血圧については、多くの方が、上の血圧が140以下だから大丈夫、下の血圧が90以下だから大丈夫といったような認識をされている方が大部分です。確かに間違ってはいませんが、血圧の数値には、上の血圧と下の血圧のそれぞれの数値以外にも大事な要素があります。それは脈圧と平均血圧です。今回の記事では、総合内科専門医の長谷川が、脈圧と平均血圧についてご紹介します。
目次
1.血圧とは
そもそも血圧とはどのように定義されるのでしょうか?
1-1.血圧とは?
血圧とは、「心臓から送られてきた血液が血管に流れるときに血管の壁にかかる圧力」です。高血圧とは、何らかの理由で血液の量が多くなったり、血管が細くなって血管の壁にかかる圧力が高くなった状態を言います。
1-2.上の血圧とは
収縮期血圧や最高血圧とも言います。心臓が収縮して血液を送り出した時の血管の壁にかかる圧力を言います。
1-3.下の血圧とは
拡張期血圧や最低血圧とも言います。次の血液を送り出すために、心臓に血液が戻って拡張するときの血管の壁にかかる圧力を言います。
2.脈圧とは?
脈圧とは、「上の血圧」と「下の血圧」の差のことです。脈圧は、比較的太い血管の柔軟性を示します。なぜなら血管の動脈硬化が進行すると、血管の柔軟性が低下するため同じ血液量を心臓から送り出すときにも、多くの圧を必要とするためいわゆる収縮期血圧(=上の血圧)が上がってしまいます。
一方、拡張期血圧(下の血圧)は、ボールを床に落とした時、固い床の方が早く戻ると同じ理由で、血管が固くなると下がってしまいます。つまり、動脈硬化性変化が進行すると、上の血圧は上がり、下の血圧は下がり、脈圧が大きくなるのです。
脈圧の正常値は40~60で、加齢により増大します。脈圧が大きい場合は比較的太い血管の動脈硬化が疑われます。脈圧が65以上になると虚血性心疾患や脳血管障害の危険性が高くなると報告されています。
3.平均血圧とは?
平均血圧は、「(収縮期血圧―拡張期血圧)÷3+拡張期血圧」で計算されます。平均血圧が高いと末梢の細い血管の動脈硬化が疑われます。正常値は90未満です。
通常、動脈硬化は細い血管から起こり、やがて太い血管に進行します。したがって、まずは平均血圧が上昇し、続いて脈圧が大きくなっていくのです。
4.血圧が正常でも注意
一般的に上の血圧が140以下で、下の血圧が80以下であれば、高血圧の基準は満たしません。しかし血圧が138/72の方の場合、高血圧の診断は受けませんが、脈圧は66、平均血圧は94となり、いずれも異常値であり、太い血管も細い血管もいずれも動脈硬化が疑われます。つまり、血圧だけでなく、脈圧・平均血圧にも注意が必要になるのです。
5.脈圧・平均血圧を下げるには?
脈圧・平均血圧を下げるには、以下のコントロールが大事です。
- 糖尿病・高脂血症といった生活習慣病にならない、なってもコントロールすること
- 体重を増加させない、BMIを意識しましょう。BMIの計算は次のサイトを参考になさってください。https://bmi.nobody.jp/
- 禁煙
- 禁酒・アルコールの減量
- 一回30分程度の運動を週に3日以上
6.家族歴がある場合は、降圧剤の服薬も
高血圧の原因は大部分が遺伝です。紹介した対策をしても血圧が上がり、脈圧・平均血圧も上昇する場合は降圧薬の服薬も考えましょう。特にご両親のどちらかが高血圧である場合は、服薬を必要とする可能性が高くなります。
7.まとめ
- 血圧では上と下の血圧以外に、脈圧・平均血圧が重要になります。
- 脈圧は太い血管、平均血圧がは細い血管の動脈硬化と関連します。
- 高血圧の基準を満たさなくても、脈圧・平均血圧が異常値を示すことがありますので注意が必要です。