今の季節、咳を訴えられる患者さんが多くなってきます。咳は、気管や肺に 異物や細菌など感染を起こすものが留まると困るため、それら異物を吹き飛ばす生体の反射反応です。刺激物や細菌などの異物を吸い込むと、何かが気管に入ったという情報が脳の“咳中枢”に送られます。そして、その異物を猛スピードで追い出すために、咳中枢は各部位に指令を出し、咳を出させようとします。咳は自分の身体や肺を守るための発作なのです。
但し、ひと口に「せき」と言っても、その原因や症状は様々です。そして、すぐに止めたい「咳」もあれば、むやみに止めないほうがよい「咳」もあります。痰がからまないような乾性のせきは、中枢性鎮咳薬(脳の神経系を遮断することによって咳を止める)によって咳を止めていきます。
咳・痰は生体防御のひとつでもあります。痰を伴う症状の初期には、むやみに止めることより、末梢性の鎮咳剤で気管支を広げて咳をしやすくすることで気管支内の異物を痰として体の外に出すことが大切です。これらの薬剤を用いて、痰を出しやすくすることで咳が鎮まっていきます。
ちなみに、咳のパワーは、秒速20mで、春一番の強い風に匹敵します。このように勢いがあるので、咳やくしゃみのしぶきは、約2m 飛ぶといわれています。しかも異物や細菌を外に飛ばすわけですから、マスクが必要でになります。
ところで、咳 で消費されるカロリーは、どのくらいだと思いますか?咳は1回で、約2kカロリー消費するといわれているそうです。なので、せきを10回すると、約20kカロリーが消費されます。これは、散歩10分に相当するので、結構なカロリーを消費するのです。咳で苦しまれている患者さんに、そのことをお話しすると、“一瞬嬉しそうな顔”をするのは気のせいでしょうか?