【お薦め本の紹介】改めて感謝です。『病理医が明かす 死因のホント』

【お薦め本の紹介】改めて感謝です。『病理医が明かす 死因のホント』

病理の先生のお仕事は、決して目立つものではありませんが、なくてはならないものです。そんな病理の専門医である榎木英介さんの「病理医が明かす 死因のホント 」は、医師である自分が読んでも、病理の先生はここまでやってくれているんだと、改めて感謝です。読み物としても、とても読みやすく、ためになるお話しです。お薦めです。

  • 日本では法医解剖の比率は低く、犯罪者が野放しにされている。
  • 解剖率が日本の 10 倍以上あるオーストリアの調査では、病死の1%は事件による死だという。
  • 私自身は老衰の経過の最終段階として肺炎を起こしたということであれば、主な死因は『老衰』でよいのかなと考えています。
  • 「死の病院化」は現代社会の問題である。積極的に病気の治療を行わず、可能なら自宅で最期を迎えることは、過去への回帰のようにみえる。肉親の死すら見ることができなくなり、死を遠いものに感じてしまう現代人にとって、死の原点回帰は、死を身近に感じるという意味で望ましいことだと思う。
  • 1950年。日本人の平均寿命は男性 58 歳、女性 62 歳であった。
  • 「致死性不整脈の疑い」、これは解剖したけれど、明らかな原因が分らなかった時に、暫定診断としてよく使う診断名である。
  • 近年、病理解剖の数が激減している。日本病理学会によれば、1985年に4万247件の病理解剖が行われていたが、2017年には1万1809体にまで減少した。同年の日本人の死者は134万397人で、全死者数に対する病理解剖数は0・9%に過ぎない。
  • 普通の病院では、病理解剖は年間数体から数十体程度しか行わない。さらに、亡くなった患者には保険が利かず、1回 25万円程度と言われる病理解剖の費用は、病院が自費で捻出せざるを得ない。
  • 残念ながら現在、病理医は全国に2000人程度しかいない。 30 万人程度いる医師の中でもマイナーな部類に入る。
  • 病理診断のデジタル化の流れは止まらない。将来的にはAIが病理診断を担う時代も迫っている。
  • 放射線科ではすでにインドが先進国の画像診断を請け負っている。
  • 「がん悪液質」を克服できれば、がんの多くは天寿がんになる。
  • 死に方にはいくつかのパターンがある。徐々に弱っていき、最後に訪れる老衰のような死。健康だったのにいきなり生が断ち切られる血管の死。そして、徐々に弱って最後にストンと落ちるようながんの死。
  • ひらがなの「がん」は、悪性上皮性腫瘍である「癌」と、悪性非上皮性腫瘍である「肉腫」を合わせたものだ。乳がんの多くは悪性上皮性腫瘍の「癌」だ。よく「ガン」とカタカナで書く人がいるが、医学用語ではない。医師が「ガン」と書いている場合は、ちょっとイラッとくる。
  • 厚生労働省の研究班の調査では、溺死を含め、年間1万9000人が入浴中に亡くなっている。これは交通事故死( 15 年で4117人)の4倍以上にも達する。
  • 亡くなった患者の病理解剖をすると現われる異常なほどの血栓は、通常の風邪をこじらせた肺炎や敗血症ではめったに見られない。「新型コロナはただの風邪」などという机上の空論は、一枚の病理組織標本を見れば間違っていると分かる。
  • 交通事故死より多い転倒死
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