、残りの日もできるだけデイサービスを利用しましょう。施設に入所できなくてもショートとデイをフル活用することで介護負担を最小限にすることは可能なのです。

The image on which a wheelchair gets in the welfare vehicles
ショートステイやデイサービスは思ったよりも費用がかからずに利用できる可能性があります

5.入居してからも安心してはいけない

3施設に入所しても安心してはいけません。適宜、対策を打つことが大事です。

5-1.適宜、変更申請を忘れない

入所してからも認知症が進行したり、身体介護が必要になってきた場合は、介護認定期間を待たずに変更申請を行いましょう。

5-2.介護度3以上になれば特養を申し込む

変更申請の結果、介護度が3以上になれば、すぐに特養に申し込みましょう。特養は、待期期間が長期に及びますので、一日でも早く申し込む必要があるのです。貯金を取り崩して入居されている方の場合、一日でも早く特養に入居しないと貯金が枯渇することにもなりかねないのです。

5-3.経済的余裕があれば、看取りの確認をして継続入居も可能

もし、経済的に余裕があれば、今の施設にとどまることもお勧めです。実は多くの特養は大規模で、入居者も重度の方ばかりです。その点、グループホームや有料老人ホームは小規模でアットホームです。もし、看取りも対応してくれるのであれば、そのまま入居を続けることが最善です。

グループホームの選び方については下記の記事で詳しくご紹介しております。

6.老健利用の裏ワザ

年金も貯金もない。そのうえショートやデイでつなぐにもその間の介護をする介護者もいない。そんなときは、老健の利用もお勧めです。

老健は、要介護高齢者(要介護1以上)の自宅復帰を目指すため、医師による医学的管理の下、看護・介護を提供する施設です。さらに作業療法士や理学療法士等によるリハビリテーション、また、栄養管理・食事・入浴などのサービスまで併せて提供します。

在宅復帰を目標とし、入居期間は原則として3~6ヶ月の期間限定になっていますが、現状は「リハビリがうまく進まず目標とする身体状態まで回復していない」、「家族の受け入れ態勢が整わない」などの理由から、その期間で自宅に帰る状態まで快復しないケースもあります。そのため平均在所日数は、平成27年度では300.1日です。特別養護老人ホームの入居待ちとして利用している人もいます。

一度、一か所でなく数か所の老健を当たってみることをお勧めいたします。

7.まとめ

  • 介護度3未満の方が入所する施設は、グループホーム、有料老人ホーム、サービス付き高齢者住宅の3施設です。
  • いずれも月額負担が重く、特定入所者介護サービス費も使えない。
  • 年金も貯金も少ない場合は、在宅サービスのショートとデイを使い尽くす。それでも対応できないときは、老健との交渉がお勧めです。
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