結構、残酷な本です。個人的には、「体重の遺伝率は90数%」がショックでした。だから太りやすいのか・・。そしてその遺伝が子供にも伝わると思うと申し訳なく思います。しかし、この本の趣旨は、そんな不平等な現実を生き抜くための知恵がちりばめられているのです。多くの方が知っておくと、他人に無理な努力を強いらなくなると思います。
- 2021年に「親ガチャ」が新語・流行語大賞のトップ 10 に入りましたが、 行動遺伝学者としては、「何をいまさら」と、これを冷ややかに眺めていました。人生すべてガチャであることなど、行動遺伝学的には当たり前の、生物学的必然
- 世界は遺伝ガチャと環境ガチャでほとんどが説明できてしまう不平等なものですが、世界の誰もがガチャのもとで不平等であるという意味で平等
- 遺伝が関わっていない才能はありません
- 耳垢タイプ(ネバネバな粘性かカサカサな乾性か)や血友病、赤緑色覚異常など単一の遺伝子によって決まる表現型もありますが、ほとんどの表現型は多数の遺伝子が関わる「ポリジーン」
- 指紋のパターンに関しては、 90 パーセント以上が遺伝
- 身長や体重についても、遺伝率は90数パーセント
- 神経質さや外向性、勤勉性、新奇性といったパーソナリティについては、遺伝率は50パーセント程度。 統合失調症、自閉症、ADHDに関しては、80 パーセント程度が遺伝です。アルコール、喫煙といった物質依存についての遺伝率は50 パーセント強。反社会的な問題行動に関しては、60パーセント程度の遺伝率
- 知能については50~60パーセントの遺伝率です。身体だけでなく、知能や学力、パーソナリティといった能力面、心理面も含めて、ほとんどの形質は30~70パーセントの遺伝率
- 言い換えるなら、遺伝率が高い形質ほど、変化させるのが大変ということになる
- 青年期における双生児のIQについて調べた私たちの研究結果で、一卵性双生児の相関係数は0・77、二卵性双生児の相関係数は0・41 となっている
- 青年期におけるIQの個人差は、遺伝72パーセント、共有環境5パーセント、非共有環境 23 パーセントで説明できる
- 本人がやりたいと感じるのは、すでにれっきとした才能の発露
- 音楽的な才能だとか大上段に構えなくても、何かを好むということ自体がすでに「その人らしさ」の表れであり、能力の萌芽
- その人が自分で作る環境、自ずと呼び寄せてしまう環境には、その人の遺伝的素質が多かれ少なかれ反映されるので、環境は純粋に環境の影響とは言えないというのが、環境に関する行動遺伝学の一般的な結論
- 理数系科目の得意不得意に関して性差を説明する生物学的メカニズムは見つかっていません。むしろ逆に、男性の学業成績不振が世界的に広がっていることの方が大きな問題でしょう。
- やりぬく力の遺伝率は37パーセントと普通のパーソナリティの遺伝率と同程度
- これまでの研究で、 子どもの知能や学力に効果がありそうな要因を2つ挙げることができます。それは「静かで落ち着いた雰囲気の中で、きちんとした生活をさせること」と「本の読み聞かせをすること」
- 興味を持ったことを学んでいく中で、社会における自分の役割を見出す。同時に、他者の持つ素質を見出し、学んだことを伝えていく───。 それこそが、はるか未来でもAIにはできない、人間の役割ではないでしょうか