新型コロナワクチン接種後の心筋炎について総合内科専門医が解説

新型コロナワクチン接種後の心筋炎について総合内科専門医が解説

先日、美容院で若い男性担当者から、「心筋炎って怖い病気なんですか?」と質問されました。新型コロナウイルスワクチンの接種後に心筋炎の症例が報告されているため不安を持たれたようです。実際、心筋炎自体は昔からある病気ですが、あまり馴染みがない病名のようです。今回の記事では、総合内科専門医の長谷川嘉哉が、心筋炎について解説させていただきます。

目次

1.心筋炎とは?

心筋炎とは、ウイルスなどが心臓の筋肉(=心筋)に感染することで心筋細胞に炎症が起こることで、心臓の収縮不全や不整脈をおこす病気です。心筋の炎症を起こす原因には、ウイルス以外にも細菌・寄生虫の感染、薬物や毒物による中毒性、最近ではワクチンの接種後の後遺症として知られています。

多くが一過性で数週間の経過で治癒します。しかし、「劇症型心筋炎」の場合、回復に1~2か月かかったり、心筋炎回復後に心筋のダメージが残って慢性の心不全になることもあります。

2.心筋炎の症状は?

前駆症状としての発熱・咳・関節痛などの風邪症状の後に、息切れ(心筋炎患者さんの70%)、胸痛(30%)に見られます。頻度的には、18%の方には不整脈による動悸・失神も見られます。なお症状の程度には差があり、無症状のものから突然死に至るまで様々です。

3.心筋炎の診断は?

はっきりした診断が難しく、程度もさまざまで見過ごされることも多いのが特徴です。40歳以下の突然死の20%が心筋炎とも言われており、意外に恐ろしい病気の一つです。風邪症状のあとに息切れなどの症状が残る場合は以下の検査を何度も行うことが必要です。

3-1.心電図

通常、心電図は経過中に何らかの異常所見を示します。一度の検査で異常がなくても何度か検査を行うことが必要です。所見 としては,房室ブロック、心室内伝導障害、異常Q波、ST-T波の変化、低電位差、期外収縮の多発、上室頻拍、心房細動、洞停止,心室頻拍など多彩です。

3-2.血液検査

通常の細菌感染で認めるCRP上昇や白血球の増多は特異的ではありません。心筋梗塞の際に認めるトロポニンTの早期検出は有用です。まずは疑うことが大事です。


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3-3.心エコー

心筋炎が疑われれば、循環器内科で心エコーが有効です。心エコー図では,局所的あるいはびまん性に壁肥厚や壁 運動低下がみられ、心腔狭小化や心膜液貯留を認めます。

4.新型コロナワクチンとの関係

米ファイザー製やモデルナ製のメッセンジャーRNA(mRNA)ワクチンを接種者のなかで若い男性で心筋炎などの発症が比較的多い傾向があります。国内では10月3日までの報告によると、ファイザー製を2回接種した20代男性では100万回接種あたり10.7件、30代男性では同2.0件。一方、50代男性では同0.4件、60代男性では同1.0件。男女差をみると、20代女性では同0.5件、30代女性では同0.8件といずれも同年代の男性の方が多く発症しています。

5.接種によって得られるメリットの方が大きい

接種後の心筋炎は多くが軽症です。イスラエルで2020年12月~21年5月に約510万人を対象にした研究報告では、接種後に心筋炎または心筋炎と推定された136件のうち、129件は軽度の症状でした。その結果から言えることは、通常の心筋炎に比べ、ワクチン接種後の心筋炎は軽症であることが多いようです。したがって、「基本的には接種によって得られるメリットの方が大きい」と考えられます。

6.接種後の激しい運動は控える

ただし頻度は低くてもワクチン接種後に心筋炎の可能性は否定できません。そのためコロナワクチン接種後は、1週間程度は激しい運動は控えることをお薦めします。そして息切れや倦怠感などの症状が改善しない場合は、循環器の専門医の受診をお勧めします。

7.まとめ

  • 心筋炎では、風邪症状の後に、息切れ(心筋炎患者さんの70%)、胸痛(30%)に見られます。
  • 新型コロナワクチン接種後におこる心筋炎は、20代男性で頻度は高くなりますが、重症度は高くありません。
  • 基本的には接種によって得られるメリットの方が大きいと考えらえますが、接種後の1週間は激しい運動は避けることをお勧めします。
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