医学部入試・補欠合格順位の非公表大学はやはり不正の温床ではないか

医学部入試・補欠合格順位の非公表大学はやはり不正の温床ではないか

皆さんすっかり忘れているかもしれませんが、2017年に「文部科学省の私立大学支援事業をめぐる汚職事件で、前科学技術・学術政策局長の佐野太容疑者(受託収賄容疑で逮捕)の息子を不正に合格させたとされる東京医科大学が、数年前まで毎年10人前後の受験生を不正に合格させていた疑いがあることが明らかになった」という事件がありました。

その際に、私はこのブログで、補欠合格の順位を公表していない私立大学の医学部は、不正の温床になるのでは?と指摘していました。案の定、2019年9月13日に昭和大学医学部の第三者委員会で、補欠合格時の女性への差別、言い換えれば不正が否定できないという報告がされました。今回の記事では、医学部の補欠合格の実態を取り上げた上で、すべての大学が補欠合格の順位を公表することを希望するということを伝えさせていただきます。

1.昭和大学医学部の報告

昭和大学医学部は以下のような調査結果を公表しました。

1-1.繰り上げ合格、男子56人に対し女子は0人

第三者委の報告書によると、繰り上げ合格者のうち比較的成績が低い受験生の性別を調査。18年入試の場合、総合順位80~169位から繰り上げ合格したのは男子47人、女子40人だったが、264位までを見ると、男子56人に対し女子は0人だった。13~17年入試でも同様の傾向がみられた。

1-2.第三者調査後は、男女ほぼ同数になった

第三者委の聞き取り調査後の、2019年の春の入試では、成績下位からの繰り上げ合格者は男女ほぼ同数だった。

1-3.偶然の結果と言い張っている

このような結果に対して、大学側は、「偶然の結果」と回答したようです。しかし、第三者委は「(18年までの入試で)大きな男女差が生ずる合理的理由は考えづらく、疑念が生ずることを否定できない」と結論付けています。補欠で明らかに女子が入学できないことについて、偶然の結果と言い切った大学には驚きです。

2.私立大医学部に実際入学するのは補欠合格者

一部の難関私立大学は別として、通常は国公立の医学部が上位にあり、その下に中堅以下の私立大学の医学部がランクされます。合格発表は、私立大学から始まり、その後に国公立の発表があります。

国公立大学を志望校とする学生も、滑り止めに私立大学を受けます。通常私立大学において、定員100名前後のところに、20倍以上の志願者が受験します。彼らは、学力も高いため、正規で合格します。しかし、本命の国公立が合格すれば私立大学の合格は辞退します。倍率20倍以上の私立に合格するような正規合格者がそのまま入学するケースは少ないのです。

そのため、私立大学は正規合格者が辞退した分を見込み、多くの数を補欠として合格させるのです。そして、実際に入学する多くの学生は補欠合格者であることが多いのです。

Kyoto University Japan
難関国立大の滑り止めとして私立大学に多くの受験生が殺到します。(写真は京都大学)

3.補欠合格の種類

補欠合格には、以下の大きく分けて2つの方式があります。


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3-1.補欠合格者の中での自分の順位が分かる学校

正規合格者の発表と同時に、補欠合格者が発表されます。このような学校では補欠合格者には、順位がわかるようになっています。正規合格者の欠員に応じて、順位に従って正規合格扱いに繰り上げられます。通常、大学のホームページに現在の補欠合格の繰り上げ状況が開示されているため、とても公正です。

3-2.補欠合格者の中の自分の順位がわからない学校

今回の昭和大学のがこの方式です。正規合格者の発表と同時に、補欠合格者が発表されます。しかし、補欠合格者には、そのなかでの順位がわかりません。自分が補欠合格の中で上位なのか、下位なのかもわかりません。補欠合格の中での繰り上げについては本当に公平であるのか疑念も持ち上がってきます。ここで、明らかな男女差別が行われたり、不正が行われても外部からは、まったく分からないのです。

4.各私立大医学部の補欠合格分類

現在、私立大学の補欠合格の順位の公表は以下のように分類されます(2018年現在)。補欠合格の順位を公表していない大学は、何らかの不正が行われていると考えられてもやむを得ないと思われます。

4-1.補欠合格の順位が公表されている大学

独協医科大学、国際医療福祉大学、杏林大学、東京慈恵会医科大学、東京女子医科大学、日本医科大学、聖マリアンナ医科大学、東海大学、愛知医科大学、藤田保健衛生大学、近畿大学、兵庫医科大学、久留米大学、福岡大学

4-2.補欠合格の順位が公表されていない大学

岩手医科大学、東北医科薬科大学、埼玉医科大学、慶応大学、順天堂大学、昭和大学、帝京大学、東京医科大学、東邦大学、日本大学、北里大学、金沢医科大学、大阪医科大学、関西医科大学、川崎医科大学

5.入学してからこそが勉強、だからこそ公平な入試を

今の時代、医学部に入れば簡単に、医師になれるわけではありません。補欠合格であろうが正規合格であろうが、能力は微差です。何よりも、医師になって患者さんのために働きたいという志が大事です。それがなければ、入学後に進級すらできず、医師にはなれないのです。

志さえあれば、年齢が高くても、多浪生であっても、女性であっても医師になるべきなのです。多様な人材が医師になることは、間違いなく患者さんのためにもなるのです。だからこそ、入試に不正があってはいけないのです。

Yushima Tenjin (Tenmangu) on Exam season
志のある人には、誰でもぜひ医師になってほしいものです

6.まとめ

  • 昭和大学医学部で、補欠合格の繰り上げで不正が公表されました。
  • 私立の医学部は、補欠合格の順位を公表している大学としていない大学に分かれます。
  • 公表していない大学は、何らかの不正が行われていると予想されます。
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