医師や歯科医師は、基本的に「わがまま」です。そのわがままさは、会計事務所に対しても同様です。しかし、会計事務所にとってはお得意様であるため、わがままを許してくれるのです。そのため、ますます、医師・歯科医師は、数字も読めないバカな経営者になってしまいます。
そんな中、私の顧問会計事務所の会計士さんは、相手は関係なく、結果が出ない経営者には叱ります。叱る、罵声、怒鳴るの嵐です。しかし、負けずに結果を出すことで、成果を得られることができるのです。今回の記事では、素人経営者であった長谷川嘉哉を、それなりの医療法人グループの経営者にしてくれた、叱る会計士さんについてご紹介します。
1.会計事務所のお陰で枕を高くして眠られる、とは
新型コロナウイルスの蔓延で、売上が減り、不安を抱えている医師・歯科医師が多いのではないでしょうか? 不安を減らすには、徹底した現状分析、今後の経営計画が大事です。会計士さんに怒られながらも、自ら学び行動することで、どんな環境になっても、枕を高くして眠ることができるのです。
1-1.決算書の勉強は簡単
「決算書が読めますか?」という、質問に自信をもって答えられる医師・歯科医師の先生は少ないのではないでしょうか? 我々、医師・歯科医師はそれなりの勉強をして資格を取り、日々の生活の中でも常に勉強し続けています。その能力と努力を考えれば、決算書の読み方を学ぶことなどは、簡単なことなのです。
1-2.経営ができない医療従事者は実は医療のレベルも?
医師や歯科医師が、「決算書の読み方などの経営の知識を得ることに罪悪感」を持っている先生方が多いのではないでしょうか? しかし、私の持論では、「経営ができない医師歯科医師は、医療のレベルも大したことがない」です。人間は、「これはできるが、あれはできない」などど分けられるものではありません。経営の知識も持たない医療従事者は、その専門である医療においても何か漏れがあるものです。
1-3.経営の知識が、社会資本を守る
患者さんのためと、言いながら数字が読めない医師・歯科医師は言語道断です。今回の新型コロナ騒ぎのような経営環境の悪化の際に、患者さんやスッタフへの責任を全うするには、経営知識が必須です。そのことが、社会資本である医療機関を守ることにつながります。
2.会計事務所は、わがままな経営者の奴隷ではない
医師・歯科医のなかには、会計事務所さんへの対応を勘違いしている方がいらっしゃいます。少なくとも、会計事務所はわがままな経営者の奴隷ではありません。
2-1.納税の流れを知った資料準備を
基本的に、医師・歯科医に関わらず、社会人であれば納税の流れを知っておくべきです。「売上、変動費、固定費から利益を計算する」という極めて単純なことです。流れが分からないので、準備する資料に不備が生じ、それを会計事務所から指摘され、勝手に気分を害しているわがままな人が結構いるのです。
2-2.専門職に対する敬意が必要
会計事務所に提出する資料は、経営者が作るべきです。しかし、時間的な問題で会計事務所にお願いすることもあります。しかし会計事務所に、「お願いする姿勢」が必要です。我々、医師や歯科医は専門職としての自信を持っています。ならば、同じ専門職である会計事務所にも敬意を払うべきなのです。
2-3.結果、数字に強くなる
「お金を払っているから、会計事務所にやってもらうべき」という考え方もあります。しかし、納税の流れを知り、自分で必要書類を準備することで、結果として数字に強くなるのです。
3.「会計士さんに叱られる!」とは
私の顧問会計士さんは、経営だけでなく、経費についてはさらに厳しく指導してくれます。
3-1.高級車は×
私の顧問会計士さんは、高級車についてはとても厳しく指導してくれます。医師や歯科医師の方は、経営実態に不相応な高級車に乗っている方が、とても多いものです。「先生が高級車を乗ることで売上が上がりますか?」、「先生が高級車に乗ることで職員が喜びますか?」と問いかけられます。もちろん、経営努力をして盤石な決算書になると、「高級車に乗ることのお許し」が出ます。しかし、その頃には高級車に対する関心が無くなっているから不思議です。
3-2.決算書は嘘つかない
少し経営が軌道に乗ってくると、我々の周りにはいろいろな業者がすり寄ってきます。その代表格が、リゾート会員権です。それに対しても、私の顧問会計士さんは厳しいです。決算書は経営者の性格を明確に表します。決算書に、高級車、リゾート会員権、高額な接待交際費などがあれば、「患者さんのため」、「スタッフのため」、「社会のため」といっていても、「嘘」であることがばれてしまうのです。
3-3.赤字は社会悪
私の顧問会計士さんは、特に赤字には厳しいです。税金も払わない赤字は「社会悪」なのです。赤字にならないためには、売上を確保して、無駄な経費を減らすことが重要です。医療法人であれば、最終的には役員報酬を減らすことさえ必要になります。なお、今回の新型コロナウイルスによる売上減少においては、期の途中での役員報酬の減額も認められましたので参考になさってください。
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4.ダメな経営者とは?
私は、10名程の医師・歯科医師への経営コンサルもさせていただいています。会計事務所への対応は、それぞれでありとても面白いものです。
4-1.丸投げする人
歯医者さんに多い傾向です。「よくわからないから、全部お願い」という、丸投げスタイルです。これは、会計事務所からも嫌われることですし、何よりも経営者自身が成長しません。もちろん、事業自体も成長しません。
4-2.失敗は他責
丸投げ経営者は、自身の不勉強により、事業も行き詰ります。そんな時にも、責任を会計事務所に押し付けます。経営においては、何があっても経営者の責任なのです。今回の新型コロナウイルスによる経営悪化も、スタッフの突然の退職も、郵便ポストの色が赤いこともすべて経営者の責任という心構えが必要なのです。
4-3.会計事務所を何度も代える
不勉強で、丸投げをして、責任は会計事務所に押し付ける経営者は、会計事務所を何度も代えます。しかし、会計事務所を変えるのではなく、自身を変えないと結果はでません。何しろ、経営者が変えていると思っていても、実体は会計事務所に断られていることに気が付いていない愚かな経営者もいるのです。
5.お金を払って叱ってくれる会計事務所を探そう
医師や歯科医師には、本気で叱ってくれる会計事務所などありません。叱ってもらおうとすれば、お金を払ってお願いするしかないのです。そんな会計事務所は以下のような特徴があります。
5-1.会計事務所としての自信がある
叱ってくれるような会計事務所は、プロとしての自信を持っています。単なる、丸投げを希望する経営者にも、決算に強くなってもらうために、あえて経営者自身に資料の準備をしてもらいます。わがままな医師・歯科医師に迎合することはありません。
5-2.税金計算でなく経営計画を重視する
これからの会計事務所は、単なる税金計算では生きていけません。5年先をも見据えた経営計画の指導が重要です。私自身は、10年以上前から、叱る会計士さんと毎年5年先の経営計画を作成しています。それらを実現することで、毎晩、枕を高くして眠ることができているのです。
5-3.人格形成まで繋がる
経営者は、経営を通じて人格形成をしているのかもしれません。叱る会計士さんは、「保険で守られている医療は、経営としてのレベルは低くても何とかなる。しかし、いつまで続くかわからない」と言われます。やはり、医師歯科医といえども、人格形成につながるような経営をしたいものです。そのことが、これからの乱世でも社会資本としての医療機関を守ることにつながるのです。
6.まとめ
- 経営ができない医師歯科医師は、医療のレベルも大したことがありません。
- 経理を丸投げする経営者は、自身の不勉強・業績悪化を、会計事務所の責任にします。
- 医師歯科医といえども、人格形成につながるような経営をしたいものです。