林真理子さんが渡辺淳一さんの『愛ふたたび』を絶賛していたため、手に取ってみました。確かに、加齢に伴う女性の体の変化の情報は溢れています。一方で男性の体の変化、特に性機能については我々医師でさえ全く知りません。バイアグラを飲んでも勃起しない時が来ることは、恥ずかしながら知りませんでした。小説としてもとても面白く、それでいて情報が手に入るお薦めな本です。
- 日本の六十歳以上の老人クラブ員を対象にした調査では、九十パーセントが性欲があると答え、性行為を求める者が、六十・四パーセントであった。
- 勃起の角度は、その男性のセックス・パフォーマンス(性的能力)にほぼ比例する
- 勃起能力は加齢とともに徐々に衰えるが、このうち十度以下となり、離陸が不可能になったケース、これを不能と考える
- だいたい六十歳をこえると、いかに頑健そうな男性でも、大なり小なり勃起不全に悩まされるのは、一般的な傾向
- 男たちは、自らのものを勃起させ挿入することだけを考えている。それさえできれば、性のほぼ八十パーセントから百パーセントは、満たされたと思いこんでいる。 もしかして、これは男たちの錯覚ではないか
- 総じて、男はペニスにこだわり、挿入の結果ばかり考えているが、女性の感性はもっと多彩で複雑らしい。いいかえると、女の躰は男が考えている以上に感覚的で、ロマンチックにできている
- 日本性科学会では、一か月以上、性交がないケースを、「セックスレス」と定義している
- 正規の夫婦間で見ると、セックスレス状態はさらに顕著で、「夫と最後に関係したのが、二か月以上前」という人妻が、三十代で五十二パーセント、四十代では六十六パーセント、五十代では八十一・三パーセントに達するとか。これでは、日本の夫婦のうち、とくに中年以降の夫婦は、ほとんどがセックスレス状態と決めつけても、間違いない
- 性行為に対する満足感だが、「毎回、オーガズムを感じる」という女性は、どの世代もせいぜい十パーセント程度しかいないようである。 一方、「オーガズムをほとんど感じたことがない」「まったく感じたことがない」「わからない」という女性が、全体の半数以上に達している。
- 女性のセックスは、このまま死んでもいいと思うほどの快感から、二度と思い出したくないほどの嫌悪まで、かぎりない感受性の広がりをもっているよう
- 指の愛撫は違う。ペニスのように、思いがけなく良い刺戟になるのではなく、初めから、そうするべく意図して、おこなうもの
- セックスとは、いわゆる性的関係だけをいうのではない。そうではなく、男と女が二人でいるときの、すべての関係をいうのである。 まず二人が会ったときから会話を交し、 和み合い、ともに近づき抱擁し 接吻 をする。そして互いに抱き合い、心も 躰 も満たされる。 そのすべてがセックスである。 不能でも大丈夫。
- 長年、十年も二十年も夫婦関係を続けてきた男女は、なにも改めてセックスを求める必要はない。 それより、ともに寄り添い、軽く抱き合い、接吻をする。 それで充分である。 まず、そういう考えで、夫は妻に接するべき
- 高年の不能者は、中年のそれのように、できそうで、できない、いや、できるかもなどと迷うこともない。 それより、ペニスを完全に捨てることである。そのうえで、女性を悦ばすことだけに専念する。