先日、両親が老老介護になったため、夫婦で入れる施設を探している子供さんがいらっしゃいました。確かに、ご夫婦だけでは自宅で生活は困難なレベルでした。そのため、夫婦で入所できる施設を希望される気持ちもわかります。しかし現実には、介護面、費用面、施設側の都合の点からも、夫婦での入所は難しいのが現実です。今回の記事では、夫婦が同じ介護施設に入所することが難しい理由を解説します。
目次
1.入所する際の施設とは?
夫婦が入所する際の施設とは、以下になります。
1-1.介護保険上の施設
老人保健施設、特別養護老人ホーム、療養型病床群などになります。基本は、介護度が3以上が適応となることが多くなります。そもそも、これらの施設は入所費用が安いため、入居待ち1-2年が普通です。そのため、これらの施設に夫婦一緒に入所することはほぼ不可能です。
1-2.実態は施設だが、介護保険上は在宅扱いの施設
グループホーム、住宅型もしくは介護付き有料老人ホーム、サービス付き高齢者住宅になります。基本は、介護認定を受けている人が対象で、要支援2から要介護2程度が対象となります。夫婦で入所を希望する場合は、これらの施設が対象となることが多くなりますが、費用面の負担が相当重くなります。
1-3.健康な人が入所できる施設
自立した高齢者向けの施設で、健康型有料老人ホームになります。ただし、介護が必要になると退所する必要があるため、思いのほか適応となる方は少ないです。老老介護で、自宅での生活が困難となったようなケースは、そもそも適応外になります。
2.夫婦で介護施設に入所する前提
健康型有料老人ホームを除いて、介護施設に入所するには、夫婦双方が介護認定されていることが前提となります。どちらかが健康であれば、介護施設には入所はできません。
3.介護面での問題
公的介護保険制度における介護度は、「認知症の度合いによる認知症介護」と、「運動機能の度合いによる身体介護」で評価されます。したがって夫婦であっても、「ご主人は運動機能には問題がなく、認知症介護が主」で、「奥様は認知症はなく身体介護が主」であることがあります。そうなると、夫婦それぞれで、理想とする施設が異なってしまいます。
実際、相談を受けたケースでもご主人はグループホームが合っており、奥様は、老人保健施設が合っていると判断しました。
4.費用面の問題
入所費用が以下が目安になります。都会になると、さらに5~10万円高くなることも珍しくはありません。
- 老人保健施設・特別養護老人ホーム:月10万前後、ただし収入が少ない場合は減免制度が適応されます。
- グループホーム:月15万前後、収入が少なくても減免制度は適応されません。住宅型有料老人ホーム・サービス付き高齢者住宅:月20万前後、収入が少なくても減免制度は適応されません。
いかがですか? 夫婦で入所しようとすると、合計で30万程度、場合によっては50万円近い費用が必要です。厚生年金であれば、一人分は賄えても、奥様が国民年金であれば年金だけでの対応は不可能です。私は、いつも申し上げているのですが、これからの時代、夫婦長生きするには、夫婦それぞれで年金を積み上げる必要があります。専業主婦は国民年金になりますから、介護費用の面からも夫婦長生きはできないのです。
5.施設側の都合
以上の理由から、そもそも夫婦での入所を希望される方が少ないのが実情です。そのため、夫婦部屋自体がない施設が多く、あっても1-2部屋です。どうしても夫婦で入所を希望される場合は、それぞれ1室ずつ入所されることになります。当然ですが、費用は単純に倍になりますので負担が重くなります。ただし、部屋が別の方が、嬉しがっている奥様は多いように見受けられます。
6.まとめ
- 夫婦と言っても、必要な介護が異なれば、適応となる入居施設は異なります。
- 夫婦で入所する場合に、奥様が国民年金であれば、費用面で不可能になります。
- そもそも夫婦での入居を希望する方が少ないため、夫婦部屋は少なく、あってもわずかです。