先日、私の知り合いが心筋梗塞で突然死しました。私は、以前からその方の「お腹がポッコリしていること」が気になっていました。本人曰く、「BMIではチョイ太程度」だから大丈夫と言われていました。しかし残念ながら、私の不安が的中してしまいました。
実は、身長と体重の関係だけでは、健康を語ることはできません。そこに内臓脂肪の概念を加える必要があります。今回の記事では、総合内科専門医の長谷川嘉哉が、BMI値より注意が必要な内臓脂肪について解説するとともに、減らす方法をご紹介します。
目次
1.BMIは筋肉と脂肪の割合を正確には反映していない
肥満の指標であるBMIだけが、正常であれば安心なわけではありません。
1-1.BMIとは?
BMIとは、「Body Mass Index」の略で、肥満の程度を知るための指数です。体重(kg)を身長(m)の二乗で割って求めます。BMI=体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)
1-2.ちょい太が良いとは?
BMIの判定基準は、18.5未満を「やせ」、18.5以上25未満で「標準」、25以上30未満を「肥満」、30以上を「高度肥満」となっています。しかし、中高年の場合は、BMIが「25~27」の「軽い肥満(ちょい太)」が死亡リスクが最も低いことが分かっています。だからといって、標準体重より少し体重が重ければよいわけではありません。
1-3.BMIの問題点
実は、BMIにも問題点があります。BMIは、身長と体重から計算するため、やせ型で筋肉が少ない人は数値が低くなります。一方で、筋肉質な人は、筋肉が重いため体重も重くなりBMIは高くなります。特に、リンゴ型肥満と言われる「内臓脂肪型肥満」は、上半身だけですと、太って見えず、BMIも正常、もしくは「ちょい太」程度であるため、見過ごされることがあるのです。
2.内臓脂肪とは?
内臓のまわりに蓄積した脂肪のことです。食事などから摂取した栄養(糖や脂質)が消費できずに余ってしまうと、それらは脂肪となって体内に蓄積されます。 そのうち、おなかを中心とした内臓のまわりについた脂肪が「内臓脂肪」です。
BMIが少し高い「ちょい太」の中でも、合併症が心配なタイプとそうでない対応があります。その差異は、内臓脂肪の量によります。
3.皮下脂肪型と内臓脂肪型の違い
皮下脂肪と内臓脂肪には以下のような違いがあります。
3-1.内臓脂肪型は合併症が怖い
身体に蓄積された脂肪には、内臓脂肪と皮下脂肪があります。その中でも内臓脂肪は、胃、腸などの臓器の周りにつく脂肪のことです。内臓脂肪が貯まると、糖尿病、高血圧、脂質代謝異常、動脈硬化などの生活習慣病を合併し、脳血管障害や虚血心疾患を引き起こします。
3-2.内臓脂肪型は普通預金?
合併症が怖い内臓脂肪ですが、身体のエネルギーが不足した際には、素早くエネルギーに変えられます。そのため、内臓脂肪型は、普通預金のように簡単に減らすことができます。一方で、合併症が少ない皮下脂肪は、定期預金のように、腹部やお尻につくと減りにくいという特徴を持ちます。
3-3.つまめる脂肪?つまめない脂肪?
内臓脂肪の正確な診断は、機械やCTを使って行います。しかし、簡単に言ってしまうと、「皮下脂肪はつまめる脂肪」、「内臓脂肪はつまめない脂肪」です。お腹周りが、つかみやすい脂肪であれば皮下脂肪であり、お腹がパンパンでつかみにくければ内臓脂肪が疑われます。但し、皮下脂肪と内臓脂肪が両方ある人もいますので、つかめるからと言って安心してはいけません。
4.内臓脂肪を減らすには
合併症が怖い内臓脂肪ですが、普通預金型脂肪であるため、ちょっとした工夫で減らすことは可能です。京都府立医科大学地域保健医療疫学の研究では以下のことが紹介されています。
日常の身体活動時間(座位、立位、歩行)が内臓脂肪に対してどのような影響を与えているのか検討。座っている時間が長い人は、内臓脂肪が多く、立位時間や歩行時間を多くすると内臓脂肪が少なることが明らかになった。
この報告では、余暇時間の運動強度や生活習慣(飲酒、喫煙、睡眠時間)に関わらず効果を見せています。歩行が効果があることは分かりますが、立位時間を増やすだけでも効果がある点は朗報です。
5.ブレイングボード®もお薦め
どうせ立位を取るなら、ついでに有酸素運動、筋力、バランス運動も行ってしまえば、理想的です。ブレイングループが開発した運動ツール「ブレイングボード®」は、「有酸素運動」「筋力トレーニング」「柔軟性向上」「バランス性向上」の4つの運動を効率的に行うことができます。
仕事や家事の合間に、「ブレイングボード®」に乗ってみてください。乗るだけで、足の裏から姿勢が改善されることがわかります。その状態で、足踏みをすれば、程よい勾配で、心地よい刺激とともに有酸素運動までできてしまいます。
最期は、「ブレイングボード®」のうえで片足立ちをしてみてください。慣れないうちは、少しふらつきますが、慣れてしまうと、バランスをとるために、足の裏から、全身の筋肉、そしてそれを制御する脳にまでの刺激を感じるはずです。まさに、「ブレイングボード®」が認知症予防と言われる所以なのです。
6.まとめ
- お腹周りがポッコリしている「リンゴ型肥満」の方は、BMIが正常でも注意が必要です。
- 内臓脂肪は、生活習慣病の合併で、脳血管障害や虚血心疾患を引き起こします。
- 内臓脂肪は普通預金型肥満であり、立位の習慣を取り入れるだけでも減らすことができます。