慢性腎不全の患者さんは、国内に約1330万人いるとされています。これだけの患者さんがいるのに、腎臓の保護効果が認められている薬は、ACE阻害薬とアンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬の2種類しかありませんでした。
そんな中、糖尿病の治療薬の一つ、SGLT2阻害薬が、糖尿病の有無を問わず慢性腎不全患者さんの予後を改善することが報告されました。その結果、厚生労働省の部会は2021年7月28日、SGLT2阻害薬のひとつ「フォシーガ」について、慢性腎臓病への使用を了承しました。慢性腎臓病のための薬は国内で初めてとなります。但し、人工透析中や末期腎不全は除かれます。
特筆すべき点は、糖尿病のある・なしに関わらずSGLT2阻害薬が腎機能保護効果を発揮する点です。超高齢化に伴い、慢性腎不全患者さんは、私の外来でも急増していますので朗報です。
なおSGLT2阻害薬は、近位尿細管でのグルコース再吸収が減り、その分だけ尿糖の排泄が増えます。その結果、高血糖が改善されます。簡単に言えば、血中の糖を尿中に排泄することで血糖値を下げるのです。そのため、使用時には脱水に注意して水分補給が必須です。また尿に糖分が含まれるため細菌が繁殖しやすくなります。結果、尿路感染症・性器感染症で陰部のかゆみ、ただれ、おしっこをした時の痛み、残尿感などにも注意が必要です。
しかし副作用以上に、SGLT阻害薬は、今回の慢性腎不全だけでなく、慢性心不全にも効果があることが分かっています。副作用に注意して使用すれば、糖尿病患者さんでなく、多くの患者さんに有効であることが予想されます。