誰でも認知症にはなりたくないものです。そのため、認知症を予防するための脳トレ、つまり脳を鍛えることへの関心が高くなっています。実は、主婦の方に最も効果的な脳トレは、誰でも日頃から行っている「料理をすること」なのです。
実際、認知症専門外来でも、子供さんの独立、逆に子供さん世帯との同居を機に料理を作らなくなり、認知症が発症してしまった患者さんもたくさんいらっしゃいます。
今回の記事では、料理が認知症を予防する理由を認知症専門医である長谷川嘉哉が紹介します。
目次
1.料理は頭を使う、とは
そもそも料理にはとても頭を使います。
1-1.企画・調達
料理をつくるには、その前段階で、どんな料理、何種類、どの程度作るかといった企画を立てる必要があります。その企画も食べる人に合わせ、季節に合わせ、食事の目的に合わせる必要があります。その企画に沿って、買い物に出かけ、必要な材料を、必要な分量調達する必要があります。つまり、作る前段階だけでも相当頭を使うのです。
1-2.実行・味付け・盛り付け
いよいよ料理の段階で、材料を洗う、切る、煮る・焼く・炒めるなどの工程を経てから味付けをして、盛り付けをするのです。これら一連の流れには、知識と経験が必要とされます。
1-3.前頭葉機能をフル稼働
前頭葉の働きは、司令塔のようなものです。企画・調達・実行、味付け・盛り付けまでを総合的にコーディネートするには、前頭葉機能をフル稼働する必要があるのです。そのため、病気で前頭葉を切除した料理上手な女性が、切除後にまったく料理ができなくなってしまったという報告もあるのです。
2.料理は脳トレである理由
料理は、以下のようにも脳に刺激を与えます。
2-1.複雑な工程のメニューに挑戦
特別なお客様のために、新しいメニューや複雑な工程の料理に挑戦するとさらに脳を刺激します。単純な工程でできる料理に比べ、難しく工程が複雑になるほど、脳は常に働き続け、活性化するのです。
2-2.味覚を刺激する
年をとったり、認知機能が低下してくると味覚が低下してきます。料理を定期的に作り、さらに新たな挑戦をして味見を繰り返すことで、味覚を刺激することが出来ます。
2-3.相手を喜ばせると扁桃核を刺激する
料理には「相手を喜ばせる」「達成感がある」「おいしいものが食べられる」というご褒美がついてきます。そのご褒美は、脳の中の感情を司る扁桃核を刺激します。認知症は記憶を司る海馬の萎縮より先に感情を司る扁桃核の委縮が始まります。つまり、扁桃核を刺激することが認知症を予防するのです。
3.男性も挑戦しよう
昔は「男子厨房に入らず」などといわれましたが、脳を鍛えたいなら、老若男女問わずどんどん厨房に入るべきです。特に今まで料理をしたことがない男性は、新しい挑戦になりますから、とても脳に刺激になります。脳は意識して鍛えないと、どんどん老化してしまうのです。
4.料理を作らなくなるきっかけに注意
せっかく料理が好きで作っていても、環境の変化で作らなくなることがあるので注意が必要です。
4-1.子供が独立した
子供さんと一緒に住んでいると、食事の準備、お弁当などと料理をせざるを得ません。しかし、年を経て独立して家を出てしまうと、途端に料理を作る気が亡くなることに注意です。
4-2.配偶者の死
子供が独立しても配偶者がいれば、やむを得ず料理を作り続けるものです。しかし、配偶者が亡くなると、一人暮らしになることが多くなります。そうすると、どうしても今まで程料理をしなくなるので注意が必要です。
4-3.子供世帯と同居になった
子供世帯と同居して、食事の準備も若い世代に任せてしまうと、これをきっかけに認知症を発症することがあります。そのため、仮に同居しても、朝と昼だけは準備したり、週末は腕を振るうといった料理の機会を残すべきです。
5.料理の変化に注意
子供世代の方々にとっては、親の作る料理については常に気を配るようにしてください。例えば、
- 料理のレパートリーが減った
- 味付けが変わった
- 自分で作るのを面倒くさがってお惣菜の購入がふえた
などに気がついたら、認知機能が低下してきたことも疑いましょう。
6.まとめ
- 料理は、前頭葉をフル稼働します。
- そのため、料理は脳トレとしてもすぐれています。
- 男女問わす、取り組むべきです。