「母を施設に入れて安心していた」でも数年後、家族は困ることになりました

「母を施設に入れて安心していた」でも数年後、家族は困ることになりました
2026-10-13

認知症のお母さんを、何年も自宅で介護してきた。夜中に起こされ、薬を管理し、食事を作る。仕事との両立も難しくなり、家族で悩んだ末に、ようやく施設へ入所してもらった。「これで安心できる」そう思うのは当然です。施設への入所は、本人の暮らしを支え、家族の生活を守るための大切な選択です。

ところが数年後、「当施設では対応が難しくなりました」「看取りはできません」と告げられることがあります。さらに、費用を払い続けられなくなる場合もあります。認知症外来で相談を受けると、ご家族は「ここで最期まで暮らせると思っていました」と話されます。今回は、入所後に直面する三つの想定外から、施設選びで確認してほしいことをお伝えします。

目次

1.認知症が進んだ時も、暮らし続けられるか

入所時には、自分で歩き、食事もでき、穏やかに過ごしていたお母さん。しかし、その後も同じ状態が続くとは限りません。認知症では、物忘れだけでなく、物盗られ妄想、昼夜逆転、介護への拒否、大声などの行動・心理症状、いわゆるBPSDが現れることがあります。すべての方に起こるわけではありませんが、必要な支援が変わる可能性はあります。

その時、施設から「他の入居者さんへの影響があります」「現在の体制では対応できません」と、転居を相談されることがあるのです。ご家族が「認知症だからお願いしたのに」と戸惑うのも無理はありません。ただ、施設によって職員の配置や経験、医療との連携体制は異なります。「認知症の方を受け入れます」という説明だけでは、将来の対応までは分かりません。

見学時には、「夜眠れなくなったら?」「介護を強く拒むようになったら?」と具体的に聞いてください。どのような場合に退所や転居が必要になるのか、契約内容も確認しましょう。また、急な変化をすべて認知症の進行と決めつけず、痛みや体調不良、環境の影響などを医療者と確認する姿勢も大切です。困った時に、施設と医療が一緒に考えてくれるかを見てほしいと思います。

2.歩けなくなり、食べられなくなった時の対応

二つ目は、身体機能が低下した時の問題です。認知症の経過や加齢、ほかの病気によって、歩行や飲み込みが難しくなり、食事の介助や医療的な支援が必要になることがあります。そこで初めて、施設ごとの対応の違いが見えてきます。

「寝たきりになると対応できません」「看取りは行っていません」と言われ、次の暮らしの場を探すことになる場合もあります。何年も暮らしてきた施設は、本人にとって、すでに「家」です。慣れた部屋があり、顔なじみの職員がいる。その場所を、体力が落ちた時に離れなければならないことは、大きな負担になり得ます。

グループホームだから最期まで安心、というわけでもありません。「看取りに対応していますか」「協力医や訪問看護との連携はありますか」と確認してください。対応している場合も、どのような条件や限界があるのかまで聞くことが大切です。

もちろん、食べられなくなったからといって、直ちに人生の最終段階とは限りません。治療できる原因がないかを確認したうえで、本人の希望や負担を考え、家族と医療・介護職で方針を相談します。施設選びとともに、「どこで、どのように最期を迎えたいか」を、話せるうちから共有しておきたいものです。


長谷川嘉哉監修の「ブレイングボード®︎」 これ1台で4種類の効果的な運動 詳しくはこちら



当ブログの更新情報を毎週配信 長谷川嘉哉のメールマガジン登録者募集中 詳しくはこちら


3.「今払える」より、長く払い続けられるか

三つ目は、お金です。入所時には、年金と貯金があり、家族も援助できる。それでも、介護が長く続けば、当初の見通しが変わることがあります。

例えば月額25万円なら、年間300万円、5年間で1,500万円です。これは支払総額であり、実際に貯金から持ち出す額は、年金などの収入を差し引いて考えます。別途必要な医療費や日用品代なども、確認しておかなければなりません。

仮に年金が月15万円なら、施設費との差額だけで月10万円、年間120万円です。長く暮らすほど、その積み重ねは大きくなります。「今なら払える」で決めず、5年、10年と続いた場合を試算してください。料金改定や介護度の変化で費用が増える可能性、家族の援助を続けられる範囲も考えておきましょう。

豪華な建物や設備も魅力ですが、本人が穏やかに暮らせることと、費用を継続して払えることが大切です。資金が尽きてから慌てる前に、施設の相談員やケアマネジャーと今後の選択肢を相談しておくと安心です。

おわりに

この問題は、「『本当は最後までいたかった』施設を追われる高齢者が増えている」というテーマでもお話ししています。長年暮らした場所を離れるつらさを思うと、この言葉は重く響きます。だからこそ、入所前に確認してほしいのは、認知症の症状が変わった時の対応、看取りの体制、そして長期的な費用の三つです。

すでに入所している方も、今から確認して遅くはありません。将来の見通しを施設と共有することが、次の安心につながります。施設にお願いしたご家族を責める話ではありません。悩んで選んだ場所で、できるだけ長く安心して暮らしていただくための備えです。「最後までここで暮らせて良かった」。本人にもご家族にも、そう思っていただける施設選びを願っています。

長谷川嘉哉監修シリーズ