先日、信頼の置ける歯科の先生のアドバイスで、奥歯の銀の詰め物をすべて金に変えてもらいました。いわゆる銀歯は保険診療、金は自費診療です。お恥ずかしい話ですが、自分は自費診療は歯科医の金儲けのためと思っていました。しかし、よくよく話を聞くと、金と銀には相当の違いがあることを知りました。きっと多くの方が適切なアドバイスを聞けば、少々無理をしててでも自費診療を選択するのではないでしょうか?
今回の記事では、歯科医ではない医師の立場から、金歯と銀歯の違いをご紹介します。
目次
1.保険診療と自費診療とは?
歯科医療は、健康保険が適用される保険診療(現在の患者負担は治療費の1割から3割)と、適用されない自費診療とに分かれています。この2つの違いは主に、素材と治療法にあります。
今回は虫歯に代表される歯の修復についてこの違いを解説します。
1-1.素材の違い
保険治療では治療費が決まっていますから、使用できる材質は限られ、金とパラジウムの合金、いわゆる銀歯が用いられます。
一方、自費治療では材質は自由に選択することが可能です。審美性を重要視する場合、歯と同じ色の白いセラミックを選択できますし、虫歯になりにくさを最優先すれば、目立たない部位なら18金、もしくは20金の金合金を使うこともできます。
1-2.治療法
わが国の健康保険は、誰でも一定の医療が受けられる優れた皆保険制度では最低限の機能を回復すればよいわけです。そのため、見た目の美しさや、長持ちする精密な治療はあまり考慮されていません。
2.虫歯には2種類ある
虫歯には、全く治療を受けていない歯が虫歯になる一次虫歯と、一度治療した歯が再度、虫歯になる二次虫歯があります。そして、圧倒的に後者が多くなっています。
歯はとても複雑な形をしています。一次虫歯に対して、つめものを作っても完全に隙間をなくすことは非常に困難です。さらに、長年の使用などによる「すり減り」などによって、少しずつ段差や隙間ができてしまいます。こうしたすき間にむし歯菌が入り込むことで二次虫歯となってしまうのです。
3.二次虫歯を防ぐには
ならば二次虫歯を防ぐにはどうすれば良いのでしょうか?
3-1.精密な型取り
二次虫歯を避けるためには、詰め物と歯との隙間が出来ない精密な型採りをし、ピッタリ適合する詰め物を作製する必要があります。そのために歯の型採りに使う材料も保険と自費では異なります。さらに、自費の場合であれば、技工料をかけることで健康保険とは異なる技術の高い製作が可能となるのです。
3-2.定期的なメンテナンス
一次虫歯に対して、治療したということは、その部分がもともとむし歯になりやすいところであるともいえます。むし歯の原因となる歯垢(プラーク)がたまりやすかったり、ブラッシングしにくい部分であることが多く、再度むし歯になってしまう可能性が高くなります。
そのため、定期的なメンテナンスを受けて、長期間、口腔内を良好な状態に保つ必要があるのです。
4.自費診療は高いか?
確かに支払う額は、保険診療よりも自費診療の方が高いのですが本当にそうでしょうか?
4-1.長い目で見たら総費用は?
保険治療は当面の費用が確かに安いです。しかし、二次虫歯になりやすいため再治療を繰り返すことで費用がかかります。さらに、治療の繰り返しによりだんだんと歯が無くなり、最後には抜歯となって、インプラント・義歯などで失った歯を補う治療にまた費用がかかってしまいます。
4-2.見た目
例えば、前歯に見た目の悪い被せがあったり、色や形がどうしても気になる歯があったとします。鏡で見ていて結構気になります。人前で笑うと心の中でいつも気になります。その歯が自費診療で他人から見て解らないぐらいに奇麗になったら、精神的ストレスが減ります。この価値は、金額では変えられないものです。
4-3.医療費の合計が10万円を超えると控除が受けられる
歯科治療にかかった費用は医療費控除の対象になります。歯科治療の対象となる金額は、支払った医療費から10万円を引いた額となり、上限が200万円となります。ただし、総所得が200万円以下の人の場合には、10万円の代わりに総所得の5%を引いた額となります。
医療費控除額(上限200万円)=医療費(保険金で補填された額を除く)-10万円(総所得が200万円以下の人は総所得金額の5%)
これらの点を勘案すれば、自費診療は決して高いものではないことがお分りいただけると思います。
5.まとめ
- 歯科医の自費診療は金儲けのためではありません。
- 詰め物の場合、自費診療の方が材質・精密さからも二次虫歯を防ぎます。
- これからの時代は、「よくわからないからとりあえず保険診療」の時代ではありません。