先回、相続対策のすべての起点は、
“認知機能障害がなく、契約能力があることの証明”とお伝えしました。
しかし、そこが明確でないとどうなるのでしょうか?
私は遺言無効裁判の鑑定を依頼されたことがあります。
故人の遺言書に対して二人の息子さんが
“有効である”
“遺言作成時には意志能力はなく無効”と
意見が対立したのです。
争点は、遺言作成時の意志能力です。
“数か月にわたって高カロリー輸液のみの管理、
遺言作成の前日にも、夜間不穏に対して抗精神病薬の注射が行われている点”から
自分は意志無能力と判断しました。
内科医としては常識的な判断をしたつもりなのですが
一方で相手方の鑑定は意志能力はあると主張します。
しかし、いずれにせよ過去の話の議論でしかありません。
結果的には結論は出ずに
双方で落としどころを見つけ
示談で終了しました。
ただし、一つ言えることは、
遺族の間で、裁判が起こった場合、
関係の修復は不可能ということです。
自分は、
“最高の先祖の供養は残された家族が仲良く過ごすことである”と
教えられました。
そのためにも
意志能力があるうちに
適切な遺言を作成して
遺族の争いを避けるべきです。
何しろ、認知症になってからは
遺言は作成することはできないのですから・・