著者の出口治明さんは、ライフネット生命を創業された方です。そのため、この本を読むまでは、彼の現在は、ライフネット生命は東京証券取引所マザーズ市場に上場したので、莫大な上場益を手にされて悠悠自適かと思っていました。しかし、出口さんは上場益は全く得ておらず、令和2年6月時点で72歳でありながら、立命館アジア太平洋大学学長として仕事をされています。
そんな、出口さんが書かれた、「還暦からの底力」。認知症の専門医としても、仕事を続けてもらえれば、認知症にもならずに、お金にも困らない一挙両得だと感じました。生涯仕事を続けるためにも、若い人にも読んでもらいたい本です。一部ご紹介します。
- 「何歳まで働くのか」を考えても意味がない 。2017年に日本老年学会・日本老年医学会は連名で「高齢者の定義を 75 歳以上にしましょう」と提言しました。
- 65 歳高齢者説は、半世紀以上も昔のデータに基づいたもの。いつまで、そんな古いデータにしがみつく必要があるというのでしょう。
- 高齢者がなぜ生きているのかといえば、次の世代のためというのがその答えになるでしょう。
- われわれ老人は子育てを支援し、若者が子供を作りたくなる環境を整備する。身体も脳も日々よく使い、自立した生活をして老化を遅らせ、必要になったら互いに介護につとめ、医療費・介護費を少なくし、そうすることにより、できるだけ次世代の足を引っ張らないようにする。
- 「保育園が近くにできるとうるさくて昼寝ができない」などと反対する高齢者は、自分が何のために生かされているかという本分をわきまえない人というほかありません。行政はそういう人のわがままを受け入れるのではなく、逆に「子供のいない山奥にでも行って一人で生活してください」と説得すべきです。
- 洋の東西を問わず、船が沈没する際に脱出する順番は子供、女性、男性、そして高齢者です。なぜなら、その順番にしないと群れが死滅するからです。
- 働いている人も働いていない人も、みんなで社会を支えるのであれば、消費税にシフトするしかありません。一方、本当に困っている人に給付を集中するためには、マイナンバーを整備して所得や資産を把握する必要が生じます。所得税と住民票で回っていた社会から、消費税とマイナンバーで回す社会へのパラダイムシフトを起こさなければならないのです。
- 生物の個体は遺伝子の乗り物」と述べているように、私たち動物は次の世代を残したらあとはもう余生です
- 人間は一生働くのが自然の姿であり、実は働き続けることによってのみ健康寿命も延びる
- シュレーダー元首相はビスマルクの話を引いて「人を雇うということは、その人の人生に責任を持つということである。社会保険料を払えない企業は、そもそも人を雇う資格がないのだ」と言い切りました。
- 「飯・風呂・寝る」の低学歴社会から「人・本・旅」の高学歴社会へと切り替えなければならない
- 企業ができるのはリーダーの素質がある人を見つけ出すことだけです。誰でも教育を施したら優れたリーダーになれるという考え方は、誰でも部活で練習させたらレギュラーになれるという非現実的な考え方と一緒です。
- 教養がある人は、教養がない人に比べて豊かで楽しい人生をおくれるからです。
- 老思想から脱却し、きちんと数字・ファクト・ロジックで考えていけば、高齢化社会の将来は暗くはないし、人はいくつになっても楽しい人生を過ごすことができます。