脳出血や脳梗塞といった脳血管障害を発症すると急性期病院に入院をします。そのまま退院する人もいますし、さらに慢性期リハビリ病院に転院する方もいますが、最終的には自宅に退院されます。その際に、深く考えずに専門医でない医療機関でフォローしてもらっている患者さんが結構(かなり)いらっしゃいます。脳血管障害は退院して終了ではなく、そこからの取り組み次第で日常生活動作の改善や再発率にまで差が出てきます。そのため脳血管障害を受傷した後は専門医でのフォローが理想です。今回の記事では、専門医でのフォローが大切な5つの理由を、脳神経内科専門医である長谷川が解説します。
目次
1.運動機能や高次機能の評価ができているか?
脳血管障害を発症すると、「麻痺がどの程度残っているか?」、「体幹失調はないか?」、「高次脳機能障害の有無は?」の評価が重要です。そして、その状況が改善・維持・悪化するのかを定期的に観察する必要があります。残念ながら専門外の先生にはこれらの評価はできません。当院に転院されて「退院後、初めて運動機能や高次機能をチェックしてもらった」といわれる患者さんが大部分です。退院の際には、脳神経内科もしくは脳神経外科を標榜している医療機関に受診するべきなのです。
2.リハビリは永遠に継続
医療保険を使ったリハビリは発症後5-6か月が上限となっているため、それ以降の継続はできません。だからと言ってリハビリが不要なわけではありません。発症後、6か月を過ぎても日常生活動作の改善は期待できます。そのためには介護保険を使った通所ケア、リハビリデイサービス、訪問リハビリを行う必要があります。こういった提案はやはり専門医しかできません。さらに訪問リハビリについては専門医による指示書が交付されなければ利用することができません。
なお当院では保険診療だけでなく、先進医療の一つである水素吸入療法も積極的に行っています。こういった保険診療になる前の新しい治療も積極的に紹介してもらえる点も専門医ならではです。
3.定期的な画像・血液検査
脳血管障害を受傷した場合、年に一度は頭部CT、頭部MRIだけでなく頭部のMRAによるフォローが必要です。例えば、「脳の血管のどの部位が、どの程度細くなっているか」は定期的にチェックする必要があります。もちろんその状況に応じで再発予防のために抗凝固療法・抗血小板療法の調整が必要になってきます。
4.生活習慣病のフォロー
脳血管障害の患者さんの多くは生活習慣病を抱えています。糖尿病・高血圧・高脂血症については、これらのコンロトールをすることが再発率を軽減させます。そのため脳血管障害の既往のない方より、厳しい管理が必要になります。何しろ専門外の先生にしてみれば再発しても自身が診るわけではないので、コントロールが緩くなりがちです。専門医は、「再発すれば責任を取らなければいかない」という厳しい覚悟で診療を行っているのです。
5.書類は漏れなく申請しよう
脳血管障害の患者さんは膨大な書類が必要です。入院すれば、傷病手当、障害年金、身体障害者手帳。介護が必要になれば、介護保険。民間の保険に加入していればその診断書。年末の確定申告時の障害者控除。さらに対象であれば特別障害者手当も申請が可能です。専門医であれば、患者さんに言われる前に提案することができます。専門外の先生に罹っていると、本来受給できるものがもらえないデメリットが生じてしまいます。何しろ、この国は「知っている人が得をする」のですから。
6.まとめ
- 脳血管障害のフォローは脳神経内科もしくは脳神経外科を標榜している医師が望ましいです。
- とくに介護保険を使ったリハビリは生涯継続する必要があります。
- 医療だけでなく、もれなく書類を申請するためにも専門医受診が必要です。