日々の認知症外来では、認知症のサプリメントについての質問をよく受けます。「少しでも患者さんの認知症の進行を抑えたい、改善させたい」という切実な思いを感じます。そのため、「医師から処方される薬以外に何かプラスになるものがないか?」とお探しの気持ちはよくわかります。そんな時には、保険適応の抗認知症薬をしっかりと服用していただいてから、サプリメントとしてイチョウ葉エキスをお薦めしています。
同時に、介護者自身が「自分はこのように認知症になりたくない」との思いから認知症のサプリメントに関心をもたれるのです。その場合は、保険適応の抗認知症薬は使用できませのでイチョウ葉エキスをお薦めしています。
今回の記事では、認知症専門医の長谷川嘉哉が、認知症予防のためにイチョウ葉エキスをお薦めする7つの理由をご紹介します。
目次
1.認知症に対して最も効果があるものは
皆さんに、最も知っておいていただきたいことがあります。それは、本当に効果がある薬は、医師が処方する「保険で承認されたもの」であることです。保険で承認された薬は、行政の承認や確認、許可、監督等の結果、効果や副作用、飲み合わせのリスク回避等を徹底して、ようやく医師が処方できるものです。
一方で、健康食品は、治験等によって明確に効果があるという証明はされていません。つまり、効果はないのです。薬事法により、効能・効果を謳うことは厳しく規制されています。したがって、広告もあくまで個人の感想を述べているに過ぎません。
2.イチョウ葉エキスとは?
そんな効果があるとは、証明されていない健康食品の中でもイチョウ葉エキスをおすすめするには理由があります。
2-1.認知症患者さんに関する研究が世界中で進められている
イチョウ葉エキスについては、何十年にもわたって世界中で「軽症から重度の認知症患者309人に対する研究」「認知障害及び認知症に対してイチョウ葉エキスの有効性および有害性」「米国3069名のイチョウ葉エキス摂取するグループとプラセボを摂取するグループの6.1年間の追跡研究」など、多くの研究発表がなされ、その効果について議論されています。
2-2.効果があるという研究も、効果なしもあり
多くの研究結果には、イチョウ葉エキスには効果があるという論文も、効果がない論文もあります。しかし少なくとも「イチョウ葉エキスはその効果について研究になりうる成分」であることがわかります。現在、日本で販売されている健康食品の中で、医師による論文の対象になっている薬剤は、イチョウ葉エキス以外に殆どないのです。
論文については、国立研究開発法人 医薬基盤・健康・栄養研究所のサイト「イチョウ葉エキス」の項をご覧ください。
2-3.世界60か国以上で使用
イチョウ葉エキスは世界60か国以上で使用され、ドイツでは医薬品として販売されていて、記憶力の減退やうつ、めまい、耳鳴り等に使われています。日本で販売されている健康食品のなかで、海外で医薬品として使われている薬はないのです。
3.イチョウ葉エキスの効果
イチョウ葉エキスには、何種類もの成分が含まれています。その中でも重要なものはフラボノイド配糖体とテルペノイドです。この2種類の物質は、抗酸化作用、血液凝固抑制作用、血液循環改善作用に加えて、アミロイドβの形成抑制、リン酸化タウ蛋白の海馬への蓄積の予防が報告されています。
4.イチョウ葉エキスの有効可能性がある疾患
イチョウ葉エキスの作用機序からは以下の疾患への効果があるかもしれません。
4-1.アルツハイマー型認知症
アルツハイマー型認知症は、アミロイドβや、リン酸化タウ蛋白の神経細胞への毒性が原因です。その作用機序からも、アルツハイマー型認知症患者さんへ、イチョウ葉エキスの効果があると考えています。
4-2.血管性認知症
脳梗塞を繰り返したことによる血管性認知症患者さんへの治療は、脳への血流を増やすことが重要です。その点、血液凝固抑制作用、血液循環改善作用をもつイチョウ葉エキスは効果的です。実際、私の患者さんでも、投与してすぐに変化が感じられるのは、血管性認知症の方です。
