毎年、お正月に観ている箱根駅伝も池井戸さんの手にかかると、これほど感動的なドラマに描かれます。かなりの量ですが、途中で止めることはできません。睡眠不足になる覚悟で一読をお薦めします。素晴らしい言葉もちりばめられていて、読後感も最高です。
- 正月二日と三日の二日間のほぼ半日を独占する巨大スポーツ中継にして、三十パーセント前後の平均視聴率をたたき出すオバケ番組。いまでこそ、「箱根駅伝」は正月の風物詩といっていい定番だが、この番組が実現するまでの道のりは、想像を絶する苦難の連続であった。
- 二百十七・一キロの道のりを正月の二日間で走るこの駅伝が始まったのは、第一次世界大戦の終戦から二年後の一九二〇年のことであった。
- 大会の実現に尽力したのが、日本のマラソンの父、 金 栗 四三 だ。その後、第二次世界大戦前後の五回に及ぶ大会中止を挟みつつ、現在まで連綿と引き継がれる
- 素晴らしい敗者がいるからこそ、勝者が輝くんだ。
- 今日は我々が敗者になった。だったら明日、勝者になればいい。負けは勝ちより、人間を成長させてくれる。
- 「失敗ってのはな、次につなげられるかどうかで、価値が決まるんだ」
- いくら予選会で個人記録の上位者とはいえ、頑張ったところで正式記録に認定されず、さらにチームとしての一体感も目的もない。これでモチベーションを保てという方が無理だ。
- スポーツ中継とは、競技の素晴らしさや面白さ、難しさ、そして人間ドラマをそのまま視聴者に届けるものであり、それ以上でもそれ以下でもない、という哲学
- タスキをつなぐ場面、順位が入れ替わる場面は必ず撮る。
- チームと選手個々人に対する入念な取材を行い、出身地などに触れる。これによって、関東の学生だけの大会であるはずの箱根駅伝を全国区に広げることができるのだ。
- ランナーは、クリエイターじゃなきゃダメだ。現状を疑え。どうすればもっと良くなるか、あるいは、もっと良くなる方法が他にあるんじゃないか──そういうことを常に考えて欲しい
- 狂った計画の中で、どこで抑えるのか、どこで仕掛けるのか、その見極めが勝敗を決める。そのとき必要なのが創造力であり、思考力だ。思考力のないランナーは決して成功しない。ただ速いだけじゃダメなんだ。
- 本気の挑戦にこそ、神が宿る」
- 世の中に出れば、自分の意に沿わないことはいくらでもある。そんなとき、君らは気に入らないからといって手抜きをするのか。もし不満なら、納得できるように相手と話し合え。そんな努力もしないで、ただ陰で不満を口にして、手を抜く。それでいいのか。そんな奴は、世の中から信用もされなければ、相手にもされない
- 正式記録じゃないからとか、オープン参加だからとか、そんなのはルール上のことであって見てるひとには関係ないんだよ。
- 内なる感情で、物事を決める奴は、世の中ゴマンといる。嫉妬や怒り、恨み、私利私欲に突き動かされていながら、もっともらしいことをいって相手を追い詰める。そういう連中が権力を握ると往々にしてロクなことにならない
- これから我々がすべきことは、自分を信じて、ひたむきに走ることだけだ。その戦いには裏切りはない
- トラック競技の記録は、一次元。その日の天候やコンディションが加わって二次元。選手の体調とメンタルが加わって三次元──つまり現実になる
- 知らないから、あるいは判断に迷うからこそ、不安になる。ならば、事前に様々な状況を想定し、議論することがメンタルの強化につながる
- 適切なペース配分、仕掛けどころはレースの状況によって変わる。同じ走りが正解にもなり、ミスにもなる」 何が正解かを判断するのは、常に自分
- 世の中には実を結ばない努力もあるだろう。 だが、何も生まない努力なんかない