認知症がアロマテラピーで改善?芳香が脳に及ぼす作用を専門医が解説

認知症がアロマテラピーで改善?芳香が脳に及ぼす作用を専門医が解説

認知症が芳香療法(アロマテラピー)で改善する可能性があるということを知っていますか?

「薬にも認可されていない「ただの匂い」を嗅いだだけでどうして改善する?」と思われるかもしれません。

私は日頃、認知症の予防と改善に運動の大切さをお伝えしていますが、脳に刺激を加えることはすべてお勧めできるものです。散歩などが難しい方はできる範囲で体を動かすことに加えて、五感をフル活用することが重要です。特に嗅覚は脳に密接に関わっているので、匂いの刺激を与えることは積極的に勧められるものなのです。

今回の記事ではこの芳香療法が認知症に良い影響を及ぼす理由と、認知症の方におすすめのアロマの使い方をお伝えします。

1.芳香療法とは

芳香療法は、植物から抽出した精油を用いて行う医療の代替療法の一つで、アロマテラピー(アロマセラピー)の名で一般的には知られています。ドイツでは医療として認知されています。

「精油そのものの香りを楽しむこと」や、「精油でマッサージを行い、精油の香りが脳に刺激を与えることによってもたらされる効果」や、「皮膚を通して体に与えられる作用」を期待して行われています。副作用が少なく、誰にでも簡単に用いることができるメリットがあり、医療現場でも、ストレスの緩和や精神的なケアやリラックス効果を得るために、神経科、心療内科、小児科、産婦人科、歯科などで活用されています。認知症に対しても、精油の香りを嗅ぐことで脳への刺激を促し、認知症の症状の改善に役立てようと介護施設などで芳香療法が取り入れられています。

2.嗅覚と脳の関係

香りを感じる臭神経は、脳幹を介することなく大脳から分岐しているため、直接的に快や不快の感情を刺激します。そのため、嗅覚を刺激することが、認知症を予防する効果があるとされています。

匂いという情報を感じ取る働きをしているのが大脳辺縁系のなかにある部位、“嗅覚野”です。この嗅覚野が、記憶を司る海馬とつながっている“嗅内野”という部位と非常に近い場所にあります。そのため、匂いを嗅ぐことで嗅覚野が刺激され、そしてその嗅覚野への刺激が海馬まで届いて記憶が想起されるのです。

Brain-anatomy
嗅覚野は脳の深層部にあって、外見からは分かりません

・香水のにおいから誰か特定の人のことを思い浮かべたり
・花のにおいを嗅いでどこかの場所に思いを馳せたり
・何かのにおいが不意に楽しい思い出や悲しい思い出などを呼び起こしたり

このように匂いがきっかけになって、記憶が蘇るのです。

3.アルツハイマー型認知症は嗅覚がまず衰える

認知症の場合は「物忘れ」などの分かりやすい症状が始まる前に、「嗅覚が衰えたな」と感じられることがあります。他の方が「なんか匂いがする」というときに、一人だけそれに気づかないというようなことがあると、認知症が少しずつ始まっている可能性を考えます。


長谷川嘉哉監修の「ブレイングボード®︎」 これ1台で4種類の効果的な運動 詳しくはこちら



当ブログの更新情報を毎週配信 長谷川嘉哉のメールマガジン登録者募集中 詳しくはこちら


人間の機能は使われなくなると衰えていきます。嗅覚という機能も使われなくなると働きが悪くなると考えられます。

使わないと脳へ刺激を与える機会も減ってしまいます。匂いを嗅ぐことは脳を刺激する効果があり、その嗅覚が衰えてしまっては脳への刺激が少なくなって、認知症の危険が高まってしまいます。

ですから嗅覚を働かせる機会を増やして、脳に刺激を与えることは、認知症予防となり得るのです。お香やアロマテラピーの匂いが好きなら、是非試してみてください。さらに日常生活でも、食事をするとき料理の香りも一緒に楽しむようにしたり、外に出て普段とは違う空気を鼻で感じ取ったりなど、“意識して”匂いに敏感になってみましょう。それが脳に良い刺激を与えて認知症予防としての効果を果たすのです。

Elegant mature woman holding blooming branch
散歩の際などに、草花の香りを嗅いでみることは良い刺激になります

4.研究による論拠がある

鳥取大学医学部の研究では、嗅神経を刺激すれば海馬の機能が回復する事が報告されました。脳の大脳辺縁系にある「海馬」は、体験や学習によって得られた記憶を貯蔵する場所ですが、認知症になるとこの「海馬」がダメージを受け記憶障害を起こすといわれています。鳥取大学の研究によると、海馬がダメージを受ける前に嗅覚機能が低下しますが、「嗅覚を刺激すれば海馬の機能が回復する」可能性があるのです。認知症の主な原因である認知機能障害を、芳香療法(アロマテラピー)で治療可能性があることを実証したのです。

5.効果的な使い方

鳥取大学の研究では、朝用はローズマリーとレモン、夜用はラベンダーとオレンジが効果的なようです。ローズマリー&レモンは集中力を高め、記憶力を強化する刺激的な作用があり、ラベンダー&オレンジは、心や身体への鎮静作用があるのです。

朝・・ローズマリー2滴+レモン1滴
夜・・ラベンダー2滴+オレンジ1滴

をハンカチやティッシュに垂らして香る方法でも十分に効果的です。

Lemon essential oil and rosemary
レモンとローズマリーの香りは朝、脳を刺激することに効果があります

6.介護施設では

介護施設の報告では、認知症患者さんが香りを試香紙に垂らして嗅いでいくうちに、顔色や表情がだんだんとはっきりしてくるそうです。感覚器の中の嗅覚機能は鍛えたら復活する神経細胞です。昔から嗅ぎなれた香りを“積極的に香る”効果は、嗅覚機能を回復させて記憶を刺激するようです。

7.まとめ

  • 脳の中で、臭いを感じる部分と記憶をつかさどる部分は密接につながっています。
  • そのため、臭覚を刺激する芳香療法は、記憶を改善する効果があります。
  • 鳥取大学の研究では、朝用はローズマリーとレモン、夜用はラベンダーとオレンジが効果的なようです。
error: Content is protected !!
長谷川嘉哉監修シリーズ