【お薦め本の紹介】面白いし、ためになる『アルツ村』

【お薦め本の紹介】面白いし、ためになる『アルツ村』

小説としてもとても面白く一気読みしてしまいました。そのうえ、随所に認知症についての情報や知識がちりばめられていて、認知症専門医が読んでも納得の内容でした。娯楽と知識の両面でお薦めです。

  • 認知症は、一つの病気の名前というわけではない。脳のトラブルから引き起こされるさまざまな症状の集合体と言える。
  • 認知症で失われるのは、記憶だけではない。判断力や問題解決能力も衰える。
  • 「このままでは、都市部は行き場のない高齢者であふれる」 そんなふうに言う学者先生もいます。でも、これが都市行政の限界です
  • 東京は若者の町だとか、地方に比べて年寄りが少ないとか言いますよね。 あれ、真っ赤なうそです
  • 確かに、東京に暮らす高齢者の「比率」は高くありません。六十五歳以上の住民が占める率は二三パーセント程度で、沖縄県の次に低い全国四十六位です。 ただね、年寄りのボリュームは半端じゃない。都内に住んでいる高齢者は三百万人を突破しています。高齢化率が全国トップの秋田県でも、県内に住む高齢者は三十五万人程度
  • 東京で行き場のない高齢者や認知症の患者が田舎の施設で暮らすという構図は、もう以前からできあがっていた。 姥捨て山は、すでにあるんです。
  • もの忘れだけでなく、周辺症状もいろいろ出てきてましたんで。在宅でケアを続けるのは、もう限界に近づいていました。
  • つまり、目先の「作業」はこなせても、それぞれの仕事を順番に積み重ね、味噌汁という「ゴール」にたどり着くのが難しいのだ。
  • 脳血管性認知症は、情動の制御力が低下する傾向が強い。涙もろくなったり怒りっぽくなったりしている
  • 認知症の患者が大声を出したり、介護に抵抗を示したりする場合は、その患者が体に痛みを抱えていないかどうかを疑え
  • 介護をひと事だと思う人に、何も話す気はありません
  • 私はね、こっちに母親を呼び寄せて三年も介護をして、気が狂いそうになった。一人娘だからっていう理由だけで、こんな苦労しなきゃならないんですか?  最初の地獄は徘徊。
  • 娘に向かって、ヒトゴロシ、ヒトゴロシって。分かります? もう、壊れた母をどうすればいいのかと、途方に暮れましたよ。いっそのこと絞め殺してやろうかと思ったとき、泣けて泣けてしょうがなかった。
  • この国では親が子どもを捨てていたんです!そして、最後には子どもの方も親を捨てる。そうするしかなかった。デンデラ野も、農家の口減らしも、親を捨てる子も、アルツ村も、この国の表と裏を成す本当の姿なんです
  • 認知症患者の浮気妄想には、原因と誘因があるという。患者自身がパートナーに迷惑をかけているという「負い目」や、いつか見捨てられてしまうのではないかという「不安」が妄想につながり
  • 農村で暮らす高齢者は、たとえアルツハイマー病になっても、都市部の暮らしに比べて生活機能に支障が出にくいという研究です。ほら、村落の暮らしは、一日の行動パターンが決まっていることが多い
  • 認知症というのは、もともとあった知的能力が低下し、日常生活に支障を来す病気だ。高齢になるにしたがって増加し、二〇二五年には六十五歳以上の五人に一人、七百万人が認知症になるとも推計されている。
  • ある学会で「認知症を発症しないためには、どうすればいいのですか?」という質問に、「長生きしないことですよ」と答えた研究者がいたという逸話もあるくらいだ。
  • 認知症の症状を呈していないのに、PET検査でアミロイドベータの沈着を認めてしまう例が最大で三割程度ある。相当の「偽陽性」が出てしまうんです。逆に、確定した遺伝性アルツハイマー病の患者でも、画像検査ではアミロイドベータの蓄積を認めないケースも報告されています。
  • 久山町研究で特筆すべき点は、「追跡」の徹底ぶりにあります。調査は健康診断に始まり、剖検で終わります。
  • 「アメリカで脳バンクは、『Gift of hope』と呼ばれている。つまり、未来のための『希望の贈り物』であり、非常にポジティブな研究であると考えられている
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