糖尿病は、医科歯科連携のもっとも重要な疾患の一つです。糖尿病により高血糖状態が続くと歯周病菌による炎症が起こりやすくなり、歯を支える骨が破壊されてしまいます。逆に、歯周病により炎症性のサイトカインが歯肉の毛細血管から全身に運ばれ、インスリンの働きが悪くなり糖尿病が悪化します。つまり、糖尿病患者さんは医科での治療だけでなく、歯科の治療も必須なのです。
そのため医科で糖尿病患者さんに渡す糖尿病手帳でも、糖尿病の検査結果とともに、歯科の受診歴も記載されるスペースがあります。このスペースは眼科における眼底検査と同じです。糖尿病患者さんは、眼科受診と同様に歯科受診も必要なのです。しかし臨床の現場では、糖尿病患者さんに歯科受診を薦めてもなかなか受診してくれません。当院は、同一敷地内に歯科医があり、医科と同じ日の受診が可能であっても患者さんに拒否されることが多いのです。今回の記事では、『糖尿病患者さんはなぜ歯科受診をしてくれないか?』について解説します。
目次
1.糖尿病のコントロールが悪い人ほど歯科受診を嫌がる
実は、糖尿病患者さんでも良好にコントロールできている方は歯科受診にも協力的です。しかし、糖尿病のコントロールができていない人は、「歯は大丈夫」、「歯科にかかる必要はない」、「忙しい」などと意味不明な理由で受診を拒否します。
食事コントロールもしない、運動もしない、薬すらきちんと飲まないのですから、歯科受診だけきちんとすること自体無理なのかもしれません
2.コントロールが悪い糖尿病患者さんはわがまま
医科の現場で、糖尿病のコントロールの悪い患者さんには以下の特徴があります。
2-1.検査を嫌がる
採血をしようとすると、「またですか?」と文句を言わる方が多いです。糖尿病の数値が悪いから頻回に採血が必要なのです。コントロールが良ければ、そもそも頻回に採血する必要がないことが理解出来ないようです。
2-2.受診自体も嫌がる
コントロールが不良なのに、受診間隔を伸ばしてほしいと訴えます。そのうえ服薬管理もいい加減で、飲み忘れも多いのです。この状態で、受診間隔を延ばしてほしいと言える神経を疑います。
2-3.すべてがわがまま
採血の際に過剰に痛がったり、血管を指定してきたり、とにかくわがままで看護師さんの評判が悪い方が多いです。さらに診察予約も平気でキャンセルします。そのくせ、予約外で待たされると文句を言う。つまり、すべてにわがままなのです。
3.高い志を持つ歯科の先生方へ
令和6年6月から保険改訂で糖尿病患者さんの歯科受診を誘導する内容が含まれています。そのため、多くの歯科医の先生方が糖尿病患者さんへのメンテナンスに意気込みを見せてくれています。しかし、残念ながら本当に必要な方は、なかなか受診してくれていないことを知っておいてください。その分は、歯科のメンテナンスという貴重な社会資本を、良好にコントロールされているやる気のある糖尿病患者さんに注いであげてください。
4.まとめ
- 糖尿病は、医科歯科連携のもっとも重要な疾患の一つです
- 残念ながら糖尿病のコントロールが悪い人ほど歯科受診を嫌がります
- 歯科の貴重な社会資本を、糖尿病が良好にコントロールされている患者さんに注ぐべきです