『長谷川先生はあまり患者さん本人のことを考えていませんね』
これは、講演後のアンケートに記された一文でした
最初は、かなりショックを受けたものです
しかし、止むを得ないのかもしれません
自分自身が認知症の元家族ですから・・
どうしても患者さんだけでなく
ご家族やその環境に気配りする癖が
ついたのかもしれません。
皆さんも考えてみてください
自身が認知症になった時
自分のこと以上に
家族にだけは負担を掛けたくない
と思いませんか?
自分自身は、
認知症の元家族である専門医として
患者さんと家族の両面に心配りした
医療を提供したいと思っています。
自分の認知症専門外来では、
家族構成を詳細に伺います。
同居している家族、
同居してない家族の居住地も確認します。
そのことで、介護力を把握します。
家族歴も、診断には重要です。
ここで驚かれるのは、年金額を伺うことです
初診の段階で年金額を聞かれると
一瞬驚かれますが、
質問の意図に気づかれるのか
お答えいただけるものです。
但し、半数の方は親の年金額を知りませんので
次回までに確認いただきます。
そこからようやく頭部CTによる画像診断に入ります。
ご家族の方々は脳の委縮の有無を気にされますが、
脳の委縮の度合いはそれほど重要ではありません。
委縮があっても正常な方も見えますし
委縮がなくても認知症の方も見えます。
画像以上に質問形式による
前頭葉機能と側頭葉機能の検査に時間を掛けます。
結果、初診ですと1時間以上
かかることになります。
以上から
介護力
経済力
認知機能
を組み合せることで、
今後の経過を予想し
対策を想定します。
結果を、ご家族に説明すると
大部分の方は、
不安から解放されるようです。
但し、十分に不安を解放できないケース
例えば、重度の認知機能障害があるのに
介護力、経済力が乏しい場合は
在宅介護に対して
ドクターストップをかけることさえあります
この点が、
『長谷川先生はあまり患者さん本人のことを考えていませんね』
につながるのかもしれませんが、
これも専門医として大事な仕事です。
誰かが、人生をかけて介護の犠牲になることは
できるだけ避けたいものです。