【お薦め本の紹介】一晩置いたカレーはなぜおいしいのか

【お薦め本の紹介】一晩置いたカレーはなぜおいしいのか

題名だけでも興味をそそりますが、内容はそれ以上です。食材に対する知識が満載で、読後には太陽や大地の恵みに感謝し、野菜や肉や魚の生命をいただくことに感謝です。

  • 「Lettuce only(レタスのみ)」という英語の発音は、「Let us only(私たちだけにして)」と聞こえます。そのため、レタスのみのサラダはハネムーンサラダと呼ばれているのです。
  • キャベツを千切りするように包丁でレタスを切ってはいけません。
  • ラクチュコピクリンは、人間に対しては睡眠促進効果があることが知られています。眠れない夜は、レタスを入れた温かなスープを飲むのもよい
  • 人間は赤色を見ると、副交感神経が刺激されて食欲がわき、胃腸のはたらきが活発になることが知られています。
  • 「緑色は食べないで」「赤色は食べてほしい」──これが、植物と鳥とが約束を交わした、果実の色のサインなのです。
  • 人間を含む類人猿以外の 哺乳類 は、赤色を認識することができません。
  • 紫キャベツの色素であるアントシアニンは、もともとは植物の体を守るための物質ですが、抗酸化作用があり、老化の防止や生活習慣病の抑制など、人間の健康にも良い物質
  • 多くの動物は、ビタミンCを自らの体内で合成する能力を持っています。ところが、果実からは豊富すぎるほどのビタミンCが摂取できたため、果実食のサルは、ビタミンCを作る能力を失いました。
  • 私たちの体内にすむ腸内細菌のバランスを正常に維持するためにも、どうしても植物の繊維が必要となるのです。
  • 野菜を食べたあとに出るおならは、においません。
  • 植物は寒さに当たると、葉っぱの中の水分が凍りつかないように、糖分や栄養分を葉にため込みます。そのため、寒さを経験した葉菜類は甘く、しかも栄養分が豊富になっている
  • ジャガイモは七〇℃以下の温度でゆっくりと熱を加えると、デンプンを分解するアミラーゼという酵素がはたらいて、デンプンが糖に変化します。だから、ジャガイモは水からゆでると甘みが増すのです。
  • ジャガイモの芽の部分には、ソラニンという有毒物質が含まれています。ソラニンは、ジャガイモの学名にあるソラナム属に由来しています。  ソラニンはめまいや 嘔吐 などの中毒症状を引き起こしますが、その致死量はわずか一五〇~三〇〇ミリグラムといいますから、かなりの強さです。
  • 鍋の頑固な汚れや、油のついたガラスのコップは、水に浸してジャガイモの皮を入れてしばらく置いておくと、きれいになります。なんとジャガイモは、料理の後片付けでも活躍するのです。
  • 痛みを与えるカプサイシンを感知した人間の体は、カプサイシンを排除しようと反応します。まず、この有害な痛み物質を消化・分解しようと胃腸のはたらきが活発化します。トウガラシを食べると食欲が増進するのはそのためです。また、カプサイシンを 解毒 しようと血行も良くなります。
  • カプサイシンによって体に異常をきたしたと感じた脳は、ついには鎮痛作用のあるエンドルフィンという神経伝達物質まで 分泌 してしまうのです。
  • トウガラシが赤くなるのも、動物に食べてもらうためです。ただしトウガラシは、食べてもらう相手をえり好みしているようなのです。   哺乳類は辛いトウガラシを食べることができません。しかし鳥類は、辛さを感じないため、トウガラシを平気で食べることができます。
  • できあがったカレーを置いておくと、このジャガイモのデンプンが少しずつ溶け出し、カレーにとろみをつけます。するとカレーの粘度が高まり、カレーを食べたときに舌の上に残りやすくなります。そのためカレーの味を強く感じるのです。
  • ジャガイモのデンプンは、現在ではとろみをつけるための 片栗粉 の原料とされています。
  • タマネギの辛味成分は、硫化アリルという物質です。硫化アリルは熱に弱いため、タマネギを加熱すると、分解されて辛みが失われ、タマネギ本来の甘さが出てくるのです。
  • ニンニクには、人間の体を適度に刺激して、眠っている防御能力を呼び覚ますはたらきがあるのです。
  • 精力増強に利用されるニンニクですが、意外なことにニンニク自身は 不稔 で、種子はできません。
  • 肉といえば関西では牛肉が、関東では豚肉が中心になっていきました。カレーだけでなく肉じゃがでも、関西では牛肉が使われるのが一般的なのに対して、関東では豚肉が使われます。豚肉を使った中華まんを関西では豚まんというのに対して、関東では肉まんというのも、関東では豚肉が肉の代名詞だからです。
