医療保険の必要性・FP資格の医師が教える加入すべき人と不要な人

医療保険の必要性・FP資格の医師が教える加入すべき人と不要な人
2018-08-06

率直に言って、医療保険は入るべきなのでしょうか?

ご自身の健康保険である程度まかなえるから、必要性はそんなにないと考えていますか?

また、多くの方が何気なく加入している医療保険ですが、本当に必要性を吟味して、よく内容を理解して加入しているのでしょうか?

実は、医療保険は一概に必要不要と決めることはできません。人によって加入する必要性があるケースと、不要なケースがあるからです。特に、現役時代だけでなく、引退後の医療費の負担も考え検討する必要があります。

そこで今回の記事では、医師として入院の実情を知っていながら、ファイナンシャルプランナー資格を持つ長谷川嘉哉が、医療保険に加入すべき人と不要な人についてご紹介します。

目次

1.医療保険が必要ないと思う三大理由

医療保険については以下の理由で加入する必要がないと思われる方もいらっしゃいます。

1−1.病気してもなんとかなるんじゃないの?

医療保険を考える場合は、病気になった際の収支を考える必要があります。つまり、病気になったことだけでなく、要介護、障害状態になったときのことも考えましょう。その時に、病前と同じような収入を確保できるか否かを考えてみましょう。

1−2.ある程度以上は払わなくていいんでしょ?

保険制度が確立されている日本では、低負担で医療を受けることができます。しかし、病気になった場合、医療費だけでなく、差額ベッド代、食事代、交通費、消耗品、快気祝い等が臨時の支出として必要となります。また、最近では健康保険が適用されずに全額自己負担になってしまう「先進医療にかかる技術料」も必要となることがあります。

1−3.今はそんなに何ヶ月も入院させないんでしょ?

確かに、以前に比べ急性期の入院は短くなっています。しかし、私が専門とする脳血管障害は約100日の入院期間を必要としています。ちなみに、脳血管障害には、脳内出血、脳梗塞、クモ膜下出血があり、誰でもかかる可能性がある疾患なのです。

【脳血管障害の平均入院日数:出典厚生労働省 平成26年調査】

  • 脳内出血・・127.4日
  • 脳梗塞・・90.6日
  • クモ膜下出血・・119.6日
Cancer patient resting
入院時のみならずその後の療養期間のことも考えるべきです

2.医療保険の目的とは

医療保険としては本来、不慮の事故や病気などによって医療機関で診療を受け、治療費が高額になってしまった場合に備える保険です。このため、一般的な医療保険商品の主な柱は、入院した際に「入院1日につき○○円」といった形で給付金が受け取れる「入院給付金」と、所定の手術を受けた際に「手術1回につき○○円」といった形で支払われる「手術給付金」の二つとなっています。

3.医療保険加入前に知っておくべき社会保障制度

民間の医療保険に加入する前に社会保障を知っておきましょう。

3-1.傷病手当

健康保険の制度の一つです。但し、国民健康保険の方は対象外です。傷病手当は、病気休業中に被保険者とその家族の生活を保障するために設けられた制度で、被保険者が病気やケガのために会社を休み、事業主から十分な報酬が受けられない場合に支給されます。月額標準報酬の2/3が最大18か月支給されます。この制度は、病気になった時には相当助かる制度です。逆に、この制度がない国民健康保険の方は、傷病手当の対象外であることを認識する必要があります。

3-2.高額療養費制度

高額療養費制度は、歴月(月の初めから終わりまで)に支払った医療費が一定額を超えた場合、超えた額を支給する制度です。この「一定額」は保険加入者の年齢や所得水準によって違いますが、70歳未満で月収53万円未満の人の場合、1カ月の自己負担の上限額は
80100円+(医療費-267000円)×1%
で算出される額となっています。

例)70歳未満で月収53万円未満の人の場合、月のはじめから終わりまでに医療費が仮に100万円かかったとしても、自己負担額は87,430円で済むということがわかります。ただし、入院時の食費負担や差額ベッド代、病院への交通費、入院時の身の周り品の購入費などは高額療養費の対象になりません。

Hospital room with beds and comfortable medical equipped
個室など、快適な環境を得ようとすると自己負担となります

3-3.民間の所得補償保険

所得補償保険とは、病気やケガにより一定期間働けなくなった時に保険金が支払われる保険です。入院中だけでなく、自宅療養の場合でも保険金の支払いの対象になります。保険会社によっては、「就業不能保険」と表現されることもあります。保険金額は、平均月額所得を超えない範囲内において月額で設定します。平均月額所得とは、年収から税金や社会保険料等費用を差し引いた金額の12分の1が目安です。保険金額や加入時の年齢、職業の種類、補償期間などによって保険料(掛金)が決定されます。

私自身も一度、入院をしたことがありますが、医療保険だけでなく所得補償保険のありがたみを痛感しました。取り扱いは医療保険を扱う生命保険会社でなく損害保険会社となります。

4.医療保険加入が必要な方とは

以上の話から、医療保険加入が必要な方を具体的にご紹介します。

4-1.自営、もしくは国民健康保険加入者

基本的に自営業の方には、医療保険の加入をお勧めしています。万が一の際には医療費だけでなく収入減を補う必要もあります。さらに国民健康保険の方は、傷病手当の制度が適応されない点も加入をお勧めする理由です。


