高齢者が突然ろれつが回らない・・その原因・発見方法を専門医が解説

高齢者が突然ろれつが回らない・・その原因・発見方法を専門医が解説

高齢者の方が、ろれつが回らなくなる。そうなると、介護者としてはとても不安になります。何か病気なのか? すぐに受診した方が良いのか? 何科に受診すればよいのか? 実は、「ろれつが回らない」を診断すること自体が難しいですし、その原因も多様です。そこで今回の記事では、脳神経内科専門医の長谷川嘉哉が、ろれつが回らないの原因・発見方法を解説します。

1.ろれつとは?

そもそも、高齢者がしゃべり方がおかしかったりすると「ろれつが回らない」と表現します。ろれつを漢字で書くと、「呂律」であり、浄瑠璃などでの「言葉の調子」を意味するようです。

医学的には、構語障害といったり構音障害と言いますが同じものです。脳からしゃべるための指令が出て、発声発語器官(唇、顎、舌、鼻からのど、気管・気管支から肺までつながる声を出すための器官)に至るどこかに障害がある場合に起こります。

なお、脳の言語中枢が原因で、言葉が出なかったりうまくしゃべられない状態は、「失語」といって別の病態となります。

2.ろれつが回っているか否かの診断方法は?

高齢者が、「何かいつもとしゃべり方がおかしい」と思っても、診断は難しいものです。そんな時、脳神経内科専門医は、言葉の発音を以下の3つに分けることで診断をします。参考になさってください。

2-1.ガ行

「がぎぐげご」を発声してもらってください。やってみるとわかると思いますが、発声に際して、喉の奥が使っていることがわかります。何らかの病気で喉の奥に障害が出ると、明らかに「がぎぐげご」がうまく発せられなくなります。

2-2.ラ行

「らりるれろ」を発声してもらってください。やってみるとわかると思いますが、発声に際して、舌を使っていることがわかります。何らかの病気で舌の動きに障害が出ると、明らかに「らりるれろ」がうまく発せられなくなります。

2-3.パ行・・口唇

「ぱぴぷぺぽ」を発声してもらってください。やってみるとわかると思いますが、発声に際して、口唇を主に使っていることがわかります。何らかの病気で口唇の動きに障害が出ると、明らかに「ぱぴぷぺぽ」がうまく発せられなくなります。

3.考えられる疾患

ガ行、ラ行、パ行の発音をしてろれつ障害が伴った場合は以下を疑います。

3-1.脳血管障害

もっとも頻度が多いのは脳梗塞や脳出血といった脳血管障害です。病巣が大きい場合は、片麻痺や意識障害を伴いますが、病変が小さい場合は、ろれつ障害だけのこともあります。この場合は、頭部CTだけでなく頭部のMRIも必要になります。また、病変が小脳の場合は、めまいとろれつ障害だけで運動障害を認めないことが多いので見逃さないように注意が必要です。なお、小脳梗塞については以下の記事も参考になさってください。


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3-2.脊髄小脳変性症

徐々に、時間をかけてろれつが回らなくなってきたときは、脊髄小脳変性症を疑います。「暗い所で転倒した」や「手をつかずに顔から転んだ」といった症状をともなう場合には疑います。半年~1年前から明らかに言葉が聞き取れなくなった場合にはこの疾患を疑います。なお、脊髄小脳変性症については以下の記事も参考になさってください。

3-3.口腔内の問題

単に入歯が合わなくなったことで、ろれつが回らないこともあります。特に、体重減少を伴うと入歯も合わなくなることもあります。ときに、口腔内の舌癌などが原因である可能性があります。

4.緊急に受診するか否か?

ろれつ障害で緊急受診するか否かは以下で判断します。

4-1.突然発症であるか?

昨日までは問題がなく、今朝から急に呂律が回らない場合は、脳血管障害を強く疑います。逆に、何時とはなしに、徐々に進行する場合は、緊急性がないことが多いので様子観察で大丈夫です。

4-2.ろれつ障害以外の症状の有無

ろれつ障害以外の症状があれば、救急受診が必要です。具体的には、顔や腕や足に麻痺がある場合。めまい症状が強く歩行が不安定な場合、舌が出せない、出せても変位している場合などです。

特に、意識が混濁して、反応が落ちている場合は、迷わず救急受診しましょう。

5.まとめ

  • 高齢者がしゃべり方がおかしくなった状態を「ろれつが回らない」と表現します。
  • ガ行、ラ行、パ行にわけて発音してもらうと、ろれつ障害の有無がわかりやすくなります。
  • ろれつ障害が突然発症し、麻痺・めまい・意識障害といった症状を合併している場合は救急受診しましょう。
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