近年、国内外を問わず多くの観光客が日本を訪れ、観光産業が再び活況を呈しています。特に京都や那覇といった人気観光地では、外国人旅行者も非常に多く、国際都市としてのサービス水準が問われる場面が増えています。ところが、そんな中で大きな“時代遅れ”の不便さが未だに残っているのをご存知でしょうか?それは「個人タクシーの現金払い限定問題」です。実際、私も先日京都駅からタクシーに乗る際に3台続けてキャッシュオンリーであった経験をしました。
目次
1.キャッシュレス化が進む中での逆行
SuicaやPASMOなどの交通系ICカード、クレジットカード、QRコード決済など、我々の生活におけるキャッシュレス化はすでに一般化しています。特にコロナ禍以降は「非接触」という観点からもキャッシュレスの需要が一気に高まりました。実際、東京・大阪・名古屋などの大都市では、ほぼすべての法人タクシーが各種キャッシュレス決済に対応しており、利便性が大きく向上しています。にもかかわらず、京都市内や那覇市内では、未だに「現金のみ対応」の個人タクシーが多数走っています。これは観光客にとって非常に不便であり、ある意味では日本の観光ホスピタリティの低下とすら受け取られかねません。
2.外国人観光客にとっては致命的な不便
外国人観光客の多くは、現地通貨の現金をあまり持ち歩きません。クレジットカードやスマホ決済を前提とした旅をしているため、現金決済のみを要求されると非常に困るのです。実際、「空港から市内までの移動はタクシーが楽だと思って乗ったら、降車時に現金を持っておらずトラブルになった」という体験談は、口コミサイトやSNSでも散見されます。また、現金のみのタクシーに乗車した際、両替所を探して降りる場所を変更せざるを得なかったという声もあります。こうした体験は、せっかく日本に良い印象を持って訪れた観光客の満足度を大きく下げてしまいます。
3.個人タクシーに多い“現金主義”の背景
では、なぜ個人タクシーだけが頑なに現金のみの運用を続けているのでしょうか。一つには「決済端末の導入コスト」を敬遠している事情があります。個人タクシーは運転手が一人で経営を行っているケースが多く、「機械の扱いが面倒」「手数料がかかる」「確定申告が面倒になる」などの理由でキャッシュレス決済を導入しないケースが目立ちます。また、収入の“見える化”を避けたいという、いわゆる「グレーな事情」が背景にあることも否定できません。現金主義であれば売上管理が曖昧になり、税務上の取り扱いも都合がよくなるといった考え方です。
4.地域行政と業界団体の対応が不可欠
このような状況を是正するには、行政による強い指導と制度改革が求められます。例えば以下のような施策が考えられます。
- 新規個人タクシー営業許可の条件にキャッシュレス対応を義務づける
- キャッシュレス導入に対する補助金制度の整備
- 観光庁・国交省による観光地での決済環境整備ガイドラインの策定
- タクシー配車アプリ連携の義務化
すでに一部の自治体では、キャッシュレス推進に対する補助制度を設けている例もあります。京都市や那覇市といった国際観光都市こそ、率先してこうした制度の整備に動くべきではないでしょうか。
5.観光立国を目指すなら“足元”の整備を
日本は「観光立国」を国家戦略として掲げ、インバウンド促進に巨額の予算を投入しています。しかし、いくら美しい風景や美味しい食事があっても、基本的なインフラの使い勝手が悪ければ、観光客はリピーターにはなりません。その最たる例が「タクシーの決済手段」です。観光地での“最初と最後”の印象を大きく左右する移動手段だからこそ、キャッシュレス対応の遅れは深刻な課題です。京都や那覇においても、観光客のニーズに応える形でのインフラ整備が急務といえるでしょう。

認知症専門医として毎月1,000人の患者さんを外来診療する長谷川嘉哉。長年の経験と知識、最新の研究結果を元にした「認知症予防」のレポートPDFを無料で差し上げています。