世の中には予約制が導入されている施設が多々あります。その多くでは概ね時間通り運営され、予約時間より遅くなる事は少ないです。しかしながら、大きな病院や診療所においては、なぜか予約通りには行きません。言い訳ではないのですが、これには医療独特の理由があります。今回の記事では、医療機関の予約時間が遅れる理由について説明させていただきます。
目次
1.医療機関の予約が遅くなる理由
医療機関においては、物を見ているわけではありません。人、それも健康な人ではなく病気である患者さんを診ています。すべての患者さんが、何事もなく定期受診されるなら順調に予約通りに進みます。しかし中には、前回の受診から症状が悪くなっている人もいらっしゃいます。さらには予約日まで待つこともできないほどの緊急を要する患者さんもいらっしゃいます。そうなるとその患者さんへの時間がかかるため、予約が後に伸びてしまいます。逆に言えば予約通りに診察することにこだわりすぎることは、とても冷たい、融通の利かない対応になってしまうのです。
2.予約を減らすことはできないのか?
そもそも急変や緊急の患者さんが想定されるなら余裕を持った予約を入れれば良いと思われがちです。しかし、この国ではそもそも40年前に厚生労働省が、「医師過剰時代が来る」と医学部の定員まで減らすという間違った判断をしてしまいました。そのため現状、どこの医療機関でも医師が足りません。そのため時間的な無理があっても、ある一定の予約は入れざるを得ないのです。
3.クレームの多い患者さんはMCI(早期認知症)?
医療機関では、受付・看護師・医師に至るまで必死で働いています。
それを知る多くの患者さんは黙って待っていただけています。誰でも急変・緊急患者さんになる可能性があります。「お互い様」と思っていただけるようです。しかし、なかには予約が遅れることに執拗にクレームを言う方がいらっしゃいます。不思議ですが、その方々には、以下の特徴があります
- 経営者
- 退職した元エリートサラリーマン
- そもそも予約を取らない人
正直、初診の段階でこの人は、「いずれ予約遅れでクレームを付けそうな人」とわかるほどです。認知症専門医的には、前頭葉機能の低下を疑います。理屈が通らずに、すぐに怒る。まさに外来の予約の時間が少しでも遅れるとクレームを言う人たちです。
不思議と、待たされても穏やかな人は、待ち時間に読むための本を持たれています。待ち時間を、読書ができる貴重な時間に変換されている姿は素敵です。
4.医療はサービスではなく社会資本
私自身も、年に数回は患者として眼科に受診します。毎回2~3時間はかかりますが、高齢化時代にこれだけの患者さんは医療機関に殺到しているのです。皆が必死で働いています。クレームを言うどころか感謝の気持ちさえ湧いてきます。多くの人に理解してほしいことがあります。医療サービスは社会資本です。皆で分かち合って、大切に使いましょう。
5.まとめ
- 医療機関は、医師自体の数が少ないため予約枠に余裕を持つこともできず、状態悪化や急変の患者さんのためどうしても予約時間が遅れがちです。
- そんな事情も知らずに、待ち時間にクレームをつける人達は、一定の傾向があり、前頭葉機能の低下が疑われます。
- 医療サービスは社会資本です。皆で分かち合って、大切に使いましょう。