しわ取り注射で、顔が怖くなる。ボツリヌス毒素の適応外使用には要注意!

しわ取り注射で、顔が怖くなる。ボツリヌス毒素の適応外使用には要注意!

先日、当院の外来に、美容目的で顔に注射を打ったら、「子供がお母さんの顔が怖いといって泣いてしまう」という理由で患者さんが受診されました。初診の患者さんでしたから、以前の顔を知りませんが、顔全体がつっぱた感じで、目は大きく見開き、表情がなく、「怖い」という意味も分かる感じです。

詳細に話を聞くと、美容クリニックでしわ取り目的で、ボツリヌス毒素を注射したとのこと。私は、その時までボツリヌス毒素を美容目的に使用することを知りませんでした。美容業界では、ボツリヌス毒素の注射は、「メスを使わず、効果的かつ手軽にシワをやわらげるボトックス療法」として有名だそうです。我々、脳神経内科医は、ボツリヌス毒素を一側性顔面けいれんや眼瞼攣縮に対して使用します。最近では、攣縮性斜頸、小児脳性麻痺患者さんの下肢痙縮に伴う尖足、上肢痙縮、下肢痙縮、腋窩多汗症へと適応症は広がっています。以下の記事も参考になさってください。

いずれも患者さんの深刻な症状に対して、一定の副作用を説明して使用しています。なにしろボツリヌス毒素は、食中毒の原因になる神経毒素です。そのため、重症筋無力症や筋萎縮性側索硬化症などの神経筋接合部に障害がある場合は、重篤な副作用が起こる可能性があります。また、呼吸器に機能障害を持っている患者さんでは、施術後に呼吸困難を起こす可能性もあるのです。

幸い、ボツリヌス毒素の作用は時間とともに失われるため、「怖い顔」で来院された患者さんは、時間の経過で改善します。しかし、専門医としては、しわを取るといった美容目的で使用するにはリスクが高すぎると考えます。実際、我々が保険適応で使用する濃度より、かなり高濃度で使用されている点も気になります。健康保険の適応外の使用をして健康被害が出た場合に、誰が責任を取ってくれるのでしょうか? やはり、甘い言葉には気を付ける必要があるのです。


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