一昔前までは、腸内細菌は単に腸の環境を整える程度の働きと考えられていました。しかし、最近では免疫、認知症やパーキンソン病といった中枢病変、癌の発生にまで関与していることが分かっています。さらに最近の報告では長距離走における持久力にまで影響を及ぼしていることがわかってきました。「腸内細菌を整えること」は病気予防や健康維持だけでなく、運動能力にも関与しているのです。今回の記事では、認定内科専門医の長谷川嘉哉が腸内細菌と持久力について解説します。
目次
1.長距離走上位の腸内フローラには優位な細菌が生息
慶応義塾大学先端生命科学研究所の福田真嗣特任教授らによる研究チームが、以下の報告をしています。
箱根駅伝などで活躍する青学大陸上競技部(長距離ブロック)の男子学生48人と同年代の一般男性10人の腸内フローラの比較調査を行ったところ、学生たちには「Bacteroides uniformis(バクテロイデス・ユニフォルミス、以下Bユニフォルミス)」という細菌が一般男性に比べ、約10倍多く生息していることが明らかになった。学生のうち25人の3000メートルの記録を比べると、上位者ほどこの細菌数が多くなる傾向も分かった。
2.Bユニフォルミスがなぜ持久力を向上させるのか?
長距離走などの持久力を必要とする運動をする場合、筋肉や肝臓に蓄えられたグリコーゲンがエネルギー源として重要となります。今回、持久力に優れた学生に多く生息していたBユニフォルミスはα-シクロデキストリンを摂取することで短鎖脂肪酸を産生、これが肝臓に作用することでグリコーゲンが生まれ持久力アップや疲労改善につながると考えられます。
3.短鎖脂肪酸とは?
そもそも持久力をアップする要因となる短鎖脂肪酸とは聞きなれない言葉です。短鎖脂肪酸とは腸内細菌が産生する代謝物の一つです。いくつかの種類がありますが、効果がはっきりしているものに「酢酸」と「酪酸」があります。それぞれの効果を紹介します。
3-1.酢酸
酢酸は、余分な脂肪を蓄えている「白色脂肪細胞」に対して働きます。白色脂肪細胞は酢酸を感知すると、過剰にエネルギーが取り込まれることをブロックして、脂肪の蓄積を抑制します。
3-2.酪酸
酪酸は、交感神経に対して働きます。交感神経は酪酸を感知すると、心拍数や体温を上昇させエネルギー消費を高めるのです。
4.α-シクロデキストリンとは?
こんな有用な短鎖脂肪酸をBユニフォルミスに産生してもらうには、α-シクロデキストリンの摂取が有効です。α-シクロデキストリンはトウモロコシ由来のデンプンから酵素の働きで作られる環状オリゴ糖です。α-シクロデキストリンを摂取することでBユニフォルミスに短鎖脂肪酸を産生してもらうことで持久力を高めることが期待できるのです。具体的には以下の商品がお薦めです。
5.まとめ
- 陸上選手の上位者には、Bユニフォルミスという細菌が一般男性に比べ、約10倍多く生息していることが明らかになりました。
- Bユニフォルミスはα-シクロデキストリンを摂取することで短鎖脂肪酸を産生して肝臓におけるグリコーゲンの産生を高めます。
- 持久力を高めたい方は、α-シクロデキストリンもお薦めです