保険診療…腰椎圧迫骨折時のコルセットは見直すべき【医師が提言】

保険診療…腰椎圧迫骨折時のコルセットは見直すべき【医師が提言】
2019-10-23

私の外来では、高齢の患者さんが多いため、しばしば腰椎圧迫骨折を受傷します。受傷すると激しい腰痛のため整形外科を受診されます。基本的な治療は、安静、鎮痛剤処方及びコルセット処方になります。

コルセットは、健康保険を使って、身体を採寸して、オーダーメードで作成します。オーダーメードというと響きは良いのですが、これがひどいものです。材質はとても固く、圧迫骨折の部位によっては首のすぐ下まで固定されます。この状態では、食事もままなりません。それ以上に苦痛で、多くの患者さんが継続使用ができないこととなっています。

せっかくのコルセットも、継続使用できなければ意味がありません。これは、まさに保険診療の弊害といえるものです。今回の記事では、なぜせっかくオーダーメードしたコルセットがこれほどに不快なのか、そして本当に継続する必要があるのか、もし使用しない場合はどのように対処するかについて解説します。

1.腰椎圧迫骨折とは?

腰椎圧迫骨折は以下のような特徴があります。

1-1.突然発症

腰椎の骨は、一つの塊のような骨が、椎間板をクッションにして重なり合って形成されています。その、腰椎の骨が突然つぶれることで圧迫骨折は発症します。きっかけは、身体を動かしたり、尻もちをついたり、時にはくしゃみ程度で突然起こりるものです。

1-2.症状

骨がつぶれるわけですから、痛みは激烈です。痛みで動けなくなる方さえいらっしゃいます。但し、同じ圧迫骨折でも、動けなくなるほどでない軽い痛みの方もいらっしゃいます。中には、ほとんど無症状で、偶然腰の写真を撮ったときに古い圧迫骨折が見つかる方さえもいます。

1-3.治療法

治療の原則は、安静と痛みのコントロールです。できるだけ安静を保ちながら、鎮痛剤等で痛みを抑えるようにします。多くの患者さんは、このような保存的な治療で症状は改善されます。

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腰椎圧迫骨折(画像出典:wikipedia

2.コルセットの目的

安静目的のために、整形外科では多くの場合、コルセットをつくります。コルセットの目的はなんでしょうか? その目的は、概ね以下のようなものです。

  • 変形の予防;圧迫骨折した部位のさらなる変形を予防します。
  • 固定することで、病変部位の安静をはかります。
  • 腹圧の増強:コルセットを使用すると、お腹に力が入ります。そうすると、腰椎にかかる負担を、一部腹部が支えることで、病変部の負担が軽減します。

このような、コルセットの効果ですが、もちろん使用しなければ意味はありません。

3.コルセットの現状

そうやってコルセットを作った患者さんですが、整形外科の先生には言いにくいのか、逆に内科の主治医である自分達にはコルセットの不満をたくさん教えてくれます。

3-1.保険で作れる

コルセットは、健康保険作ることができます。いったんは、患者さんが自己負担しますが、保険診療の自己負担分を除いた額が、あとで戻ってきます。

おおよそですが、腰椎圧迫骨折の場合は、装具代が31,335円、これに装具の採寸料が2,000円や採型料7,000円が加わります。つまり、約4万円を支払い、1割負担なら36,000円、3割負担なら28,000円が返金されます。患者さんにとっては少ない負担でオーダーメードのコルセットを作ることができるのです。

3-2.医師はサインをするだけ

医師が処方するコルセットは、オーダーメードと言いますが、細かい採寸等は、すべて装具屋さんが行います。実は、医師はサインするだけです。


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3-3.商品開発がされていない

保険診療のため受け取る額は一緒、医師からも細かい指示はない。そのため、装具屋さんも商品開発は全くしていません。だからこそとても硬い材質で、使い勝手の悪い商品を平気で供給できるのです。

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腰椎圧迫骨折時にオーダーメードで作るコルセットの例(画像出典:金町中央病院

4.嫌がるコルセットを継続使用する必要があるか?

自分の外来では、「こんな苦痛なコルセットはとても使えません」と使っていない継続使用をあきらめた患者さんが多数です。もしコルセットを使用しなければどうなるのでしょうか。実は、使用しなくてもいいと考えることもできるのです。

4-1.動ける程度の痛みなら使用しない選択も

整形外科の先生は、「絶対安静」を伝えます。しかし、圧迫骨折には症状の、軽い重いが結構あります。ある程度動ければ絶対安静は不要です。かえって不要な安静で、廃用症候群になることさえあるのです。もちろんコルセットが使用できるなら、使用を継続なさってください。

*廃用症候群:安静状態が長期に渡って続く事によって起こる、さまざまな心身の機能低下

4-2.腰椎固定帯程度での対応も可能

整形外科によるオーダーメードのコルセットほど頑強ではありませんが、内科でも保険で腰椎固定帯が処方できます。腰椎固定帯は、ゴムでできており、柔らかい金属で腰をサポートします。値段も数千円で、自己負担はそれの1〜3割です。整形外科の先生に言わせるとと、「完全な安静固定ができていない」と言われますが、これでも結構腰がサポートされ、腹部を使って腰の負担軽減ができます。何よりも患者さんにとって不快感が少なく、きちんと使ってくれる点が、オーダーメードコルセットより優れていると私は考えます。

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腰椎固定帯のイメージ

4-3.保険外でコルセットを作れないか?

今の時代、優れた素材もたくさんあります。是非とも、歯科業界のように、多少お金がかかっても自費で、快適なオーダーメードコルセットを作ってもらいたいものです。そのためにも、整形外科の医師自身が一度でも自身が処方したコルセット使用してみてほしいものです。

5.予防

腰椎圧迫骨折の予防には以下が重要です。

5-1.骨粗鬆症の治療

骨粗しょう症の薬は大きく2つに分類されます。最近では、従来の治療薬よりも強力に骨密度増加が期待できる薬や、患者さんが継続しやすいように投与間隔や剤型(薬のかたち)に配慮したものもあります。

  • 骨吸収を抑制する薬
  • 骨の形成を促進する薬

5-2.食事

薬だけでなく食事も重要です。骨を強くするには、カルシウム、ビタミンD、ビタミンKなど、骨の形成に役立つ栄養素が大事です。特に、 カルシウムとビタミンDを同時に摂ることで、カルシウム吸収率がよくなります。また、高齢になると、タンパク質の摂取量が減ります。 タンパク質の摂取量が少ないと骨密度低下がより進行します。タンパク質も意識して摂取することが重要です。

5-3.適度な運動

骨は負荷をかけると、骨をつくる細胞が活発になり、強くなります。そんな運動にお勧めなのが、ブレイングループが開発したブレイングボード®です。

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ブレイングボード®(公式ホームページはこちら

ブレイングボード®の上で、青竹踏みのように足踏みをしてください。勾配がついているため、運動効率が高まります。その場で、3〜5分程度足踏みをすると慣れないうちは息が切れるほどです。このような運動補助ツールを使用することで、運動へのハードルが少なくなり、短い時間で効率的に体を鍛えることができると思っています。

骨粗しょう症の予防には、以下の記事も参考になさってください。

6.まとめ

  • 誰でも起こり得る、腰椎圧迫骨折の治療は安静とコルセットです。
  • 整形外科医がオーダメードして作るコルセットは、硬くて使い心地は最悪のため、多くの方が使用を断念しています。
  • かえって費用もはるかに安い、腰部固定体の方が評判が良いほどです。
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