平成24年5月に、約1年続いた日本経済新聞の安部竜太郎“等伯”が終了しました。
新聞の連載小説は、毎日読んでいるうちに大作を読めてしまうので楽しみにしています。
織田信長が台頭してきた時代から徳川時代に至る小説は、しばしば描かれていますが、同じ時代を長谷川等伯という絵師の目を通して描かれた点は新鮮なものでした。
等伯が活躍したのは、政治から経済、宗教まで、日本の権力構造が激しく揺れ動いた時代です。
この時代に絵の修行をする事は、時代柄多くの試練があったようです。
そんな中で、この時代を代表する狩野派に強烈な対抗意識を抱きながら画業に尽力し、長谷川派を立ち上げた点は凄いものです。
私は、絵を見る事が大好きなのですが、その見方はどうも人とは違うようです。
何しろ、何度美術館に足を運んでも、“絵画はマーケティング”と考えてしまうからです。
先日も東京のセザンヌ展を見てきたのですが、彼も年代毎に描かれる題材が少しずつ変わってきます。
しかし、どの時代においても、セザンヌらしい“個性”を残っています。
絵の題材が変わらなければ、“どの絵も同じ”と評されますし、逆にあまり変化が多いと、“個性がない”と評されます。
画家は、当たり前ですが“絵を上手に書く能力”には長けています。
その時代に、どのような題材をどのように描くかが重要なようです。
そして、自分の好きなものだけを好きなように書いていては、生きているうちは評価されない事さえあるのです。
死後に、時代が改めて評価することもある点は、安易にマーケティングと言えない点ですが・・
しかし改めて、激しい時代背景で素晴らしい絵を残された、長谷川等伯に感服です。
等伯の後に、連載が始まった浅田次郎の『黒書院の六兵衛』も、幕末の江戸城明け渡しから話が始まり、従来の歴史小説とは違った切り口を期待させるものです。
皆さんもお勧めです。