高血圧を気にされている人、すでに血圧を下げる薬を飲んでいる方はたくさんいらっしゃいます。高血圧の予防・改善のためには減塩が有効とされています。確かに、減塩が有効なことは分かりますが、なかなか実行は難しいものです。そんな時は、減塩に加え、カリウムによる排塩も有効です。今回の記事では、総合内科専門医の長谷川嘉哉が、カリウム摂取が高血圧に有効である理由と、摂取方法についてご紹介します。
目次
1.カリウムとは?
カリウムとは、人間の身体に必要なミネラルの一種で、以下のような働きをします。
1-1.浸透圧の調整
カリウムはナトリウムとともに、細胞内液の浸透圧を調節して、一定に保つ働きがあります。
1-2.血圧を下げる
カリウムは、腎臓に働きかけ、高血圧の原因となるナトリウムの吸収を防いで尿への排泄を促してくれる作用があります。結果、血圧を下げる働きをします。
1-3.筋肉の働きを良くする
カリウムは神経の興奮や筋肉の収縮に関わっているため、筋肉の動きをスムーズにする働きがあります。
2.「尿ナトリウム・カリウム比」とは?
塩分、いわゆるナトリウムの取りすぎは高血圧の原因になります。しかし、野菜や果物に含まれるカリウムをそれ以上に摂取すると、血圧が低下することが分かっています。その指標となるのが、尿検査における、塩分(ナトリウム)と野菜(カリウム)のバランスを表す「尿ナトリウム・カリウム比(ナトカリ比)」です。
実際、13,000人を対象とした研究で、尿中ナトリウム・カリウム比と収縮期血圧のデータを解析しすると、尿中ナトリウム・カリウム比の低下が、収縮期血圧を優位に低下させることが明らかになりました。
つまり、「尿ナトリウム ・カリウム比」が高いと、食事中の塩分が多く、野菜や果物のカリウムが不足していることを意味します。そのため日本高血圧学会のガイドラインでは、減塩(ナトリウム制限)と野菜や果物(カリウム)の摂取を高血圧予防目的で推奨しているのです。
3.カリウムを多く含む食事は
日本人の食事の習慣では、食塩の摂取を減らすだけでは無理があります。そのため、意識してカリウムの摂取をしたいものです。カリウムが多く含まれる食材を紹介します。なお、「日本人の食事摂取基準(2020年版)」では、生活習慣病の予防を目的とした成人1人1日当たりのカリウム摂取の目標量を、男性3,000mg以上、女性2,600mg以上としています。
100gあたりのカリウムの含有量
- 野菜:アボカド 720㎎、小松菜 500㎎
- 芋類:さつま芋540mg、里芋560mg、長芋430mg
- 豆類:納豆660mg、きなこ1900mg
- キノコ類:シメジ380mg、えのき340mg、エリンギ460mg
- 果物:バナナ360mg、メロン350mg、干し柿670mg
- 種実類:アーモンド740mg、くり460mg、バターピーナッツ760mg
当たり前ですが、和食で野菜を意識して、イモ類、豆類、キノコ類を積極的に摂取。その上で、果物とナッツ類を摂取すればカリウムは十分摂取できるのです。何となく、身体に良さそうな食材には、結果的にカリウムがたくさん含まれているようです。
4.摂取においての注意点は
カリウムは水溶性のため、ゆでると溶けだしてしまいます。そのため、汁ごと飲める、スープや味噌汁に入れて料理することがお勧めです。味噌汁は、塩分であるナトリウムが多いので、積極的にカリウムの多い野菜・海藻を具に入れることが大事です。
なお、糖尿病や慢性腎不全で腎機能が低下している方は、カリウム制限が必要な場合があります。かかりつけ医に相談して、高カリウムの危険性がある場合は、野菜等をゆでることでカリウムを減らすことも必要になります。
5.カリウム以外のミネラル摂取も
カルシウムやマグネシウムは、血圧に対して、カリウムと同様の働きをするミネラルです。カリウムと同様に意識的に摂取することがお薦めです。
- カルシウム:魚、牛乳、豆腐、ゴマに多く含まれています。
- マグネシウム:海苔、わかめ、などの海藻類。玄米や発芽玄米、その他ナッツ類に多く含まれます。
6.まとめ
- カリウムには、高血圧の原因となるナトリウムの吸収を防いで尿への排泄を促してくれる作用があります。
- そのため、高血圧の予防には、減塩だけでなくカリウムの摂取が大事です。
- カリウムの摂取のためには、和食で野菜、イモ類、豆類、キノコ類を積極的に摂取。その上で、果物とナッツ類を摂取することがお薦めです。