30年前我々が大学に入学したころには、よく言われたものでした。『これからは医師過剰時代になる。お前らは将来外国のように医師の免許を持ってタクシードライバーをやるものも出る』とまで言われたのです。実は、これには理由があります。1973年に第2次田中角榮内閣の元で閣議決定された「経済社会基本計画」に盛り込まれた一県一医大構想で、当時医学部のなかった15県に医科大学(医学部)が設置されました。結果として医師数が増え、医師過剰時代がくるとの判断から、1997年に国立大学医学部の定員が10%定員削減されました。
それでは、卒業して24年経ってどうなっているでしょうか?現在、強烈な医師不足により、働き口に困ることはありません。慌てた厚生労働省は、医学部の定員を増やしています。それでは定員が増えた医学部生の30年先には、医師を取り巻く環境はどうなっているでしょうか?2044年の日本の総人口は1億人を割り込むことが予想されます。いくら高齢化と言っても人口自体が減少すれば、医師としての活躍の場は減ります。きっと今のように医師が恵まれていることはないと思われます。
この理由については、堺屋太一さんが以前から言われてます。”官僚は間違える“、つまり彼らが”医師過剰自体になると思ったときは足りなくなり“、”医師が足りなくなると思ったときは余る“のです。
ですからこそ、これからの時代に医師を目指す人には、仕事ではなく生き方として選んでもらいたいものです。そうすれば、少々待遇が悪くなっても気にもならないものです。