認知症の治療効果を上げるのは「入所」!その理由を専門医が説明

認知症の治療効果を上げるのは「入所」!その理由を専門医が説明

症状が進行した認知症患者さんを自宅を介護すると、介護者の介護負担はとても重くなります。そのため、介護者の健康をも害してしまうことさえあります。なかには、介護者が命を落としてしまうほど過酷なものです。それでも、日本人の真面目な性分なのでしょうか、何とか家で看てあげたいと考えるご家族も多いものです。

しかし、入所することは、決して悪いことばかりではありません。特に、治療をする医師の立場からしても、施設に入所される患者さんの方が、使用する薬の量を減らすことができます。入所した方が治療効果が高いといえるほどです。今回の記事では、月に1000名の認知症患者さんを診察する専門医の長谷川嘉哉が、治療面から見た認知症患者さんの入所のメリットを紹介します。

1.在宅の認知症患者さんの治療効果を妨げるものとは?

認知症の患者さんの治療効果を妨げるものとは以下のようなものです。

1-1.抑制系の薬の使用

在宅での患者さんで、徘徊をする、易怒性、介護に抵抗するといった症状が出た場合には、どうしてもこれらの症状を弱める必要があります。そうでないと、介護をする家族が先に倒れることにもなるからです。そのため、抗認知症薬の中でも抑制系の薬を使ったり、ときには、抗精神病薬をも使う必要があるのです。やはり活動量が低下してしまうことになります。

1-2.睡眠導入剤の使用

患者さんが夜間眠れない場合は、介護者は十分な睡眠もとることができません。そんな睡眠不足の中、昼間も介護をする必要があるのです。これでは、転倒のリスクを冒してでも、睡眠薬を使用せざるを得なくなるのです。

1-3.服薬管理の難しさ

以上の理由で、在宅の認知所患者さんの場合は、どうしても薬の種類が多くなってしまいます。しかし、在宅の場合は、介護者も高齢であることが多く、服薬管理が不十分であることで、せっかくの薬の効果が出ないこともあるのです。

A depressed senior man lying in bed cannot sleep from insomnia
夜に寝てくれない患者さんに、介護者は疲弊します

2.入所で治療効果アップの理由

認知症の患者さんが施設に入所することで、適切な対応と服薬管理により結果的に減薬できることも多いのです。

2-1.睡眠導入剤の減量・中止が可能

医師としての理想は、眠らない認知症患者さんは薬も出さずに、好きにしてもらうことです。しかし、限られた介護者である在宅では、それはできません。しかし、施設の職員は、夜勤帯は起きていますし、翌日は休みです。そのため、患者さんが眠らなくても、様子を見ることが可能なのです。結果として、睡眠導入剤は、減量・中止が可能となります。

2-2.抑制系の薬も減量・中止が可能

施設の場合、在宅と異なり昼間も介護者が複数人います。そのため、睡眠導入剤と同様に、抑制系の抗認知症薬や抗精神病薬の減量・中止が可能となります。その結果、日中の覚醒度が上がり、夜間の良眠にまでつながるのです。

2-3.薬の調整も安心

入所をすれば、服薬管理も万全です。飲み忘れも、飲み間違いも心配はありません。医師としても、安心して薬の調整が行えるのです。


長谷川嘉哉監修の「ブレイングボード®︎」 これ1台で4種類の効果的な運動 詳しくはこちら



当ブログの更新情報を毎週配信 長谷川嘉哉のメールマガジン登録者募集中 詳しくはこちら


3.認知症患者さんが家にいると介護者も負担大

そもそも、認知症患者さんが家にいる場合は、介護者の負担は大きいものです。

何しろ、昼間も患者さんに注意を払っている必要があるので、介護者さん自身の時間が取れません。その上、夜も安心して熟睡ができません。このような状態は、いつまで続くかも分かりません。こうなると「介護うつ」の危険性さえあるのです。「介護うつ」については、以下の記事も参考になさってください。

4.施設利用はグループホームがおすすめ

多くの介護者さんには、入所をした方が使用する薬を減らすことができることを知っていただきたいと思います。なお、認知症患者さんの入所については、グループホームがお薦めです。

4-1.グループホームとは?

グループホームとは、地域密着型サービスの一つで、認知症高齢者を対象に少人数で共同生活をする施設です。格好良く言えば、高齢者のシェアハウスと言えます。グループホームに入居するには、65歳以上かつ、要支援2または要介護1以上の認知症患者である必要があります。また、地域密着型サービスであることから、施設と同一地域内の住居と住民票があることが求められます。

4-2.すぐに入れなくても、他の施設でグループホームを待とう

評判の良いグループホームは空きがないことが多いものです。その場合は、いったん住宅型有料老人ホームやサービス付き高齢者住宅に入居しましょう。しかし、住宅型有料老人ホームやサービス付き高齢者住宅は、グループホームに比べて、一人当たりの介護者が少ないため、入所における治療効果が上がりにくくなっています。そのため、空きが出たら、速やかにグループホームに移ることがお薦めです。

なお入所においては、多くの介護者は罪悪感を持つものです。以下の記事も参考になさってください。

5.まとめ

  • 施設に入所すると、使用する薬の効果が上がります。
  • 何よりも、抑制系の抗認知症薬や睡眠導入剤の使用を減らせられることが多いのです。
  • 認知症患者さんが入所する場合は、グループホームがお薦めです。
error: Content is protected !!
長谷川嘉哉監修シリーズ