4-3.めまい、末梢循環不全の方
イチョウ葉エキスは、血流の改善の中でも、特に小さな血管の血流を改善させます。そのため、耳の奥の微細な血流を改善することでめまいを軽減させます。その他にも、末梢循環不全の患者さんの歩行距離の改善、さらには下肢の静脈瘤が改善した報告もされています。
5.ブレイングループのイチョウ葉エキス開発でこだわったこと
患者さんに、イチョウ葉エキスを薦めたいと思っても、自信をもって勧めることができる既存の製品がなかったため、自分で監修して作ってしまいました。
5-1.既存品の問題「質にばらつき」をクリア
既存品では、品質の問題のうち成分量のばらつきが気になっていたポイントでした。特に中国製はばらつきが大きいため、いくら価格が安いとはいえお勧めではありません。そのなかで日本製で値段も手ごろで、成分量のばらつきの最も小さかったものを選択しました。
5-2.飲みやすいカプセルへ
市販されているイチョウ葉エキスの中には、「錠剤では喉に引っかかりやすい」という声がありました。その声に応える形で、カプセル状にして飲みやすくしました。
5-3.一日1粒で良い
なぜか、サプリメントは一日3回の服用を勧めるものが多いです。一日3回は、負担が多く飲み忘れにつながります。高齢者の場合は多くの薬を飲むことが多いので、少しでもその手間を減らしてあげたいという願いがありました。私が監修した製品は、特定の製造法・成分の含有量を満たし、一日1粒でイチョウ葉エキス120mgを摂取することが出来ます。
6.イチョウ葉エキス摂取をお勧めする方とは
私がイチョウ葉エキスをお勧めするのは、以下の方々です。
6-1.抗認知症薬に追加
医師に認知症の診断をされ、保険薬である抗認知症薬のリバスタッチパッチ、アリセプト、レミニールなどを処方されいている患者さんに追加の形での服薬はお勧めです。但し、これらの保険薬とイチョウ葉エキスを同時に開始することは避けてください。同時に開始すると、効果・副作用がどちらの物質によるものか分からなくなるからです。まずは、保険薬を維持量まで使用してから、イチョウ葉エキスの服薬を開始してください。
また、イチョウ葉エキスは、どちらかというとアクセル系の作用をもたらすので、メマリーや抑肝散で患者さんを穏やかにしようとする際には、主治医と相談の上イチョウ葉エキスの使用を検討してください。
6-2.健康な介護者が予防的に・・私も飲んでいます。
イチョウ葉エキスは、認知症の患者さんだけでなく、介護者の方が予防的に摂取しても問題ありません。健康食品ですから当然と言えば当然です。そのため、認知症専門医である私もイチョウ葉エキスを服薬しています。
7.副作用
イチョウ葉エキスには、殆ど副作用を認めませんが、以下の情報をお知らせしておきます。
7-1.ギンコール酸は、規格品は心配ない
昔から、イチョウ葉エキスというとギンコール酸によるアレルギーが心配されています。しかし、我が国の健康食品の規格品では、「ギンコール酸の含有量が5ppm以下であること」が条件づけられています。それなりの値段の、信用おけるメーカの商品であれば心配はないのです。
7-2.抗凝固剤との併用に注意
医師から抗血小板薬、抗血液凝固薬を服用しているひとは出血傾向が高まることがあるので主治医に「イチョウ葉エキスを服用したい旨」を伝えてください。イチョウ葉エキスは、保険薬ではないので、もちろん併用禁忌ではありません。しかし、医師によっては、患者さんの状態によっては、「イチョウ葉エキスの併用を避けてください」と指示されることもあります。これなどは、健康食品でしかないイチョウ葉エキスの効果を医師も認識している証明とも言えるのです。
8.まとめ
- 認知症にもっとも効果があるのは、保険で承認された抗認知症薬です。
- しかし日本では健康食品であるイチョウ葉エキスは、世界60か国以上で使用され、ドイツでは医薬品として販売されていています。
- 作用機序から、認知症の2大原因のアルツハイマー型認知症と血管性認知症のいずれにも効果があります。