先日、話題になっているSpaceXのIPO(新規株式公開)について、私は娘たちにこんな話をしました。「せっかくだから申し込んでみないか?」SpaceXは世界中が注目する企業です。イーロン・マスク氏が率い、宇宙開発や通信事業で大きな可能性を秘めています。もし将来さらに成長すれば、大きな利益を生むかもしれません。
私自身も投資家として興味を持っていますし、夫婦で申し込みもしました。そこで、30代の娘たち3人にも声をかけてみました。すると返ってきた答えは、予想外にしっかりしたものでした。
「そんなギャンブルみたいな投資はしない」
「私は毎月の積立投資を続ける」
「長期で増やせればそれで十分」
その言葉を聞いて、私は少し驚き、そして少しうれしくなりました。
目次
第1章 親はつい“一発逆転”を勧めたくなる
若い頃の私は投資というと個別株が中心でした。どの会社が伸びるか。どの銘柄が化けるか。そうしたことを考えるのが楽しかったのです。IPOもその一つです。当たれば大きい。しかし外れれば利益はありませんし、上場後に株価が下落することもあります。
それでも親というものは不思議なもので、自分が面白いと思うものを子どもにも勧めたくなります。「もしかしたら大きく増えるかもしれないぞ」そんな気持ちがどこかにあったのだと思います。
第2章 娘たちの返事に学んだこと
ところが娘たちの反応は極めて冷静でした。
「積立投資で十分」
「インデックスを長く持つ方が安心」
「将来のことを考えると、その方が合理的」
私は思わず笑ってしまいました。誰に似たのだろうと思ったのですが、よく考えると、私自身がずっと言い続けてきたことだったのです。多くの人は刺激を求めます。しかし実際に資産を築く人の多くは、毎月同じ額を積み立て、暴落しても売らず、何十年も続ける人たちです。娘たちはまさにその考え方を選んでいました。
第3章 本当に伝えたかったのは投資ではなく考え方
私は娘たちに投資の技術を教えたかったわけではありません。本当に伝えたかったのは「考え方」だったのです。
長谷川家では、娘たちが学生の頃から毎月家族会議を続けています。お金の使い方、貯蓄、投資、保険、相続、働く意味などをテーマに話し合い、先日で194回目を迎えました。特別なことを教えているわけではありません。ただ、お金について家族で話し合う習慣を大切にしてきました。
世の中には魅力的な話がたくさんあります。必ず儲かる、今だけ、限定募集――そうした話はいつの時代も存在します。しかし大切なのは「それは本当に自分に必要なのか」と考えることです。今回の娘たちは「自分の投資方針と違う」という理由で断りました。誰かが勧めたからではなく、自分の頭で考えて判断したのです。
194回続けてきた家族会議の中で伝えてきた価値観が、娘たちの中にしっかり根付いていたことです。自分で考え、自分で決める。その姿勢こそが、親として本当に残したかったものだったのだと思います。
おわりに
子育てをしていると、本当に大切なのは、自分で考える力、流されない力、長い目で物事を見る力なのだと感じます。今回、娘たちはSpaceXのIPOを選びませんでした。投資として正しかったかどうかは10年後にならなければ分かりません。
それでも私は、娘たちの判断を誇らしく思いました。親が子どもに残せる最大の財産は、お金ではなく考え方なのかもしれません。そして今回、その考え方が少しは伝わっていたのだと感じることができました。

認知症専門医として毎月1,000人の患者さんを外来診療する長谷川嘉哉。長年の経験と知識、最新の研究結果を元にした「認知症予防」のレポートPDFを無料で差し上げています。