透析を避けるためには、微量アルブミン尿の測定が有効な理由を専門医が解説

透析を避けるためには、微量アルブミン尿の測定が有効な理由を専門医が解説

内科のトレーニングを受けた医師は、糖尿病、高血圧などの生活習慣病の患者さんに定期的に尿検査を行います。糖尿病患者さんによっては「糖尿病の診断がついているのに、いまさら尿検査が必要?」と疑問を持たれる方もいらっしゃいます。しかし内科医は、診断だけでなく腎機能のチェック目的で尿中のアルブミンという項目を測定します。尿中アルブミンの測定により、早期に腎障害を把握し対処することで、透析への導入を減らすことができます。今回の記事では、透析を避けるために、定期的な微量アルブミン尿の測定が有効な理由をご紹介します。

1.微量アルブミン尿とは?

微量アルブミンとは聞きなれない言葉ですが、以下のような特徴を持ちます。

1-1.尿中のアルブミンとは?

アルブミンとはたんぱく質の一種です。血液中のたんぱく質の6070%を占めていますが、尿検査ではほとんど検出されません。しかし、糖尿病をはじめとする生活習慣病で腎臓の老廃物のろ過機能が低下すると、アルブミンが尿中に排泄されるようになります。そのため、尿中のアルブミンを測定することで腎臓の機能を知ることができます

1-2.通常の尿検査では検出できない

アルブミンはタンパクの一種ですから、通常の尿検査におけるタンパク尿の項目で分かりそうなものです。しかし、糖尿病による腎症の場合、初期にはわずかの尿中アルブミンしか検出されないため尿蛋白は陽性になりません。

1-3.早期発見には、微量アルブミン尿の測定が必要

腎機能の低下を早期に発見するには、尿中のごくわずかのアルブミンでも検出できる「尿中微量アルブミン」を測定する必要があります。逆に言えば、通常の尿検査で、タンパクが検出されるようになった段階では、腎機能はかなり低下していると考えられるのです。

2.尿中微量アルブミン検査の特徴

尿中微量アルブミン検査には以下の特徴があります。

2-1.検査は外部委託で行う

通常の尿検査におけるタンパク尿の検査は、どこの医療機関でも可能です。しかし、尿中の微量アルブミンは、個人のクリニックレベルでは、殆ど検査できません。検体を、外部検査会社に委託する必要があるため、検査当日には結果は出ません。

2-2.費用と頻度

尿中微量アルブミン検査の保険診療点数は102点、そこに判断料の34点が加わって136点かかります。3割負担の方で、408円の自己負担が生じます。また、検査の頻度も決まっており、毎月の検査は認めておらず、3カ月に一度の頻度しか認められていません。

2-3.正常値は

尿中の微量アルブミンは正常ではほとんど検出されないことが正常ですから、基準値は、「30mg/L未満」が正常と判断されます。

検査値が、30~299mg/Lの場合は、尿たんぱく検査では陰性ですが、腎臓に何らかの障害を持っていることが疑われます。特に、糖尿病患者さんでは、腎症の合併が強く疑われます。

検査値が、300mg/L以上の場合はいわゆる通常の、尿検査においてもタンパク尿が陽性となります。この段階になると、腎疾患の可能性が高くなります。また、この段階では、すでに通常の尿検査でもタンパクが陽性ですから尿中の微量アルブミンの検査は不要です。


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3.医師によっては存在自体を知らない

これだけ重要な、「尿中微量アルブミン」ですが、きちんと理解している先生は少ないものです。

3-1.高齢の先生

以前一緒に働いていた10歳年上の先生は、「尿中微量アルブミン検査」自体を知りませんでした。その先生曰く、「僕らの時代にはそんな検査はなかった」です。

3-2.内科のトレーニングを受けていない開業医

また開業医の先生は、内科の経験やトレーニングを受けていなくても「内科」を標榜します。そんななんちゃって内科医の先生も、「尿中微量アルブミン検査」をご存じない方が多いようです。内科の標榜については、以下の記事も参考になさってください。

3-3.ときに主治医の変更も

生活習慣病の中でも、特に糖尿病で通院されている方は、一度「尿中微量アルブミン検査は必要ないですか?」と主治医に聞いてみてください。その際に、「年に1〜2回は検査していますよ」と言われればその主治医は合格です。検査をしていなかったり、その意味も分からないようであれば、主治医の変更も検討する必要があります。

4.尿中微量アルブミンが上がってきたら

尿中微量アルブミンが上がってきたら以下のような対応を行います。

4-1.生活習慣病のコントロール

とにかく、生活習慣病自体のコントロールが重要です。糖尿病であれば、血糖値のコントロール、高血圧であれば血圧をコントロールすることが、腎機能のさらなる悪化を防ぎます。

4-2.アンジオテンシン受容体拮抗薬 (=ARB)の使用

血圧を下げる薬には、数種類あります。その中でもARBは、腎臓の糸球体の圧力を減らすことで、腎臓を保護する働きがあります。従って、糖尿病患者さんと高血圧を合併している患者さんには積極的に使用します。仮に高血圧を合併していなくても腎保護目的で最少用量を使用することもあります。

4-3.スピロノラクトンの使用も効果的

2012年ごろから海外で、昔から利尿剤として使われているスピロノラクトンによって、腎障害が改善するという報告されています。実際、尿中微量アルブミン値が高値であった患者さんが正常域まで改善するケースが散見されています。但し、スピロノラクトンは副作用として高カリウム血症があるので、定期的な電解質の検査が必須です。

5.まとめ

  • 高血圧や糖尿病患者さんは、定期的に尿検査が必要です。
  • 尿検査の際には、尿中微量アルブミンの測定が必須です。
  • 尿中微量アルブミンで早期に腎障害を把握して、ARBやスピロノラクトンによる治療が必要です。
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