皆さん、自身の財産を把握していますか? 財産と言っても、現預金、不動産、有価証券、貴金属と様々です。加入している保険の把握も大事です。もちろん、住宅ローンなどの負債の残高も知っておく必要があります。もし把握されていないようであれば、この年末に一度、財産目録作成をお勧めします。
この財産目録作成は、自身の財産の把握だけでなく、相続の際にも役立ち、さらに認知症の予防にもつながるものです。この記事では、認知症専門医でありファイナンシャルプランナーであるの長谷川が、その作り方と効用についてご紹介します。
目次
1.長谷川家の伝統行事
私の父は、結婚以来、毎年12月31日に我が家の財産の“洗い出し”をしていました(今でもしています)。具体的には、貯金がいくら、保有している株の時価がいくら、不動産があればそれの時価評価も書き記しています。さらに、今年買った大きな買い物なども記載されています。父親は、結婚以来続けているので金婚式を迎えた現在、50年以上続けているのですから大したものです。
私も、時々そのノートを見せて貰うのですが、結婚当初などとても財産とは言えない僅かな貯金があるだけです。そんな中にも、長女〈私の姉〉にピアノを購入した記事などは、本当に子どものためにやり繰りして購入した姿が浮かび上がります。その後も、社宅から一軒家を購入したり、さらに一軒家を売って別の場所に買いなおしたりと、右肩上がりの日本の経済成長を如実に表しているようです。財産目録の流れが、夫婦そして家族の歩みとなっているのです。
2.財産の「見える化」にマネーフォワードMeがお薦め!
まずは自身のおおよその資産状況を把握することが大事です。しかし、自分も以前は年末にまとめて棚卸のようにエクセルで管理をしていました。しかし、マネーフォワードMeを使い始めたところこの効果が凄い!
マネーフォワードMeは、銀行口座、証券口座、企業型確定拠出年金、田中貴金属などかなりのものリンクできます。したがって、これらをリンクすれば一目で個人の資産の大半が把握できてしまいます。
マネーフォワードMeの優れたところはリンク先の名義を選ばないことです。具体的には、個人だけでなく、奥さんや、子供たちの名義のものもリンクできます。さらにプライベートカンパニーの預金口座や証券口座もリンクできます。つまり、これらを全部リンクすれば、自分だけでなく家族、そして法人の資産の全体像が「見える化」されるのです。
しかし、それではあまりにも全体が大きくなりすぎて見にくくなります。その時は設定をすれば、個人、家族、法人ごとに分けることができます。全体像をみてから、個別も見れる。あまりの優秀さに感動です。
以上については月額500円程度の有料版を使って開始することをお薦めします。実際、日々の生活で現金がないことで不安を持っていた方が、全財産をマネーフォワードMeで把握したおかげで安堵された方もいらっしゃいます。超お薦めです。
3.若い夫婦にもお勧め
父親は、結婚式に呼ばれると「財産目録作成」を勧めているようです。幸せ絶頂の二人が、僅かな貯金から始まり、少しずつ財産を形成していく姿はとても素敵です。結果、夫婦双方が互いに依存するのではなく、社会人として自立することにつながるのです。
もちろん私も、息子としてきちんと引き継いでいます。結婚して29年、私はさらにバージョンアップして毎月財産と借金の残高をエクセルで管理しています。貯金額だけでなく、負債も把握するためには、個人の貸借対照表作成もお勧めです。貸借対照表によって、本当の財産を知ることができるのです。仮に自宅という不動産があっても銀行ローンが多ければ、生活を質素にする必要があるのです。
個人で事業をしている方は、個人の財産と事業の財産を合算するとより効果的です。
4.財産目録が認知症を予防する
私が認知症の診察をする際に重視している質問があります。「金銭管理ができていますか?」です。今までできていた金銭管理ができなくなった場合、認知症であることが多いからです。
ところが、なぜか認知症患者さんには、もともと健康なときから金銭管理をしていなかった方が多いのです。つまり、男性であれば奥さんに、女性であれば旦那さんに100%依存していて、いくら貯金があるかも全く知らないのです。これは信頼しているというより、社会人として“思考停止”していると思われます。
見方を変えると「財産管理に無関心であること」が、「認知症のリスクファクター」になるのです。夫婦のどちらかがリーダーシップを取って管理することは問題ありませんが、双方が最低限関心を持っておく必要があるのです。「年末の財産目録作成」は、そのための一助にもなりますので、多くの意味でお勧めです。
5.財産目録作成は、遺言作成の第一歩
認知症専門医として伝えたいことがあります。それは、「認知症になると遺言は書けない」ということです。そのため、多くの方に遺言作成を薦めています(もちろん私も45歳の時に遺言を作成しています)。しかし、遺言を書く気になっても多くの方が挫折します。それはなぜでしょうか?
実は、遺言を作成する最初のステップが財産目録作成なのです。これが結構な手間なのです。そのため多くの方がこの段階で挫折してしまうのです。
しかし、常日頃から年1回の財産目録を作っていればどうでしょうか? 最初の難関を楽にクリアすることになり、スムーズに遺言作成にもつながるのです。
6.銀行からの借入れにも有効
実は、財産目録は、銀行からの借入の際にも有効です。あるとき銀行の方から、「個人の資産状況を教えてもらえませんか?」と聞かれたことがあります。その際に、毎月作っている財産目録を渡すと、「こういうのが欲しかったんです」と大変喜ばれ、スムーズに融資が進みました。この点からも定期的な財産目録作成が役に立つのです。
7.まとめ
- 長谷川家の伝統行事である財産目録作成はお勧めです。
- 財産目録を作成することは、認知症予防にまでつながります。
- さらに財産目録が、遺言作成、銀行からの融資にまで役立つのです。