介護施設選びの重要なポイント「一人夜勤施設」を避ける方法とは

介護施設選びの重要なポイント「一人夜勤施設」を避ける方法とは

先日、有料老人ホームで働く男性介護士が、利用者さんに夜勤中の排せつ介助の際に言うことを聞いてもらえず、かっとなりトイレで首を絞めた事件がありました。その男性介護者は、常日頃から「1人での夜勤がつらい」と訴えていたようです。私が協力医をしている施設でも、「これだけの数の要介護者さんを夜勤帯一人で看られるのか?」と疑問を持つ施設があります。今回のような殺人とまでいかなくても、一人夜勤にはデメリットがたくさんあります。

皆さんの大事なご家族を介護施設に入所してもらう際には、夜勤帯の人数についても調べる必要があります。今回の記事では、一人夜勤施設を避ける方法を、ケアマネ資格をもつ脳神経内科専門医の長谷川嘉哉がご紹介します。

1.有料老人ホームでの入所者殺害事件とは

今回の事件の概要は以下です。

山梨県警は2021年8月6日、同県南アルプス市の有料老人ホームで、入所していた女性を殺害したとして殺人の疑いで、同県市川三郷町の介護士丹沢一貴容疑者(42)を逮捕した。丹沢容疑者は老人ホームで勤務していた。県警によると、「首を絞めた」と話しているが、殺意についてはあいまいな供述をしている。事件前、容疑者は、「1人での夜勤がつらい」と周囲にもらしていた。

2.そもそも夜勤とは?

そもそも、介護施設における夜勤とは以下のようなものです。

2-1.長時間に及ぶ

多くの介護施設の夜勤は、2交代制です。通常の8時から17時までの勤務を「日勤」、16時から翌10時までの「夜勤」に分かれます。もちろん、開始時間や終了時間には、施設によって違いはありますが、いずれにせよ、拘束時間が18時間前後と長時間に及びます。

2-2.入居者が多くても、一人夜勤の施設がある

介護施設と言っても、種類があります。夜間帯でも複数人の夜勤者がいる施設もあれば、一人しか夜勤者がいない施設もあります。入所者さんが多ければ、複数人の夜勤者が必ずいるわけではありません。私が協力医をしている入居施設の中で最高は、入居者72人に一人の夜勤者です。

2-3.医師である自分でも不安

72人に一人しかいない入居施設は、入居者全員が介護認定を受けている方です。一人として、健康な方はいないのです。正直、医師である私でも、一人夜勤には不安を覚えるほどです。ならば、一般の介護職の方の不安・ストレスは相当であると思われます。

3.一人夜勤のデメリット

一人夜勤のデメリットは以下のようなものがあります。

3-1.入居さんに目が行き届かない

当たり前ですが、夜勤者が少なければ入居者さんの観察・対応する時間が取れません。一人で72人の夜勤となると、一人3分でも全員の見守りに3時間以上かかってしまいます。


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3-2.緊急時に対応できない

高齢者が多数入所して入れば、通常お元気でも急変することがあります。そうなると、一人しかいない夜勤者がその場で対応するしかありません。私の経験でも、急変で呼ばれたものの、夜勤者が一人しかいないため、玄関を開けてもらえず、インターホーンを鳴らし続けたこともあります。

3-3.夜勤者自身のストレス

十分な観察や対応する時間もなく、その上、いつ入居者さんが急変するかもわからない。そんな時でも、だれも助けてくれる人がいない。一人夜勤は、夜勤者自身にも相当のストレスになるのです。

4.一人夜勤の可能性が高い施設とは

 法律的に、一人夜勤は認められているのでしょうか? 介護保険法では、「一人でも要介護者である利用者がいる場合は、常に介護職員が一人以上確保されていることが必要である」と書かれています。言い換えれば、夜間帯でも最低一人の介護職員がいればよいと解釈できてしまうのです。また「入居者の実態に即し、夜間の介護、緊急時に対応できる数の職員を配置すること」とも、記載されていますが、人数までは明記されていないので、一人でも許されてしまうのです。実態としては、以下の施設は、一人夜勤である可能性が高い施設ですので、入居においては確認されることをお勧めします。

  • 介護付き有料老人ホーム
  • サービス付き高齢者住宅
  • 1ユニットしかないグループホーム

5.一人夜勤施設を避けるには

大事なご家族を、一人夜勤施設に入所させたくない場合は、以下の施設を選択すれば、複数夜勤であり、一人夜勤である可能性は低くなります。入居に当たっては、必ず確認されることをお勧めします。

  • 特別養護老人ホーム
  • 老人保健施設
  • 介護付き有料老人ホーム
  • 2ユニット以上のグループホーム

6.一人夜勤施設に入居しても、複数人夜勤施設の空きを待つ

複数人夜勤施設を見ると、どれも人気があって、すぐには入居できないことがわかります。そのため、一日でも早く入居させたい場合は、一人夜勤施設に入居することになってしまいます。多くのご家族は、入居するといったん安心してしまうことが多いですが、もうひと踏ん張りして、複数人夜勤施設も申し込んでおきましょう。そうすると、しばらくすると空きが出るものです。

そのうえ、「複数人夜勤施設の方が、介護力は手厚いのに、一人夜勤施設に比べ、費用負担が安いことが多いのですから、一石二鳥です。

7.まとめ

  • 入居施設には、一人夜勤施設と複数人夜勤施設があります。
  • 一人夜勤には、デメリットが多く、夜勤者自身のストレスも相当のものです。
  • 複数人夜勤施設の方が、介護力は手厚いのに、一人夜勤施設に比べ、費用負担が安いことが多いのです。
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