地方暮らしこそ歩く工夫を――健康づくりは靴を替えることから

地方暮らしこそ歩く工夫を――健康づくりは靴を替えることから

「自然が豊かな地方に住んでいる人のほうが、都会の人より健康的に暮らしている」そんなイメージを持つ方も多いのではないでしょうか。しかし、毎日の「歩く量」に注目すると、違った姿が見えてきます。都市と地方では、1日の平均歩数に最大約3,700歩の差があるそうです。歩く時間にすると約30分。毎日の積み重ねとして考えると、見過ごせない差です。

私が診療する岐阜県土岐市でも、車は暮らしに欠かせません。通勤も買い物も車で済ませられる便利さがあります。その一方で、意識しなければ歩く機会が少なくなる生活でもあります。では、忙しい毎日の中で、どうすれば無理なく歩けるのでしょうか。この記事には、身近なところから始められるヒントがありました。

目次

1.地方で歩かないのは、意志の弱さだけではない

東京大学の研究グループは、スマートフォンアプリを利用する20〜64歳の約150万人について、951市区町村の歩数を分析しました。調査対象で平均歩数が最も少なかったのは、宮崎県小林市の4,026歩。最も多かった東京都豊島区は7,750歩でした。ただし、アプリ利用者のデータですから、各地域の住民全員をそのまま代表する数字ではない点には留意が必要です。

それでも、生活環境が歩く量に関係するという結果は、地方で暮らす私たちにも納得できるものです。都市では、駅まで歩き、乗り換えで移動し、駅から職場まで歩きます。本人が運動をしているつもりでなくても、通勤だけで歩数が積み上がります。一方、地方では玄関から車に乗り、職場や店の駐車場まで移動できます。歩道が少ない、目的地が遠いといった事情もあります。

つまり、歩数の違いを「健康への意識が低いから」と片づけることはできません。生活の仕組みそのものが違うのです。だからこそ地方では、暮らしの中に歩く機会を少しずつ組み込む工夫が必要になります。

2.運動の時間をつくる前に、歩く機会を増やす

「健康のために運動しましょう」と言われても、仕事や家事で忙しい人には、まとまった時間を確保することが難しいものです。記事では、厚生労働省の手引きとして、歩行と同程度以上の身体活動を成人は1日60分以上、高齢者は40分以上行うことが紹介されています。歩数に換算すると、それぞれ約8,000歩、約6,000歩です。

ただ、この数字を見て「そんなに歩けない」と諦めてしまってはもったいありません。体調や体力には個人差があります。まずは、自分が普段どれくらい歩いているかを知り、増やせそうな場面を探してみましょう。

買い物では、安全な範囲で入口から少し離れた場所に車を止める。昼休みに短い散歩をする。近所の用事は、天候や道路の状況がよければ歩いて済ませる。こうした小さな行動でも、毎日重ねれば歩く機会が増えます。地方で車を手放す必要はありません。車の便利さを使いながら、自分の足を使う場面も残しておく。そのくらいの考え方のほうが続けやすいでしょう。

また、歩数を増やすために無理をして転倒したり、膝や腰の痛みを悪化させたりしては困ります。数字を達成することより、自分に合った活動を続けることを大切にしてください。

3.スニーカーは、歩く気持ちを後押しする

そこで注目したいのが、歩きやすい靴で通勤する「スニーカービズ」です。足が痛くなる靴や、歩くと疲れる靴では、少しの距離でも移動がおっくうになります。反対に、歩きやすい靴なら「ちょっと歩こうかな」と思いやすくなるでしょう。


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記事によると、福井県ではスニーカービズを実施した日に、歩数が平均1,273歩増え、歩幅も平均5センチ伸びたとされています。誰もが同じ効果を得られるとは限りませんが、靴を替えるという身近な工夫が、行動を変えるきっかけになることを示す数字です。

香川県や新潟県も取り組みを始め、仕事着にスニーカーを合わせる提案などを進めています。興味深いのは、本人の努力だけに頼っていない点です。職場が歩きやすい靴を認めることで、従業員も取り入れやすくなります。健康づくりには、こうした周囲の後押しも大切です。

もちろん、スニーカーなら何でもよいわけではありません。足に合い、かかとが安定し、滑りにくい靴を選びたいものです。高価な靴を買うことより、気持ちよく歩ける一足を見つけることが先でしょう。

おわりに

地方の暮らしには、車で移動できる便利さがあります。しかし、その便利さの中で、歩く機会が少なくなっていることにも目を向けたいと思います。

健康のために、いきなり生活を大きく変える必要はありません。歩きやすい靴を履く。昼休みに少し外へ出る。近所の用事を一つ歩いて済ませる。そんな小さな工夫から始められます。大切なのは、頑張った一日をつくることより、続けられる毎日をつくることです。

まずは今日、足元を見直してみませんか。お気に入りの歩きやすい一足が、これからの健康を支える第一歩になるかもしれません。

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