【お薦め本の紹介】人間の証明 勾留226日と私の生存権について

【お薦め本の紹介】人間の証明 勾留226日と私の生存権について

この現代社会において被疑者・被告人の身体を人質にして有罪判決を導くための「人質司法」が存在することを知りました。そして日本独自の仕組みとして国際的にも繰り返し批判されてきても改革できないことに恐ろしささえ感じました。いつ無実の罪を着せられるかは分かりません、万が一のために一読をお薦めします。

  • 八十歳を超えて新しい人生を生きるということがある。五輪汚職をめぐり無実の罪で逮捕され、二百二十六日間の過酷な勾留生活を強いられたことで、私はそのことを知った。保釈後、残りの人生を懸けて私は新たな闘いを始めた。
  • 「人質司法」とは、捜査当局が否認や黙秘をする被疑者や被告人を長期間、身体拘束することで虚偽の自白を強要する日本の刑事司法の実態を指す。
  • 日本では、被疑者の取り調べ時には弁護士の立ち会いが許されず、家族との面会も制限される。
  • 無罪を主張したり黙秘したりすると、容疑を認める自白を引き出すために起訴後も長期間の身体拘束が続く。私の保釈請求は何度も却下され、十五人の中で最も長く勾留されることになった。
  • 拘置所では二十四時間監視のもと、あらゆる自由が制限され、折りたたんだ布団に寝転ぶことも許されない。
  • 被疑者・被告人の身体を人質にして有罪判決を導くためのものとして刑事司法の世界で「人質司法」と呼ばれ、日本独自の仕組みとして国際的にも繰り返し批判されてきた。
  • 日本では有罪が確定するまで無罪として扱われるはずの被疑者・被告人の尊厳と人権は長らく 蹂躙 され、これまで数え切れない人たちがその犠牲となってきた。この異常な刑事司法制度を一日も早く廃絶しなければならない。
  • 陰茎の内側に異物などが入っていないかどうか、ことさら尋ねられた。
  • この屈辱的な仕打ちが被疑者の自尊心を奪い、善良な市民として生きてきたという誇りを剝奪する。「拘置所の思想」の最初の洗礼だった。
  • 刑事訴訟法では、勾留期間は十日間が原則であり、「やむを得ない事由」がある時に限り、十日間の延長が認められる。しかし現実の運用では、特捜部に逮捕されれば二十日間の勾留が当たり前になっており、そのうえ再逮捕、再々逮捕で四十日間、六十日間勾留されることも珍しくない。
  • 土日は弁護士に接見できないが、検事は自由に取り調べができるという公平性を欠いた運用になっている。
  • 常用薬が与えられない
  • 弁護士からは「検事が書いたストーリーが初めからあって、調書はその裏付けのために都合のいい証言だけを取るので、調書には安易にサインしないでください」「それでも窮したら『弁護士と話をしてからお話しします』と答えてください」と言われていた。
  • 長時間拘束された被害者が加害者に過度に同調する「ストックホルム症候群」という心理的現象があるように、抗戦の一方で検事の言う通りになって楽になりたい自分がいる。
  • 部屋の奥には洋式トイレと洗面台がある。衝立がないため、廊下から丸見えになる。頻尿と便秘気味で頻繁に便座に座っていた私は羞恥心でいたたまれなかった。しかし、これもまた収容者の自尊心を奪う拘置所のやり方だ。
  • 東京拘置所はよく「冷暖房完備」と記されているが、単独房に冷暖房の設備は機能しなかった。
  • すなわち容疑を否認して無罪を訴えること自体が保釈を認めない理由とされているのである。
  • 拘置所での唯一の楽しみは読書だった。
  • 拘置所生活の緊急必需品として佐藤優さんが指示した差し入れ品は、座布団とノートだった。
  • 拘置所という特殊な環境では、散文では表現しきれない哀しみと苦しみがいくつもあった。そんな時、俳句という文学の持つ価値と存在感をあらためて知った。
  • 拘置所にいなかったら父の孤独に思い至ることはなかったとするなら、この囚われの生活にも意味があったと思いたい。本を読んで内省する機会も得た。
  • 就寝時は掛け布団に、差し入れてもらったコートを掛けた。顔は隠せないため、コートの袖で頰を覆うことで吹き込む冷気を防いだ。
  • 「昔のように入れ墨を入れたやくざのお兄ちゃんばかりでなく、あなたのような一般の人がここに入ってくるようになったら、拘置所は変わらなきゃいけないんですよ」
  • 人質司法の犠牲者は私だけではない。これまでも数え切れない人たちが苦渋を味わい、いまも苦しみのただ中にいる。
  • 社会で注目される刑事事件では、特捜検察はメディア報道を利用して被疑者や被告人を「犯罪者」に仕立てあげ、世論の後押しを得て強引に捜査を進める。自分が身をもって体験すると、これはまさに現代の「人民裁判」である。
  • 国際ジャーナリスト組織「国境なき記者団」が毎年発表する「報道の自由度ランキング」二〇二四年度版で、日本は主要七カ国(G7)の中で最下位の七十位だった。アジア諸国・地域では二十七位の台湾、六十二位の韓国よりも下位にある。
  • 人質司法とメディアによる人民裁判は、拘置所にいる被疑者・被告人を社会から抹殺する「中世の断頭台」として機能することを知ってほしい。
  • 逮捕、起訴されても有罪判決が確定するまでは無罪と推定される被疑者・被告人は、法律上は一般人と何ら変わらないはずである。
  • 「大川原化工機事件」と「五輪汚職事件」にはいくつかの共通点がある。まずいずれも事業家を標的にして事件化した「立件事件」である。
  • 人質司法によって本来、無罪にすべき事件が有罪になっているケースが少なくないということだ。すなわち冤罪である。
  • 近年では国連人権理事会の恣意的拘禁作業部会が二〇二〇年、拘置所から国外逃亡したカルロス・ゴーン氏の扱いに対して「四度にわたる逮捕と勾留は明らかに不当」とする意見書を出した。
  • イギリスの裁判所は二三年八月、「日本の刑事手続きに人権上の問題がある」として引き渡しを認めない判決を下した。
  • 国連人権規約委員会は二二年十一月、入管施設でこの五年間に収容者三人が死亡したことを懸念し、施設内の医療体制の改善を図るよう勧告した。
  • ある弁護士から言われた「世の中を変えるためのことは少人数から始まるんですよ」という言葉に力づけられた。
  • 数々の被害者の声を聞いて痛感したのは、逮捕された被疑者は刑事弁護に関する情報、人脈、資金が圧倒的に不足しているということだ。
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