皆さん“胃瘻”という言葉をご存知でしょうか?
高齢・認知症で食事が取れなくなったり、脳血管障害の後遺症で嚥下をする能力が失われた際に、胃に直接穴を開ける処置です。
人工栄養が、この胃瘻を通じて供給されます。
通常、高齢者で胃瘻を作られているケースでは、ほぼ寝たきり状態で、意識もはっきりしません。
以前勤務していた名古屋市厚生院では、入院患者さんの1/3が胃瘻【当時は経鼻胃経管栄養】でした。
赴任した時には、その異様な雰囲気に驚いたものです。
回診をしても、だれも自分の呼びかけに応じてくれる方は見えません。
その時に、胃瘻導入から、死亡までのデータを集めました。そのデータが以下です。
導入時の平均年齢(歳) | 死亡時の平均年齢(歳) | 導入期間(日) | |
脳血管障害 | 81.3 ±8.0 | 84.2±7.0 | 780.5±99.6 |
アルツハイマー型認知症 | 89.1±7.9 * | 91.5±7.3* | 620±96.3 |
このデータの意味するところは、平均80歳を超えてから、胃瘻が導入され、さらに2年近く生存しているという事です。
皆さん、80歳を超えて反応もなく生き長らえたいですか?多くの方は、望まれないと思います。
しかし、皆さんの強い意志がない、もしくは意志が家族に伝わっていないと、通常入院すると胃瘻を増設されることになります。
入院期間が短縮傾向の病院では、経口摂取の改善を見守る余裕はありません。早急に胃瘻を作ってでも退院してもらう必要があるのです。
日本の現状は、新規胃瘻造設患者は、年間20万人程度といわれています。
すでに継続して施行されている患者数は30 万人から40 万人程度と推測されます。
今後は、保険適応など国の方針が変わらなければ、2025 年くらいまでは、高齢者が増え続けるので、同じ比率で考えると、100 万件程度になる可能性があると考えられています。
先回のブログで、”70歳死亡法案可決“を紹介しました。
そんな現実味のない事でなく、食事を取れなくなった人には”胃瘻“は増設しないということだけでも意味があると思います。
これだけで、現在の30-40万人分の介護施設は不要になり、介護保険の負担は減ることになります。
これだけの話でも、やはり反対意見が出るため、直ぐには実現は難しいと思います。
少なくとも皆さん自身と、ご家族ぐらいは明確に“胃瘻を希望しない”意志をもってはいかがでしょうか?