いつもながら橘玲さんは、言いにくいことをはっきり言ってくれます。まさに一般社会では「言ってはいけないが、本当の話」が満載です。とくに「現代社会が、『自分についての噂を気にしつつ、他人についての噂を流す』というきわめて高度なコミュニケーション能力が必要とされる」には納得でした。
- 非常ベルが頻繁に鳴れば幸福度や満足度が下がるかもしれないが、大事なときに警報が鳴らずに子孫(遺伝子) を残せないよりずっとマシだ。残念ながら、進化の目的はあなたの幸福ではない
- 集団から排除されることはすなわち死を意味した。これが強い進化の淘汰圧になって、相手が何を考えているかを素早く察知したり(メンタライジング)、相手の気持ちを感じたりする(共感力) 向社会的な能力を発達させていった
- 脳の基本的な仕様は、「被害」を極端に過大評価し、「加害」を極端に過小評価するようになっている。被害の記憶はものすごく重要だが、加害の記憶にはなんの価値もない。これが人間関係から国と国との「歴史問題」まで、事態を紛糾させる原因
- わたしたちの祖先は、深刻なトレードオフに直面することになった。 ①目立ち過ぎて反感を買うと共同体から放逐されて死んでしまう。 ②目立たないと性愛のパートナーを獲得できず、子孫を残せない。 わたしたちはみな、なんらかのかたちでこの難問をクリアした者の子孫なのだ。 いったいどうやったのか。それは、「目立たずに目立つ(自分を有利にする)」作戦
- こうして、「自分についての噂を気にしつつ、他人についての噂を流す」というきわめて高度なコミュニケーション能力(コミュ力) が必要とされるようになった。「社会脳」仮説では、ヒトの知能が極端に発達したのは、集団内の権謀術数に適応するため
- ネットニュースでいちばんアクセスを集めるのは「芸能人と正義の話題」だという。メディアが「こんなことが許されるでしょうか」といつも騒いでいるのも、SNSで不道徳な者がさらし者にされるのも、現代社会にとって正義が最大の「娯楽(エンタテインメント)」だから
- ネットで人気があるもうひとつのコンテンツは、「最貧困」や「ホームレス」などの転落話だ。これは下方比較が脳にとっての報酬だからで、不運が重なって社会の最下層に落ちていくような話は、自分が恵まれていることを確認させてくれるから、
- ぎすぎすした世の中に煩わされず、他者に「不道徳」のレッテルを貼って安易に批判せず、イヤなことがあっても「そのうちいいこともあるさ」と楽天的に考える。すくなくとも研究では、これであなたの幸福度はずいぶん高くなる
- バカの問題は、自分がバカであることに気づいていないこと
- 自分の能力についての客観的な事実を提示されても、バカはその事実を正しく理解できないので(なぜならバカだから) 自分の評価を修正しないばかりか、ますます自分の能力に自信をもつようになる。まさに「バカにつける薬はない」
- よい選択の条件とはなにか? これにもちゃんと答えがあるが、あまり知られていないのは、大きな声ではいえないからだ。それをあえて簡潔にいうなら、「バカを排除する」
- ワンマン企業が成功する(可能性がある) のは、「独裁者」の意思決定によって「バカに引きずられる」効果を避けられるから
- ①日本人のおよそ3分の1は「日本語」が読めない。 ②日本人の3分の1以上が小学校3~4年生以下の数的思考力しかない。 ③パソコンを使った基本的な仕事ができる日本人は1割以下
- 日本では高い偏差値ばかりが注目されるが、人口のおよそ6人に1人は偏差値 40 以下だ。
- 税務申告書から生活保護の申請まで、説明を読んで役所の書類を正しく記入するためには、偏差値 60(MARCHや関関同立) 程度の能力が必要になる。そうなると、自力で申請できるのはせいぜい5人に1人
- この現実に気づかないのは、社会を動かしているのが高学歴のエリートで、自分のまわりにも同じような高学歴しかいないから
- バカと無知はちがう。バカは能力の問題だが、無知は問題解決に必要な知識を欠いていることだ。