感情の整理をすると穏やかな看取りが実現する理由

感情の整理をすると穏やかな看取りが実現する理由

先日、とても残念なご家族がいらっしゃいました。パーキンソン病患者さんが誤嚥性肺炎で入院。全身状態が悪化しているため経口摂取が不可能。病院の医師からは自然経過による看取りを薦められるも、延命を希望。中心静脈栄養を留置されてしまったのです。結果、劣悪な施設へ転院することになりました。実は、以前から外来において、パーキンソン病患者さんは、窒息・誤嚥性肺炎が起こることを説明していました。そして、できれば自然経過による死をお勧めしていたのですが…。

人の死を目前にすると人間はどうしても感情的になってしまいます。しかし、そこで御家族が感情に流されると、患者さん自身が不利益を被ってしまいます。今回の記事では、人の死に際して、穏やかな看取りをするための感情の整理方法をご紹介します。

1.死を目前にした家族の感情とは?

医療従事者のように日々、「人の死」と関わっていても、冷静になれない時もあります。そのため、日頃死に関わらない御家族の心情は、とても不安定なものです。「かわいそう」「生かしてほしい」「自分の判断で寿命を決定したくない」「2、3日持ちこたえれば元のように戻ることもあると信じたい」などの気持ちが巡るのではないでしょうか? それに対して、医師からは、「延命するか否か、すぐに決めてください」とせかされるのです。医師は速やかに方針にしたがって治療を行わなければならない責任があるからです。

Doctor pronouncing death of patient
死期が迫っているときに感情に左右されるとベストな選択肢を失うことがあります

2.感情が平穏な看取りの邪魔をする?

そもそも感情とは何でしょうか?一般的には、感情は、「ものごとや対象に対して抱く気持ちのこと。喜び、悲しみ、怒り、諦め、驚き、嫌悪、恐怖などがある」と定義されます。感情の対義語は、「理性」と定義できます。理性とは、「物事の道理を考える能力。道理に従って判断したり行動したりする能力。」と定義されます。

医師としては、とくに平穏な看取りのためには、感情は抑え気味にして、できるだけ理性的に判断してもらいたいのです。

3.感情的な判断をしがちな家族の特徴

感情的な判断をしがちな御家族には以下のような特徴があります。

3-1.医師の説明で「良くなる可能性」だけを信じる

医師は、ご家族へは、「改善する可能性と、改善しない可能性」を説明します。特に、患者さんが高齢者の場合は、改善しない可能性が高いことを強調するものです。それなのに、なぜか確率が低い、「改善する可能性」だけを信じようとするのです。

3-2.理性的な男性が感情的になる

決して男女差別ではありませんが、どちらかというと、男性は理性的、女性が感情的になりがちです。しかし、主たる介護者である男性が理性的でないと、感情的な判断をしがちになります。

3-3.年金目的の方もいるのでは

マスコミにおける話でなく、現実に私の患者さんでも何件も経験しています。感情的・理性的判断のいずれでもなく、「親の年金が必要であるために、どんな形でも生きていてほしい!」と明確に言われることがあるのです。

Man leaning hands against wall
実際に肉親の死期が迫ると、感情的になってしまうことも理解できますが…

4.終末期における感情を排除した理性とは?

患者さんが急変したときに、感情をコントロールできるご家族はとても冷静です。理性的に、病状、治療の種類、それに伴うメリット・デメリットを聞かれます。その結果、患者さんを第一に、自然な経過を選ばれることが多くなります。逆に、感情的な御家族は、患者さんよりも自分たちの感情を優先する傾向にあります。患者さん本人がどう思われているかに対する考えはあまりないように思われます。

5.感情的な家族に対する医療従事者の本音は?

実は、感情的な御家族に対する医療従事者は以下のような感情を持っています。

5-1.ご家族の「かわいそう」という言葉は、実態を知らなすぎるだろう

感情的な御家族は、不思議と「かわいそう」という言葉を使う傾向があるのですが、言葉ほど介護には関わらない傾向があります。急変時に、患者さんに「おやじ(おふくろ)、死ぬな!生きてくれ!」と感情的に訴える御家族ほど、状態が落ち着くとお見舞いにも来なくなることが多いのです。

5-2.説明しても理解してもらえないだろう

延命が、患者さんに苦痛になることをどれだけ説明しても、理解をしてくれません。逆に、「良くなる可能もありますよね?」と聞かれます。もちろん、良くなる可能性もゼロではありませんが、限りなく低いものです。そこだけを取って、「あの時、良くなると言った」とクレームになることがあります。医師としては、期待を持たせることもなかなかいえない理由がここにあります。

5-3.訴訟リスクが怖い

クレームがひどくなると、訴訟になることさえあります。最近は弁護士さんも仕事がないのか、勝ち負け関係なく訴訟になることが増えているのです。訴訟に巻き込まれると、心身ともに疲弊してしまいます。

6.感情的なご家族を持った患者さんの行く末は?

以上の結果、感情的な御家族の患者さんは以下のような行く末になります。

6-1.リスクを考え、延命優先

医師としては、自然経過での看取りを勧めて、ご家族もそのときは納得してくださったようでも、お亡くなりになったあとで、「なぜ延命してくれなかった?」、「本当は、改善の可能性があったのでは?」と言われる可能性があります。そのため、患者さんの苦痛等よりも、延命を優先せざるを得なくなる傾向にあります。

6-2.医師は、できるだけ早く退院させたいと考える

正直、感情的な御家族とのかかわりは、医療従事者も疲弊します。1日でも早く、退院・転院してもらいたいとの思いが本音です。

6-3.劣悪な施設で苦痛を伴った死

無用な延命を施されたような患者さんが、夢のような素晴らしい施設が待っているわけではありません。このような患者さんは、医療・看護レベルが劣悪な施設でしか受け入れてはくれません。

7.感情の整理をする方法とは

感情的になりがちな御家族には以下をお勧めしています。

7-1.問題点を書き出す

頭の中だけで考えていると、混乱して、まとまりません。そんな時は、紙に問題点を掻き出しましょう。そして、治療法選択によるメリット・デメリットを俯瞰して眺めましょう。そうすると理性的に考えられるようになります。

7-2.自らも情報収拾

担当の医師やケースワーカだけの話を鵜呑みにしてはいけません。今の時代、どれだけでも情報が集められます。自らも、情報を週賦することで、多くの意見・考え方も参考にしましょう。

7-3.医師に聞いてほしい効果的な質問がある

どうしても迷ったら、主治医に質問をしましょう。その質問とは、「先生の親ならどうしますか?」です。これは結構参考になります。主治医が、自分の親にならしない治療は、ご家族も選択しないことをお勧めします。

8.まとめ

  • 穏やかな看取りのためには、家族の理性的な判断が大事です。
  • 感情的になりすぎると、患者さん本位でない治療選択になりがちです。
  • 無用な延命を施された患者さんの行く末は、悲惨です。
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