健康診断時にはデンタルドック(歯科検診)の義務付けを!

健康診断時にはデンタルドック(歯科検診)の義務付けを!

企業がスタッフに対して定期的に健康診断を行うことは法律的な義務です。しかし、多くの健康診断では、血液検査や胸部XP程度しか行っていないのではないでしょうか? 私はその検診に、デンタルドック(歯科検診)も含めるべきだと考えます。どれだけ、身体に気を使っていても、「歯」をなおざりにしていては意味がありません。

令和2年6月、ブレイングループでは、土岐内科クリニックの敷地内に、リーフ総合歯科さんの兄弟医院を開業してもらいます。そこで早速、当グループ全スタッフ180名の方に、デンタルドック(歯科検診)を受けてもらうことにしました。今回の記事では、医療法人グループの経営者であり、認定内科専門医の長谷川嘉哉が、スタッフの健康診断時にデンタルドック(歯科検診)を含めるべき理由をご紹介します。

1.健康診断は社員を守る会社側の義務、とは

そもそも健康診断は、労働安全衛生法第44条に実施義務が制定されている法律上の義務です。

1-1.形ばかりの義務となっている企業も

義務であってもその内容には厳密な規定はありません。そのため、企業によっては、「何でも良いから、いちばん安い健康診断をしてくれ」というケースも結構あります。そのような健診では社員のためになっているかどうか疑わしいと言えます。

1-2.小中学校では歯・口腔の健康状態の把握は当たり前

小中学校における健康診断健康診断においても、「健康状態をより的確にかつ総合的に評価するには、保健調査を行い、歯・口腔の健康状態を把握しておくことが望ましい。」とされています。ならば会社もスタッフのデンタルドック(歯科検診)を行うことは当たり前ではないでしょうか?

1-3.これからの時代は健康経営

これからの時代は、単に健康診断を行うだけでなく「健康経営」につなげる必要があります。本当にスタッフの健康に対して投資を行うことで、活力向上や生産性の向上につながり業績向上へつながることが期待されるのです。これまでの健康診断に加えて歯科検診も行うよう提言します。

Dentist and Child
子供の頃は強制的に歯科検診があったのに、なぜ大人にはないのでしょうか

2.従来の健康診断の項目とは

一般健康診断の、定期健康診断の項目としては、以下の11項目があります。

  • 既往歴や喫煙歴などの検査
  • 自覚症状及び他覚症状等の検査
  • 身長、視力、体重などの検査
  • 胸部エックス線の検査
  • 血圧測定
  • 尿検査
  • 貧血検査
  • 肝機能検査
  • 血中脂質検査
  • 血糖検査
  • 心電図検査

残念ながら、デンタルドック(歯科検診)は含まれていません。

3.デンタルドック(歯科検診)を導入すべき理由

小・中学校の検診でも歯科検診が入っています。国で義務付けられる前から、デンタルドック(歯科検診)を導入すべきです。

3-1.歯周病を予防する

歯周病は、人間の寿命を短くする、すべての疾患の原因となり得るのです。

歯周病は、認知症、脳血管障害、虚血性心疾患、糖尿病の発症にまで関わっていることが明らかになっています。さらに、大腸がん、食道がん、口腔がん、咽頭がん、喉頭がん、食道がん、膵臓がん、胃がん、血液のがんに対して危険因子になり得るという論文が発表されています。ですから歯周病を未然に防ぐ歯科検診はとても重要です。義務としても行うべきです。

3-2.口腔内の環境によって、歯を残す

人生の最後まで歯を残すことはとても大事です。

歯周病を放置することで、歯が抜けてしまいます。その結果、必要なものでなく、食べられるものを食べるようになります。結果として、栄養が偏り、全身状態が悪化します。そもそも、人間は一噛みで3.5㎖の血液が脳に流れ込みます。歯を失うことは、脳への血流が低下して、認知症の発症にまで影響を及ぼすのです。


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3-3.歯科受診へのハードルが高い人も義務として受けさせることができる

紹介したように、歯の定期検診はとても重要です。しかし、多くのひとが「歯が全身にまで影響を及ぼす」ことを知りません。仮に知っても、なかなか歯科受診をしてくれません。そこで、企業が強制的にデンタルドック(歯科検診)をすることに、意味があるのです。

4.デンタルドック(歯科検診)で何を診てもらうか

デンタルドック(歯科検診)では何をチェックしてもらえれば良いのでしょうか? ブレイングループでお願いしている内容をご紹介します。

4-1.虫歯・歯周病チェック

まずは、虫歯や歯周病をチェックしてもらいます。虫歯も歯周病も痛みが出た時は重症です。また、医科のように、自然治癒することも絶対にありません。

4-2.パノラマレントゲン撮影

医師の立場から言うと、歯科でも積極的にレントゲン撮影をしても良いのでは?と感じることがあります。パノラマレントゲン撮影では、「親知らずの治療の有無の診断」、「埋伏過剰歯や埋伏歯の確認」、「全顎的な歯周病の進行度合いの確認」などが分かります。特に、神経を抜いた処置(=抜髄)をしている歯を持っている人は、痛みで症状が気づきにくいために定期的な撮影をお願いしたいものです。

4-3.定期的な歯科受診を習慣化してもらうための提案

以上の結果から、今後10年で起こり得るリスクを説明いただきます。その後、スタッフには治療をしてもらい、定期的な歯科受診を習慣化してもらうことを会社の義務としていきたいと思います。

5.デンタルドック(歯科検診)を実施してみて

ブレイングループで、デンタルドック(歯科検診)を実施してみると以下のようなことが分かりました。

5-1.デンタルドック(歯科検診)でも抵抗感

やはり、歯科医にかかること自体に抵抗感を持つ方が多いようです。単に、「デンタルドック(歯科検診)」といっても、歯科のチェアーに乗ること自体に抵抗を示すスタッフが結構います。残念ながら、説得してもデンタルドック(歯科検診)を受けない人もいました。

5-2.歯科の定期受診している人が少ない

デンタルドック(歯科検診)を勧めると、「歯医者さんには定期的にかかってるから」という言い訳をする人がいました。しかし、詳細を聞くと、「痛くなったら受診している」とのこと。3か月に1回の定期受診をしている人は、2割程度しかいませんでした。

5-3.定期的にかかっていても問題あるケースも

定期的にかかっている人の中にも、問題があるケースがありました。パノラマレントゲン撮影で、神経を抜いた歯の根元に膿が溜まっていたケースがありました。痛みがなかったため、放置していたら炎症がさらに拡大してしまう可能性もあったのです。

6.まとめ

  • 小中学校と同様に、職場の検診でもデンタルドック(歯科検診)を導入することは経営者の責任です。
  • デンタルドック(歯科検診)を導入することは、健康経営につながり、業績向上も期待できます。
  • デンタルドック(歯科検診)の導入をきっかけに多くの方が、定期的な歯科受診の習慣を身に着けることが、多くの内科疾患にも好影響を及ぼします。
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