  • イネ科植物は、動物に食べられにくいように、繊維を発達させて葉や茎を堅くしました。  しかし、草食動物も負けてはいません。その堅い繊維を消化するために、牛は四つの胃を持つようになったのです。
  • イネが成長して秋に稲穂をつけると、一粒だった籾が五〇〇~一〇〇〇粒もの籾になります。
  • 大豆は「畑の肉」といわれるほど、タンパク質や脂質を豊富に含んでいます。そのため、米と大豆を組み合わせると、三大栄養素である炭水化物とタンパク質と脂質がバランスよくそろうのです。
  • シソの葉と漬け込んだ後の梅の実は、太陽の下で干されて「梅干し」となります。野外で日光にさらすことで、紫外線によって殺菌されるとともに、余分な水分が蒸発するため、梅干しの保存性がより高まるのです。
  • 食べられたくないという緑色のピーマンと、苦いピーマンを食べたくないという子どもたちの利害は一致しているのです。
  • トウガラシを辛みがないように改良したものこそが、ピーマンなのです。  ヨーロッパとは反対に、インドではさらに辛みが強くなるように改良されました。これが日本に伝わって「 鷹 の 爪」など辛いトウガラシになったのです。
  • ウインナーソーセージは、ヒツジの腸にひき肉を詰めて作ります。このヒツジの腸の太さが二センチ未満なので、これに準じてこの太さのものをウインナーソーセージと呼んでいるのです。  これに対して、フランクフルトソーセージは、豚の腸にひき肉を詰めます。豚の腸はヒツジの腸よりも太いため、この太さをフランクフルトソーセージとしているのです。
  • 油の代わりにマヨネーズを使っても、パラパラしたチャーハンを作ることができます。これは、マヨネーズの材料である卵の乳化作用によって、マヨネーズに含まれる植物油とごはんの水分がなじむためです。
  • 関西風と広島風ではキャベツの使い方が決定的に異なります。 関西風はキャベツをいわば 炒めているのに対して、広島風はキャベツを蒸しているのです。
  • 「モヤシ」という名前の植物はありません。モヤシは「 萌やし」の意味です。つまり、植物の種類にかかわらず、種子から芽生えて「萌えて」いる状態のものが「モヤシ」なのです。
  • モヤシはけっして弱々しいわけではありません。むしろ、モヤシには植物の強い生命力があふれているのです。
  • ヤマイモ成分は酸性の液体には溶けるので、酢水などで洗うとかゆみがやわらぎます。
  • グルメな食べ物として定着したそばですが、もともとは 飢饉 のときの救荒食だったのです。
  • 実の収穫量は少なくても、茎や葉を考えればかなりの量の食料となります。そして、どんな不作でも食用となるソバは、救荒作物としてきわめて優れていたのです。
  • 上方から来る(下ってくる) ものは、「下りもの」と呼ばれて重宝されていたのです。  一方、関東で作られた品質の悪いものは「下らないもの」と評されました。現代でもつまらないものを「くだらない」というのはそのためです。
  • ソバのタンパク質の多くは水溶性なので、ゆでるときに湯の中に溶け出してしまいます。このタンパク質が、そば湯をおいしくするのです。
  • ソバに含まれる健康成分のルチンも、一部はそば湯の中に溶け出しています。  ルチンは抗酸化機能を持ったポリフェノールです。
  • ダイコンは身を守るために、抗菌性や殺菌性のある辛味成分を持っています。だから、ダイコンを食べても食あたりしないのです。また、消化酵素も含まれており、食べすぎてもおなかをこわすことはありません。そのため、「けっして当たらない」という意味で「ダイコン役者」と呼ばれるようになったのです。
  • 寿司に添えられるガリも、強い抗菌作用を持つショウガを甘酢で漬けたものです。ガリは 箸休めに口の中をさっぱりさせるだけでなく、食あたりを防ぐ役割も 担っているのです。
  • 鮮度の良い白身魚の刺身では、死後硬直を起こした状態のコリコリとした食感が好まれます。  一方、カツオやマグロなど遠洋の魚は、動物の肉と同じように死後硬直が過ぎ、熟成が始まったものが刺身として食べられます。
  • コーヒー、紅茶、ココアは世界の三大飲料と呼ばれていて、世界中の人々に飲まれています。この三大飲料には、共通して含まれている物質があります。それは、カフェインです。
  • 私たちが食べている食材に含まれる栄養分や機能成分は、植物や動物が生きるためのものでした。私たちが食材を食べるということは、これらの食材が持つ生きる力をいただくことにほかならないのです。
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