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4-2.十分な貯蓄額がない方

莫大な貯金があれば、そもそも医療保険加入などは不要です。具体的には、半年から1年間収入がなくても耐えられる額がなければ、医療保険はお勧めします。

4-3.老後の支援を期待できる人がいない方

医療保険の必要性は現役時代だけを考えてはいけません。人間は、退職後の方が入院リスクは高まります。例えば、子供さんがいないなど万が一の際に支援を期待できない場合は、現役時代に老後の医療保険を用意しておくことも大事です。

5.医療保険加入が不必要な方

正直、かなり頻度としては稀かもしれませんが、以下の方は医療保険加入は不要です。

5-1.不動産収入などの不労所得があるため、その程度の支出増は家計に響かない

以前、海外で口座を開いた時に聞かれたことがあります。「あなたが現在の収入が無くなった時に、何年生活することができますか?」。海外の金融機関では収入や貯金より不労所得を重視するようでした。つまり、働けなくても、収入が得られる人は医療保険に加入する必要がないのです。

5-2.この程度の出費が続いても貯蓄で十分まかなえる

莫大な資産や貯金がある方も加入は不要です。しかし、資産家ほど万が一の際にも目減りしないようにに加入している方は多いものです。

5-3.勤務先の福利厚生がしっかりしており、支出増はそちらでカバーできる

一流企業などで、万が一の際も福利厚生がカバーできる人も不要かもしれません。但し、注意点は、退職後についてです。できれば、余裕のある現役時代に老後の医療保険を作っておくことが大事です。

6.どのような医療保険がオススメか?

各社からいろいろな種類の医療保険が販売されていますが、惑わされることなく、以下を確認するようにしましょう。

6-1.保障期間と払込期間と保険料のバランスを考える。

医療保険にも、終身型定期型があります。掛け金は、保障期間に定めのある定期の方が、終身に比べ安くなります。保険料は高くなりますが、理想は終身型です。

また払込期間も、終身と定期があります。この場合の保険料は、一生払い続ける終身の方が安くなります。しかし、引退後も保険料を払うことは負担です。ですから払い込み期間は定期がお勧めです。

つまり、保険料が負担できるなら、理想は払い込みは65歳までの定期で、保障期間は終身です。

6-2.掛け捨て型か貯蓄型か

多くの方は、掛け捨てよりも貯蓄を好まれる傾向があります。しかし、原則として保障は保障、貯蓄は貯蓄で分けるべきです。従って、医療保険も掛け捨て型を選択すべきです。

6-3.通算支払限度日数

医療保険の一般的な入院期間は通算で730日。何回入院しても730日までは入院給付金が下りるというものです。このほかにも1000日を超えるものもありますが、当然保険料は730日の方が安くなっています。

6-4.1度の入院に対する保障限度日数を比較しておく

「保障限度日数」とは、「1度の入院で何日(間)までが医療保険で保障されているのか?の数値」です。ここ最近の医療保険では、ほとんどの病気での入院は60日以内で退院できるために、主流は60日のタイプとなっています。つまり、60日以上は保障されないという事です。しかし、「がん・心筋梗塞・脳卒中」などの三大疾病や先進医療技術を要する病気は、入院が長期にわたる場合があります。年齢や性別によっては120日タイプを選択しても、保険料の大した差がない場合もありますので、保険料を見比べてから判断しましょう。

7.知られていないポイント。入院日数の数え方に注意

保険を売る人達には常識でも、加入者は意外と理解していないのが入院日数の数え方です。

7-1.同じ病気で再入院した場合、連続する1入院と合算される

1入院とは「同じ病気が治るまでの1回の入院」と定められていることがほとんどです。もしも仮に、一度入院し治療を行った後に再発して再度入院した場合は、同じ病気であり完治をしてなったと判断されてしまいますので前回の入院日数と再入院の日数は合算されてしまいます。つまり、1入院60日型であれば、脳梗塞で45日入院後、180日以内で脳梗塞の再発では15日日間しか保障されなくなるのです。

7-2.180日経過後の再入院は、別の入院

同じ病気の再発でも、180日経過していれば別の入院として扱われ、合算されません。

7-3.違う病気で再入院したら、別の入院

180日が経過していなくても別の病気であれば別の入院として扱われ、入院日数は合算されません

8.65歳以降の医療費用を確保しよう

高齢者医療に従事しているものからすると、医療保険加入についての議論が現役時代に偏っているような気がします。多くの入院は、高齢になってからです。引退後の入院費用は思いの他、負担になるものです。そのためにもお勧めしたように、現役時代である65歳までに払い込みを済ませ、保障期間は終身がお勧めです。

特に法人を経営されている方には、法人で払い込み65歳の掛け捨て型終身保険の加入がお勧めです。65歳までは、法人で加入すると全額経費になります。その後払い込みが終わった時点で、個人に無償で名義変更します。そうすると、個人で負担することなく、老後の個人の終身医療保険を作ることができるのです。

Japanese rehabilitation
老後は医療費が安くなりますが、複数かかることもあり、また長期間に及びがちなので、補助がほしいものです

9.まとめ

  • 医師としては、高齢になってからの入院も考え医療保険加入を検討してもらいたいものです。
  • 加入する場合は、通算支払限度日数と1度の入院に対する保障限度日数を確認しましょう。
  • お勧めは、現役時代に65歳までにで払い込みを済ませ、保障期間は終身がお勧めです。
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