昔、外来では「週に1回は休肝日を作りましょう!」などと飲酒を減らす指導をしていたものです。しかし、最近では明らかに飲酒をする人が減ってきているので、そんな指導自体も減っています。統計上も、40歳台から50歳代の男性の飲酒の習慣は50%程度ですが、20歳代男性では20%を切っています。今の時代、飲酒の習慣がある人の方が特殊であると考えた方が良いようです。
今回、厚生労働省は、飲酒に伴うリスクに関する知識の普及の推進を図るため、「健康に配慮した飲酒に関するガイドライン」を作成しました。内容を一部ご紹介します。
目次
1.飲酒は純アルコール量で把握
飲酒量よりも純アルコール量で認識することが重要であることが示されました。
純アルコール量は以下の計算式によります。
純アルコール量(g)=飲酒量(㎖)×アルコール度数÷100×0.8
主な純アルコール量20gの目安は以下のようになります。
- ビール(5%) 500㎖
- チューハイ(7%) 350㎖
- ワイン(12%) 200㎖
- 日本酒(15%) 180㎖=1合
- 焼酎(25%) 100㎖
- ウイスキー(43%) 60㎖
2.飲酒によって高まる疾患
疾患によって発症リスクが高まります。具体的には、
- 高血圧:少量でもリスクが高まる
- 脳梗塞:男性40グラム、女性11グラムで発症の恐れが上がる。
- 大腸がん:1日当たり20g以上でリスクが上昇
- 女性の乳がんは14グラム、男性の前立腺がんは20グラムでリスクが上昇
- 男性は、少しでも飲酒すると胃がんや食道がんを発症しやすくなる
3.酒は百薬の長ではない
『酒は百薬の長』は中国古代の言葉で、適量の酒はどんな薬にも勝る効果があるという意味です。しかし最新の医学の研究では酒は百薬の長ではありません。適度な飲酒をしている人は、非飲酒者と中程度飲酒者の両群と比べて、若干死亡リスクが高かったものの、有意な差は見られませんでした。しかし、多量飲酒や大量飲酒をしている人では、有意な死亡リスクの上昇が見られました。つまり、適度な飲酒は「百薬の長」とは言えないが、過度の飲酒は確実に命を縮めると言えるのです。
4.アルコール代謝は身体に負担
最近、お酒が弱い人(=アルコールを分解する酵素を持っていない)はアルコールの悪影響が強いが、アルコールに強い(=アルコールを分解する酵素を持っている)はそれほど悪影響がないという風潮があります。しかし、私自身患者さんの活性酸素を測定するとアルコールの飲酒習慣がある方は、間違いなく活性酸素が高くなっています。活性酸素は、すべての疾患の90%の原因になっていることを考えると、アルコールは間違いないく身体に負担をかけているのです。
5.飲酒の習慣は止められるならやめてしまおう
今まで何となく習慣的にアルコールを摂取していた人は、一度止めてみるのは手ではないでしょうか?実際、コロナ禍で飲酒の機会が減ったことで、アルコールの飲酒習慣がなくなったかたもたくさんいらっしゃいます。今回の厚生労働省の指針でも、年をとるとアルコールの影響でふらついたり、転んだりするリスクも指摘されています。いつまで悪しき習慣にとらわれることなく、きっぱり止めてしまうことも恰好良いのではないでしょうか?
6.まとめ
- 厚生労働省は、「健康に配慮した飲酒に関するガイドライン」を作成しました。
- アルコールの飲酒習慣がある方は、間違いなく多くの疾患の原因となる活性酸素が高くなっています。
- 飲酒の習慣は止められるならやめてしまおう