本の紹介分は、「連れ添って20年。発覚した妻の巨額隠し資産。続々と明らかになる家族のヒミツ」。
BSでドラマ化され、面白いと思って、小説も読んでみました。一気に読めてしまう面白さです。というよりも、夫婦における男性の立場は、経済的優位性で成り立っているだけだと痛感しました。
ひとたび、その優位性がなくなれば、妻からも、子供からも相手にされなくなる可能性があるのです。そのためには、仮に奥さんに莫大な遺産があっても、相手にされるような関係性を作っておく必要があるのでしょう。とっても、とっても勉強になりました。お薦めです。本の中で気に入ったフレーズをご紹介します。
- 人間は自然の中で生きる力を放棄することで、否応なく社会という集団の中で生きる道を選択したのだ。
- 母親は言ってみればサンタクロースで、父親はそのサンタの持っている大きな袋にせっせとプレゼントを詰め込む裏方みたいなもんだよ。
- そのとき私にははっきり分かったの。こんなお金があったら、これからの自分の人生は何をしても本気になれないし、楽しくもないし、きっと誰のことも信用できなくなるだろうって。それに、こんな大金の使い道ばかり考えていたら、それだけで一生が終わってしまうし、好きになって結婚した人も、お金のことを教えたらきっとおかしくなってしまうに違いない。生まれた子供たちだってろくな子に育つはずがない。だったら、こんなお金は最初からなかったことにするしかないんだって。
- 「家族」という二文字を見て、真っ先に思い浮かぶのは「愛情」でも「希望」でも「人生」でも「目的」でもなかった。鉄平にとって「家族」とは、「義務」と同義であった。
- 『お金だったら幾らでも欲しいだけやる、きみはもう一生お金で苦労することはなくなったんだ』と断言してやれば、どんなうつ病患者だってたちどころに良くなっていくと思う。お金ほどこの病気によく効く特効薬はないと僕は考えているんだよ。
- 四十八億円という財産があるのであれば、何も無理をして人生に本気になる必要などないし、その財産の使い道を考えるだけで一生を終えたとしても一向に構わないのではないか? 無理に結婚などせず独り身を謳歌する道だってあるし、金の力だけを頼りにして、誰のことも信用せずに生き抜いていくことだって充分に可能なのではあるまいか? ──最初から誰も信じることなく生きられるのであれば、それに優る人生はないだろう。誰かを信じるから、人は必ず裏切られる。初めから誰も信じなければ決して裏切られることはないのだから。
- 人の生き死にだけは金の力ではどうにもならないのだ、と改めて実感する。
- 自分はこの人と一緒に食べるご飯が一番美味しいのだと。私はこの人のことをきっと愛しているのだと。
- 子育てを終えた夫婦が死別のときまで共に暮らす理由には、もちろん慣れ親しんだ繫がりを失いたくないという願いも強く作用するのだろうが、片方で、経済的な事情や 敢えて別れるまでもないという「面倒くささ」も大いに関与していると思われる。
- 「夫婦は恋人同士とは違うんだ。愛情で関係を支え合うだけじゃなく、信頼で支え合わなきゃいけない。そうでなきゃ何十年も一緒にはいられない。夫婦は愛し合う以上に信じ合う必要があると僕は思う」