新型コロナウイルスを過剰に恐れる家族が陥りがちなリスクを専門医が解説

新型コロナウイルスを過剰に恐れる家族が陥りがちなリスクを専門医が解説

新型コロナウイルスに対しては、正しく恐れてほしいものです。感染者も出ていないのにデイサービスをすべて中止して、「家から外に出させないご家族」さえいらっしゃいます。これはとても危険なことです。コロナを恐れる過ぎることで、体力・免疫力、さらには認知症まで悪化させる可能性さえあるのです。

このような間違った選択をするご家族は、患者さんの経過の中でも間違った選択をする傾向があります。そのことが、医療現場を混乱させることに繋がります。今回の記事では、認知症専門医の長谷川嘉哉が、コロナ禍のなかで、過剰な反応をするご家族が陥りがちなリスクをご紹介します。

1.新型コロナウイルスを過剰に恐れるとは?

私が、外来で経験した過剰に新型コロナウイルスを恐れるご家族の例です。

1-1.外に出るな!

一歩たりとも、外に出ることも禁止しているご家族です。家族によっては、自宅の庭に出ることさえ禁じているのです。「密にならない程度の散歩はしてくださいね」とアドバイスをしても、不思議と聞く耳を持ちません。

1-2.デイにも行くな!

「新型コロナ禍で、デイサービスなどの介護事業所が経営危機になっている報道」を不思議に思っている方も多いのではないでしょうか? 確かに、職員や利用者にコロナ感染者がでれば介護事業所が運営を停止します。しかし、そのようなケースは稀です。多くは、利用者のデイの利用自粛が原因です。コロナ感染者が出ていないのに、デイの利用を中止してしまうのです。

1-3.ショートステイなんて持ってのほか!

在宅介護の継続のためには、ショートステイの利用は欠かせません。しかし、そのショートステイの利用すら中止してしまうのです。ご家族は、「新型コロナが完全に収まるまで」と言われます。インフルエンザウイルスは、ワクチンや治療薬ができても一定数感染者は毎年存在します。したがって、新型コロナウイルスも完全に収まることはないと思うのですが・・。

2.過剰な対応による要介護者のリスクとは

過剰な反応は、要介護者の以下のようなリスクを高めます。

2-1.運動機能の低下

当たり前ですが、一日中家の中にいれば、歩く機会も減り、運動の機会も減ります。いわゆる、廃用に伴う両下肢の筋力低下を引き起こして、転倒・骨折の危険性が高くなります。

2-2.認知機能の低下

廃用に伴う悪影響は、運動機能だけでなく認知機能にも及びます。一日中、家にいれば人に会う機会も減り、周囲からの刺激も明らかに減ります。入院に伴って、認知症が悪化することと同じように、認知機能が悪化してしまうのです。

2-3.免疫力の低下

運動機能も認知機能も低下すると、免疫機能まで悪化します。新型コロナウイルスを過剰に怖がって免疫機能が低下してしまえば、ますます感染症に弱くなってしまいます。過剰な生活制限で、新型コロナウイルスに感染しやすなってしまえば意味がありません。

3.過剰に恐れる家族の特徴

新型コロナウイルスを過剰に恐れるご家族には、以下のような特徴があります。

3-1.情報を正しく理解できない

過剰に恐れるご家族は、新聞やTVの情報を過剰なほど集めています。しかし、情報は収集しても、正しく理解する能力に欠けているようです。同様に、外来で我々が正しい情報を伝えても理解できないようです。


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3-2.感情に流される

せっかくの情報を理解できない理由の一つに、感情に流されることがあります。せっかくの情報が与えられても、「とにかく怖い」という感情が強いため、正しく情報が伝わらないのです。

3-3.思いのほか、介護には参加していない

これも実際によくあるのですが、「誰がデイの利用を中止しろと言うのですか?」と質問すると、「離れて住む子供」と答えられる方がいます。つまり、老夫婦で生活している親に対して、都会に住む子供が電話だけで「家の外に出てはいけない。デイなんてもってのほか」と指示しているのです。つまり、実際に両親の生活を見てもいない人間が、過剰な外出抑制を強いているのです。

4.新型コロナ以外のリスク

実は、新型コロナウイルスに過剰な反応をするご家族が陥りがちなリスクがあります。

4-1.無用な入院

肺炎や骨折などの入院はやむを得ません。しかし、高齢に伴う食欲低下など、天寿を全うする経過の中で、当然起こりうる病態もあります。そのようなケースは、できれば自然のまま自宅や施設で看取るべきです。しかし、「食事がとれないなら入院させてください」と90歳を超えた親に対して主張するご家族もいらしゃるのです。

4-2.無用な延命

高齢になっての無用な入院は、無用な延命につながります。加齢に伴って食事がとれない高齢者に食事をとれるようにすることはできません。そうなると、病院は胃ろうや中心静脈栄養をいれて、一日も早く退院してもらおうとします。

無用に延命をされた高齢者の経過は家族も本人の負担も大です。ちなみに31年医師をやっている私は、自分の親に、胃ろうや中心静脈栄養は絶対に入れません。胃ろうと中心静脈栄養については以下の記事も参考になさってください。

4-3.介護に参加しない理解力にかけた家族が判断を間違う

新型コロナウイルスを過剰に怖がるご家族は、「理解力に欠けて介護に参加しない」特徴があります。高齢の患者さんの経過で、間違えて選択をするご家族は同様です。今の時代、胃ろうや中心静脈栄養の情報はネットでも手に入ります。もちろん主治医からも説明があります。しかし、理解力に欠け、実際に介護にもかかわっていないため、最後は感情に流されて、間違った選択をしてしまうのです。

5.まとめ

  • 新型コロナウイルスに過剰に恐れ、間違った対応をするご家族がいます。
  • ご家族の特徴には、理解力にかけ、感情に流され、実際は介護に携わっていない特徴があります。
  • このようなご家族は、新型コロナウイルス以外のケースにおいても、間違った選択をする危険があります。

 

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