先回、YKKのファスナーのクオリティの高さを御紹介しました。
実はYKKは凄い企業なのです。
ファスナーは、ズボンやスカートなどの衣料品はもちろん、鞄や靴、漁網や防虫ネットといった産業用まで、あらゆる分野で使われています。
そのファスナー業界にあって、YKKは、国内市場の95%、世界でも45%のシェアを誇るのです。
世界2位、3位のシェアはわずか7~8%ずつなので、今やほとんどのファスナーがYKKといっても過言ではないのです。
YKKの海外進出は、海外に進出する企業などほとんどなかった1959(昭和34)年のインド工場建設から始まりました。
いわゆる日本企業の“海外進出ラッシュ”は、1985(昭和60)年の「プラザ合意」後ですが、この時点でYKKは既に世界40カ国で生産活動を行っていたというから驚きです。
YKKが極めて早い時期から海外に出た理由としては、各国の関税障壁を乗り越えなければならなかったことと、ファスナーが消費即応型の商品であることからです。
縫製品が多品種少量生産でライフサイクルが短いため、ファスナーも現地のニーズに即応した動きが求められるのです。
この「需要がある場所での生産」に加え、YKKの生産戦略として特筆すべきことは、ファスナーの生産機械をすべて内製化しており、その機械はどこにも販売されていないということです。
アメリカでも中国でも、世界60カ国以上にあるYKKの工場には同じ機械が配備されているそうです。
24時間無人化され、ボタン一つで制御できる高性能マシンを配備した工場は、他社から見れば、ブラックボックスのようなものです。
逆にいえば、YKKは工場そのものをブラックボックス化し、独自の技術や製品のクオリティを守ったからこそ、世界のYKKになったともいえます。
リーバイ・ストラウスをはじめ、ナイキやアディダスといった一流ブランドに選ばれたYKKファスナー。
一見、何のヘンテツもないように思えるファスナーには、実に1200件以上の要素技術が詰まっているという。
ファスナーは特許の固まりなのです。
「たかがファスナー、されどファスナー」と話す広報担当の言葉に込められた意味は深いものがあります。
さらに、「YKK株式会社は株式を一切上場していない。
今後も上場の予定はない」と公式サイトにて公表しています。
社員による自社株の購入がYKK恒友会(従業員持株会)を通じて認められているそうです。
この点には、賛否が分かれると思いますが、少なくとも経営陣の意志が感じられます。
そして、自社株を購入する社員のためにもなると思われます。
いずれにせよ、世界に通用するクオリティの高いファスナーを提供していただけるYKKさんに感謝です。